武田参考人 今回福島原発から出た量は、数京ベクレルから数十京ベクレル。通常国家が大騒ぎするレベルの例えば二十億倍、そういった量が今回の福島原発から出たわけですね。ふだん、数億ベクレルが出たときに、大変危険だというので原発を数年とめてやるということをやる政府が、それの一億倍出ても安全だと言ったわけですね。これを理解するというのは、普通には到底できません。ですから、普通の心境としては、これはうそだというふうに思うのが当然であります。したがって、現在、福島県を中心とした方々、特にお母さん方が非常に強い不安感を持っておられるということは、政府発表を中心としたものがつくり出した非常に強い不信感というか、そういうものであろうと私は思います。
御父兄に二十ミリシーベルトが安全であるという説明ができないというんですね。それは当然できないわけです。二十ミリシーベルトは一ミリシーベルトよりも発がんリスクが二十倍になるということですから、二十倍になると言わなきゃいけないということですね。しかし、二十倍になるのをどうして我慢させるのか、私たちの将来を担っている子供たちになぜ我慢をさせるのかということをしっかりと説明しないと、お上が二十ミリと決めたからそのとおり信じなさいなんていうのは、江戸時代じゃないので、皆さんが納得しないのも当然であります。ここのところも非常に大きな問題があって、実際にお子さんを育てておられて、福島の小学校に通わせているお母さんたちの気持ちをわかって、今までの政府がやってきたものとの整合性をとってもらわないと、これは解消しない問題であるというふうに思います。
それから、論点の第二点なんですけれども、ちょっと科学的に振りまして、私は、ずっと科学の分野で原子力をやってきて、こんなになって深く反省しておりまして、自分は原子力をやってきたのは本当によかったのか、こんな結果になるような技術をやってきたのかという非常に深い自責の念があるのでありますが、これはどこにあるかというと、一年一ミリシーベルト以上は危険であるということに基づいているわけですね。
最近、一年百ミリシーベルトまで大丈夫だと言われる人がいて、私が非常に残念に思うのは、原子力の技術体系全体が一年に一ミリシーベルト以上は危険だということによって原子炉は設計され、研究がなされ、すべての法体系がそろっているわけですね。技術というのは、技術自身が独立して存在するわけじゃなくて、もし一年に百ミリシーベルトまで大丈夫ならば、現在の原発は安全なんです。福島原発ですら、もしも一年百ミリシーベルトという基準に変えるんだったら、あれは化学工場の火災事故と変わらないんですよ。原子力発電所の事故が危険なのは、そこから放射線が漏れて一ミリシーベルト以上の被曝をするからこそ、国家としても乗り出すような大事件なわけですね。
ですから、今回、一年に二十ミリシーベルトとか一年に百ミリシーベルトとかは大丈夫であるということになりますと、原子力技術全体を全部変えなきゃいけませんし、原子力の安全基準から設計基準からを全部変えなきゃいけません。そして、今エネルギー議論なんかがありますが、もしも一年に二十ミリシーベルトとか百ミリシーベルトが安全であれば、別に自然エネルギーとかなんとか言わなくても原子力をやればいいわけですね。ですから、一年に何ミリシーベルトぐらいまでが日本人としての被曝として安全であるということをどこに定めるかによって、原子力政策から、エネルギー政策から、現在の被曝に対する補償から、全部変わるということですね。
ですから、そこについて私は、現在の国際的に一年一ミリシーベルトと決まっているものを今さら変えることはないと。それを変えていたら、私たちは何のために放射線とか原子力をやるときに防御をしてきたか、何のために設計してきたのかといえば、私は原子力の仕事をずっとやってきましたけれども、原子力の機器を発注すると、普通の機器の五倍ぐらい値段がするんです。それはなぜするかといったら、一年一ミリシーベルトだから高いんですね。だけれども、突然今、百ミリシーベルトまでいいというのだったら、普通の、五分の一の安い機械を買えばいいわけですから、全部の体系が変わるわけですね。
その中で、文部科学省が一年二十ミリというふうに変えたということは極めて大きな影響もあり、それが主に子供に対して適用されているということは非常に大きな問題であろうと思います。
これは忌憚なく述べさせていただけば、私の技術論というのは、人間は空を飛ぶべきではないから飛行機はいけないというような議論はとらないんです。もちろん人間が空を飛ぶべきじゃないかもしれません、初期の飛行機は次々と墜落しましたから。だけれども、それがクリアされて安全な飛行機になれば飛べるということですね。
