野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

薄い紫がかったピンクの胡蝶ラン「ドリテノプシス・リビングストンズ・ジェム」(蘭シリーズ 20-19)

2020年05月24日 07時58分41秒 | 

薄い紫がかったピンクの胡蝶ラン「ドリテノプシス・リビングストンズ・ジェム」。花の上半分とリップの下半分が同じ色合いでシック。命名は作出者リビングストンにとって宝石のような蘭ということだろう。

(2020-02 東京都 神代植物公園) 

 

「ドリテノプシス・リビングストンズ・ジェム」

小ぶりながら紫ピンクの美しいラン、ドリテノプシス リビングストンズ 
ジェム Doritaenopsis (Dtps.) Livingston’s gem。

2012年のプレートの livingston gen は誤植です。作出者にとって
宝石そのもの、ということでしょう。

最新分類はファレノプシス Phalaenopsis (Phal.) です。
作出・登録 Livingston's Orch. 1984年。

 


名前通りに黄金色の美人バラ「ゴールデン・ビューティ」(薔薇シリーズ200)

2020年05月24日 07時13分52秒 | 

名前通りに黄金色の美人バラ「ゴールデン・ビューティ」。中輪の多くの花が房咲きになる。花弁の開き具合も清楚な印象を与える。

(2019-11 川崎市 生田緑地バラ苑) 

 

バラ「ゴールデン・ビューティ」

外国語表記 Golden Beauty
作出年 2008年
作出者 Kordes
作出国 独
咲き方 四季咲き
花色 黄


華々しい色彩で、人目をひく「バーベナ」(20-090)

2020年05月23日 09時54分23秒 | 

園芸種として花壇でどこでもみかけるバーベナ。華々しい色彩で、人目をひく。写真のは「ピンクパフェ」らしい。いかにもおいしそうだ。

(2020-04 川崎市 花壇) 

バーベナとは

バーベナには約250種の野生種があり、主に南北アメリカの熱帯から亜熱帯に分布していますが、日本にもクマツヅラ(Verbena officinalis)1種が自生しています。
花が少ない真夏の炎天下でも生育おう盛で、春から晩秋まで咲き続けます。本来多年草ですが、耐寒性がやや弱いことから、日本では園芸的に一年草として扱われる品種と、比較的耐寒性があって多年草となる品種とがあります。前者はタネで、後者はさし木でふやされています。3月から6月を中心にポット苗が出回り、さし木でふやす栄養繁殖系品種の多くにはラベルがついて、品種名が明記されています。
草姿は茎がやや立ち上がるものと、横へ横へとほふくするものとがあります。ほふく性のものは栄養繁殖系品種に多く、暑さ寒さに強く、育てやすいです。さらに、「タピアン」シリーズのようにコスモスの葉に似た細かく羽状に切れ込んだ葉をもつタイプ(「宿根バーベナ」または「テネラ」と呼ばれることがある)と、「花手毬」シリーズや‘ピンク・パフェ’のように葉に切れ込みが入らないタイプとがあります。また、リギダやボナリエンシス(サンジャクバーベナ)など高性種もあります。

●関連ページ
宿根バーベナを例にした、摘心(ピンチ)で枝数を増やす方法

基本データ
園芸分類 草花
形態 一年草,多年草 原産地 南北アメリカの熱帯から亜熱帯
草丈/樹高 20~150cm(高性種を含む) 開花期 5月中旬~11月中旬
花色 白,赤,ピンク,紫,複色 栽培難易度(1~5) 
耐寒性 弱い(一年草品種)~やや弱い(多年草品種) 耐暑性 普通(一年草品種)~強い(多年草品種)
特性・用途 開花期が長い,初心者でも育てやすい


「森のシャンデリア」とも呼ばれるエゴノキの花(20-089)

2020年05月23日 09時02分08秒 | 

あっという間に咲いてあっという間に散ったエゴノキの花。今年はどの花も足が速い。下向きに咲いて笑いかけてくれるエゴノキの花は毎年の楽しみの種なのだが。実を噛むとえぐいのでエゴノキというらしい。それわり「日本のスノーベル」という英名がしっくりする。樹脂がバニラの香りがするので、中国名は「野茉莉」。

(2020-05 川崎市 公園) 

