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子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩するのか?

子宮筋腫核出術への私のこだわり2  - 子宮筋腫の中心に向かって切開 -

2025-02-11 | 腹腔鏡
子宮筋腫核出術では、子宮壁を切開して子宮筋腫を核出する必要があります。子宮は血流豊富な臓器であるため、切開時には出血が多くなる可能性があります。そこで、私は以下の点に注意して子宮壁の切開を行っています。

事前準備
まず、腹腔内所見を確認します。子宮筋腫がある位置、子宮の硬さ、大きさなど、術前のMRI画像でのイメージとの違いを把握してから手術を開始します。そして、子宮筋層に100倍希釈したバソプレシンを局注します。これは、血管を収縮させる薬剤で、出血を抑制する効果があります。

超音波凝固切開装置
切開には、超音波凝固切開装置(ハーモニックスカルペル)を使用します。電気メスでも切開は可能ですが、ハーモニックスカルペルの方が、子宮への熱損傷が少なく、出血も少ないため、より安全な手術操作を行うことができます。しかし、ハーモニックスカルペルは、適切に子宮に当てないと上手く切開することができません。

横切開
かつて私が開腹手術での子宮筋腫核出術を習ったころは、子宮を縦に切開するのが普通でした。しかし、子宮の血管走行を考えてみると、子宮動脈上行枝は,子宮体の側縁を上行しながら十数本の弓状動脈を子宮筋層に分枝しています。つまり左右の子宮動脈から横方向に血管が走行しているので、子宮切開時・核出時の出血は横切開のほうが少ないだろうと考えられています。現在では、縦切開・横切開どちらがよいのかは議論があるところではっきりとは確定していません。私は、術中出血量が少なくなること、そして、修復が確実に行える点から横切開での筋腫核出を行っています。(ちなみに師匠のDr.Kohも横切開)

まっすぐ切開する
子宮筋腫を最小限の切開で核出できるように、できるだけ傷がギザギザにならないように、まっすぐに切開することが重要です。しかし、これは意外と難しい技術です。なぜなら、私たちは3次元構造の丸い子宮を、平面に見えるモニターテレビで見ながら手術しているからです。そのため、空間認識能力はもちろんのこと、触覚や位置覚で子宮の形を感じ取りながら、切開を行う必要があります。まさに、腹腔鏡下手術は体で感じ取る手術だと言えるでしょう。

子宮筋腫の中心に向かって子宮壁を切開する
子宮壁を斜めに切り込んでしまうと、切開が長くなり、核出しにくくなるだけでなく、切開面が広くなるため出血が多くなり、縫合も難しく、時間がかかってしまいます。
子宮筋腫の中心に向かって切開することは、手術の効率と安全性を高める上で非常に重要な技術です。


子宮頸部筋腫の子宮筋層を横切開しているところ

当たり前のことを当たり前に
手術を見学に来た医師は、私が簡単そうにやっているので、自分もやってみたいと思うようです。しかし、実際には、子宮を切開するだけでも、これだけのこだわりポイントをクリアしないといけないことに気づいていないかもしれません。

当たり前のことを、当たり前にやる。

それが、実は一番難しいことなのです。
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