海賊対策:「武器使用」基準不明確なまま ソマリア派遣
海上自衛隊の東アフリカ・ソマリア沖への派遣は、後方支援が中心だったインド洋など過去の派遣とは性格が大きく異なる。「自衛隊が前面に出る新たな分野」(防衛省の増田好平事務次官)で、積極的な武器使用の可能性もはらむ。にもかかわらず、決定までの麻生政権の対応は「派遣ありき」で、自衛隊派遣のあり方をめぐる真正面からの議論はないままだった。
海賊の襲撃におびえる海運会社の切実な声と国際社会の要請に、政府・与党内は「迅速な対策が必要」との認識で早くから一致していた。しかし護衛艦の派遣という「対症療法」の先の展望は不透明で、活動終了のメドも立っていない。
なし崩しと言える今回の任務の拡大は武器使用をめぐり相反する二つの懸念も呼ぶ。
「国または国に準ずる組織」ではなく、民間の犯罪者に過ぎない海賊への武器使用は政府見解で今回、「憲法9条が禁じる海外での武力行使に当たらない」とされた。しかし、これによりテロリストや反政府勢力を同様に「単なる犯罪者」と読み替え、武器の使用範囲を拡大し、憲法解釈の事実上の変更につながる可能性は残る。海賊対処法案に盛り込まれた武器使用基準の一部緩和も、今後の歯止めは明確でない。
一方、必要な法律が十分に整わないまま、現行法の制約された武器使用基準による派遣は、より危険な任務に就く自衛官にとって大きなリスクとなる。銃撃戦などを想定した場合に、法的な備えは十分ではない。
麻生政権は低支持率にあえぎ、「ねじれ国会」の下、安保論議が深まる気配はない。防衛省からは「いったん派遣された後は世間から忘れられ、不測の事態の責任だけが押しつけられるのでは」(制服組)との懸念が聞かれる。【松尾良】毎日JP
さまざまな問題を含む、海上自衛隊のソマリア沖への派遣は今日午前閣議決定され、とうとう明日14日には断行されることになった。
この法案の正式名称は、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法案」。
海賊にはまず海上保安庁で対処し、
海保で対処が著しく困難な場合は、防衛相が首相の承認を得て、自衛隊に「海賊対処行動」を命令できるとしている。
この
法案では、警護活動の対象を日本関係船舶だけでなくすべての船に拡大。武器使用に関し、海賊行為を制止するための船体射撃を認める規定を設けた。海賊船が警告射撃などの停船命令に応じず、民間船に著しく接近した場合、正当防衛かどうかにかかわらず船体射撃ができるとしているそうである。
今後この派遣が、前例となって自衛隊が海外で武力を使うことが恒常化するようなことにならなければ良いがと気がかりでならない。
14日呉を出発することになっている護衛艦の名は「さみだれ」「さざなみ」の2隻だそうである。
日本をめぐる情勢が「さみだれ」式に、「さざなみ」の立つことにならなければ良いのだけれど・・・・・