原子力発電所もそうで、原子力自体をやるべきではないという議論、私はそういう考えではありません。原子力発電所が社会に対してよい影響を与え、悪いことをしないというのであれば、墜落しない飛行機になるわけですから、それは科学技術として採用すべきだ。
しかし、そこのところをはっきりしておかないと、あいまいにして事柄をやると、今度の原子力発電所の事故は、原子力発電所がエネルギー政策上必要であるから原子力発電所は安全だというような論理の逆転が今度の事故を招き、多くの人を苦しめたんじゃないかというふうに思います。
最後の論点ですけれども、現在、福島原発から放射性物質が残念ながら出たわけですね。一応、一年一ミリシーベルトを守るということを前提にお話ししますと、もやもやっとした放射性物質が出て、これは国が一番最初に間違ったことを言いましたから、多くの人が間違っていますが、皆さんが原子炉から離れれば大丈夫だと思っておられますけれども、放射線自体は光ですから、自分の目で福島原発が見えなくなったら放射線は来ません。現在、中性子は出ていませんからね。
ですから、放射線というのは、福島原発の見えないところ、自分の目で見えないところには来ません。現在来ている放射線というのは、福島原発からどかんと爆発したときに、火山の灰のように風に流れてずっと行ったものですね。これはだから、今度の場合、西北に流れました。
これは例えば、政府でいえば、気象庁が全力を挙げて風向きを予測しなきゃいけなかったのに、気象庁は、SPEEDIがあるから、これは原子力安全委員会が持っているんだからそっちがやれ、こう言った。今度はSPEEDIの方は、余り放射線が大きいからこれを発表しないんだという。国民は、税金を払ってSPEEDIをつくり、気象庁を持っているにもかかわらず、どこに放射性物質が飛んでくるか全くわからない状態で最初の被曝をしてしまったわけですね。
私は、しようがないから、ブログを書くとき、これはもうブログを書いて付近にいる人を逃がさなきゃいけないと思ったものですから、そのときに私が参考にしたのはドイツ気象庁のデータだったんです。
私はとても悲しい思いをしました。日本が科学技術立国でありながら、気象庁が、細かく花粉の状況とか火山の噴火の状況の予想図を出しているにもかかわらず、国民の命に極めて重要なことになると引いてしまったわけですね。原子力委員会のSPEEDIもそうです。
だから、まず第一に、私たち技術者は、原子力をやっている人たちは、国民の命を原子力から守るのが第一ですから、起こってしまった事故は仕方ないので、それに対して最大に損害を少なくする行為をすべきだった。そういう意味では、極めて大きな不作為による被曝を福島の人たちにさせてしまったという感じがいたします。
ところで、ふわっと飛んでいくわけですから、単なる粉なんですよね。放射性物質というのは単なる粉なんです。粉と言ってもいいし、ちりと言ってもいいし、ごみと言ってもいいし、何でもいいんですけれども、そういったものなんです。大きさは大体花粉みたいなもので、重さは黄砂ぐらいのものだ。
そうすると、飛んでいきますから、三月はどうだったかというと、空間の線量が高いわけです。それで、福島原発から放射線が来たんじゃなくて、この部屋でも結構今ありますけれども、ここの部屋に福島原発から飛んできた放射性物質が何億とあるわけですね。そこのちっちゃいところから我々は弱い放射線の合計を受けて、それで現在ここは、自然放射線〇・〇二に対してその十倍であるとか、そういった量になっているわけですね。
だから、三月の最初は空気が汚れているわけです。四月の初旬になりますと、私のブログの読者から寄せられるデータをずっと整理しますと、地面に落ちますから、地面が非常に高くなる。そのころ、私は、お子さんを外出させるときは手を引かないで、だっこしてくださいと言ったんですね。やはり下よりか上に行かなきゃいけません。
四月の下旬から連休になりますとそれが流れまして、屋根に乗った放射性物質は、といに出てきます。それから、散ったものは吹きだまりに集まります。それから、現在は、側溝からさらに進んで升のところに移っています。
この前、福島県に行って測定してきましたら、普通のところが〇・九マイクロシーベルト・一時間に対して、側溝の溝をはかりますと九マイクロシーベルトでした。九マイクロというと物すごく多くの被曝をしますから、絶対に子供を近づけちゃいけない。だから、僕はそこの人に、黄色い枠をしてくださいと言ったんですね、子供が近づかないように。
