2月末に日本慢性疼痛学会があり、カイロプラクターの山口純子先生の発表のお手伝いをしています。
彼女は言います。「生殖器は『その人の役割』の象徴」だと。
この言葉、皆さん、どのように感じられますか?
私は婦人科医として、日々多くの患者さんと接する中で、山口先生の言葉に深く共感することがあります。子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科の病気は、時に患者さんの人生・仕事やキャリア・パートナーシップに大きな影響を与えることがあります。それは、時に「あなたはこれからどう生きるのか」と問いかけているようにも思えます。今回は、婦人科の病気を通して、私たちがどのように自分自身の役割を見つめ直し、人生を豊かにしていくことができるのか、考えてみたいと思います。
子宮内膜症と向き合う
子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。進行すると、月経痛や慢性骨盤痛・性交痛、不妊症などの原因となることがあります。子宮内膜症は再発しやすい病気であり、妊孕性(妊娠する力)にも影響を与える可能性があります。子宮内膜症の治療は薬物治療や手術がありますが、薬物治療はホルモン療法が主体であり、基本的には治療中は妊娠することは難しいです。また、子宮と卵巣を残す保存手術では、再発率は高く、重症子宮内膜症では自然妊娠が難しいことが少なくありません。
私は患者さんには、薬物治療によって子宮内膜症の進行を止めておくか、手術の後は積極的に妊活や不妊治療をしていくようにお勧めすることが多いです。また、時には根治的な手術の選択肢を提示することもあります。そのため、漠然と夫婦生活を送り、いずれ子どもができたら…という人生設計が難しくなることが多いです。
患者さんの中には、子宮内膜症と診断されたことで、将来に対する不安や焦りを感じ、自分自身の役割について深く考える方も少なくありません。
「子どもを産めないかもしれない…」
「パートナーとの関係はどうなるのだろうか…」
「仕事との両立はできるのだろうか…」
子宮内膜症は、患者さんの人生観や価値観を揺るがし、自分自身の役割について改めて考えさせるきっかけとなる病気です。さらに、子宮内膜症による月経困難症や慢性骨盤痛は、体が、その人自身に何らかのシグナルを(痛みとして)伝えようとしているようにも思えることがあります。
「あなたは母親になる人生を選びますか?それとも、仕事で社会に貢献していく人生を選びますか?どちらも選びたいのであれば、どのようなキャリアプランを描きますか?」
子宮内膜症とそれによる疼痛は、私たちが自分自身と向き合い、より良い生き方を選択するためのメッセージなのかもしれません。
婦人科医としての役割
子宮内膜症の患者さんに、病状を説明し、治療を提案するとき、私はただ単に「手術をして治す」で終わることはあまり多くありません。むしろ、「これからの人生をどのように生きるのか」という話になることが多いです。もちろん、直接的にそのような話題を振るのではなく、治療の選択肢をお話しているうちに、そのような話になるのです。患者さん自身の言葉で、将来への希望や不安、そして自分自身の役割について語っていただく。そして、その思いに寄り添いながら、最善の治療法を一緒に考えていく。それが、婦人科医としての私たちの役割だと考えています。
病気を通して得られるもの
子宮内膜症は、確かに辛い病気です。しかし、病気と向き合う中で、自分自身の人生や役割について深く考える機会が得られることもあります。そして、その経験を通して、新たな価値観や人生観を見出すことができるかもしれません。病気は、私たちにとって、決してマイナスなことばかりではありません。病気を通して得られる経験や学びは、私たちの人生をより豊かにしてくれるはずです。