天地を 照らす日月の 極みなく あるべきものを 何をか思はむ 

わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても あはむとぞ思う

それぞれの秋

2012年10月25日 | 秋は夕暮れ



陽だまりの坂道に立ち止まり 通り過ぎる学生を見ていた
俺もあの頃はあんなふうに きらきらと輝いて見えたろう
授業にも出ずにお茶を飲みながら くだらない夢を話した
突然怒った無精ひげのおまえも 噂では苦労していると
今も忘れられないのは あのときの言葉
「幸せになろうなんて思っちゃいけない」
愛した女ひとりと苦労を共に出来たなら
そんなささやかな人生も きっと悪くはない
夢、散り散り 夏は過ぎ去り それぞれの秋

たしか去年の初夏の頃 届いた一通の手紙には
旅好きなあいつのおふくろから 痛々しいほどの細い文字
ある雨の朝 見知らぬ町で 自ら命を終えたと
母に残した一行の言葉 悲しみだけが人生
今も忘れられないのは あいつの口癖
「人は自分の死に場所を探すために生きる」
ささやかに生きている友達の 人生とは一体なんだろう?
あざやかに死んだ友達の 人生とは一体なんだろう?
夢、散り散り 夏は過ぎ去り それぞれの秋

今では二人の思い出も 忘れかけるほどの毎日
ふと立ち止まる道端に 悲しいほど赤い落日
夢、散り散り 夏は過ぎ去り それぞれの秋


谷村新司 (1980)