このことは何を言っているかというと、放射線を防御しなきゃならない国としては、時々刻々、正しくやらなきゃいけない。ところが、自治体なんかで放射線の量をはかっているんですよ。それで、地上十五メートル、五階なんかではかっているところがあるんです。それに文句を言いますと、いや、機械が高いから、壊されるといけないから五階ではかっているんだというんですよ。五階なんかに人はいませんからね。赤ちゃんは特に危ないわけですけれども、〇・五メートルぐらいではかってくれなきゃいけない。だから、公表されるデータ自身がいいかげんなわけですね。これは命にかかわることだから、そんな機器の値段なんか言っていないで、やはりちゃんとしたデータを国民に提供するということが非常に重要だと思います。
それから最後に、粉でありますから、除けるんですね。それで、校庭だったら校庭の表土を取る。チェルノブイリのデータを見ますと、はっきりはわかりませんが、二十年で二十センチ沈んでいますので、一年に一センチの割合。だけれども、日本は雨が降るので、もうちょっと進行するとします。ですから、梅雨の前に、福島県の汚染されたところをとにかくのけてほしいんですよ。これはぜひ先生方のお力で、のけてほしい。
今は逆の方向に行っているんです。要するに、汚いものがもうそこにある。もしもお母さんが放射性物質が目で見えれば、絶対にふきます。ふいて取ろうと思います、だって、そこに毒があるわけですから。なぜそれをどけないのか。
それをどける努力をせずに、基準を二十ミリに上げたり、放射性物質が入っている野菜が基準以下だから安全宣言なんかしたって、無駄なんですね。問題は被曝の量を減らすということですから、そのためには、現在立入禁止になっているような高いところは自衛隊なんかの協力も得てできるだけ早く除染しないと、もう一回風が吹きますと、道路に落ちている粉は、舞い上がってほかに行きます。ですから、早くとめなきゃいけない。
それから、もちろん福島市のある程度のところは汚れておりますから、これの表土を一番早いうちに取ればいいんですよ。この前福島に行ったら、残念ながら、もう稲を準備しちゃっているところがあるんです。土をまぜちゃったら下の方に行きますから、これはもう二十年ということになるわけですね。ですから、できるだけ早くやらなきゃならない。
それから、小学校の土をひっくり返すというのがあるんですけれども、何をやっているのという感じですね。ひっくり返せば、低レベル廃棄物というか、そういう放射線を帯びたものが土の中に入ります。雨が降れば地下水に行きますね。セシウムは土とのなじみが深いからすぐには移動しないかもしれませんが、ずっと移動していくわけですね。地下水に移動したらとても厄介なことになるわけです。ですから、この際、非常に強い決意を持って福島のところを除く。
科学技術は原発をつくる技術だけじゃないんです。原発の技術というのは、原発が壊れたときに、それを速やかに除染して、何でもなかったことのように生活できるようにするというのも技術なわけですね。これも原子力発電所をやる上においては極めて重要な技術なわけです。
日本は科学技術立国でありますし、経済力も非常に強いのですから、世界に先駆けて、私は、原発が爆発したら多少困るけれども、きちっと住民を避難させて速やかにそこを除染したら、除染したらというのは放射性物質を除いたら、一年以内に必ずそこで普通に住めるようになる、そういう国であるということを示してもらいたい、それも実は原子力をやる上での技術の一つじゃないかというふうに思います。
それからもう一つ、一年一ミリシーベルトを上げると、日本はもう既に汚染された国なんですね。我々が自由に海外旅行に行き、海外のレストランで安心して食べ、海外から輸入される水を安心して飲むのは、世界じゅうがICRPの基準で一年一ミリだからなんです。それを日本だけが一年二十ミリにしたら、日本の農産物ばかりでなく、すべての製品、テレビに至るまで輸入禁止がかけられても文句は言えないわけですね、赤ちゃんを抱いて日本に旅行に来たら二十倍の被曝をするということを国際的に宣言しているわけですから。もちろん、健康にも影響がありますし、日本に与える経済的な影響は極めて高いというふうに思います。
私は技術者ですので、いろいろ政治的なことは別にいたしまして、ぜひ、できるだけ早く日本の技術力を動員して、まず第一に梅雨の前、第二には風が吹く台風の前に、すべて除いて、木なんかに、葉っぱなんかにはつきますから、適当に、夏ぐらいには雑草も葉っぱも全部切って、回収できるフィルターのついた焼却装置で焼却すれば、福島を一年以内に安全に住めるところに戻すということが極めて重要なことではないかというふうに思います。