【エゴノキとは】

・北海道から沖縄まで日本全国の雑木林に見られるエゴノキ科の落葉高木。若い実が石鹸の代用になるためセッケンノキとして古くから実用されていたが、花や樹姿の清涼な雰囲気が評価され、近年は雑木の庭に好んで用いられるようになった。日本以外でも中国や朝鮮半島など東アジアの山野で見られる。

・新緑が美しい5~6月になると、枝先いっぱいに鈴のような花が咲く。独特の美しさがあり、「森のシャンデリア」と称される。原種は白花だが「ピンクチャイム」などのピンク花も人気があり、いわゆるシンボルツリーとして使われることもある。白花もピンク花も花弁は5枚だが、いずれもその基部で一つになっている。

・秋にできる薄緑色の実は長さ2センチほどの卵型で、10月頃に熟し、中には種子が一粒含まれる。この実を噛むと「えごい(えぐい)」味がすることから「エゴノキ」と名付けられた。

・果皮には喉を刺激するエゴサポニンという有毒物質が含まれ、誤食すると胃の粘膜がやられて喀血するおそれがある。かつて、痰切りの目的でエゴの実を製薬化したことがあったものの、胃への副作用があり製造は中止となった。また、現在は禁止されているが、実を川上で擂り潰して有毒物質を流し、麻痺した魚を川下で捕獲するという魚捕りの方法があった。実は染料として染物に使われる。

・別名の「ロクロギ」はロクロ細工に使われる木という意味。材が入手しやすく、かつ緻密で割れにくいため、和傘の部材(傘ロクロや柄)、糸巻き、かんじきなどの日用品や、こけしなどの民芸品、独楽やけん玉などの玩具に使わる。なお、ロクロ細工とは、ロクロ(轆轤)をまわしながら木を加工する伝統工芸のこと。

・もう一方の別名「チシャノキ」はムラサキ科の樹木「チシャノキ」(カキノキダマシともいう)との混同からとされる。なお、漢字の

「野茉莉」は中国名に由来する。

・エゴノキの葉は長さ4~8センチ、幅2~4センチの卵形あるいは楕円形で、先端が細く尖る。縁にギザギザがある葉と、ギザギザのない葉があり、枝から互い違いに生じる。

・樹高は最大で12mほど、幹の直径は30センチ程度になる。樹皮は黒味を帯びた灰色で、樹齢を重ねると浅い裂け目ができる。東南アジアに分布するエゴノキの仲間は、樹脂から香料「安息香」を採取するが、エゴノキの樹脂もバニラのような香りがする。


躍動感のあるラン「ファレノプシス・ビーチアナ」(蘭シリーズ 20-18)

2020年05月23日 07時57分45秒 | 

躍動感のあるラン「ファレノプシス・ビーチアナ」。ファレノプシス・シレリアナとファレノプシス・エクエストリスの自然交配で生まれた品種。ゆったりと垂れたリップがよいバランスをとっている。

(2020-02 東京都 神代植物公園) 

ファレノプシス・ビーチアナ

ラン科ファレノプシス属

学名  Phalaenopsis Veitchiana

原産地 栽培種

多年草


 園芸品種だが原種のような趣のような品種である。

交配親は「schilleriana x equestris」で特徴ある原種同士の交配

である。葉にはシレリアナのような斑が入り、花は小型であるが

花茎が枝分かれするために多花性になる。

Phalaenopsis × veitchiana
Phalaenopsis veitchiana
Hybrid Classification
Seed Parent: Phalaenopsis equestris
Pollen Parent: Phalaenopsis schilleriana
Genus: Phalaenopsis
Hybrid Epithet: Phal. × veitchiana
Binomial name
Phalaenopsis × veitchiana
Natural
Rchb.f. 1872

Phalaenopsis × veitchiana is a natural hybrid between Phalaenopsis schilleriana × Phalaenopsis equestris.

DescriptionEdit
The plant is found in the Philippines

CultureEdit
Grow intermediate to warm. Pot in medium fir bark and keep in partial shade. Water about once a week. Keep plant fairly moist but not wet.


柔らかなペールピンクがやさしいバラ「ローザ・ベルモント」(薔薇シリーズ199)

2020年05月23日 07時22分07秒 | 

柔らかなペールピンクがやさしいバラ「ローザ・ベルモント」。半剣弁高芯咲きの中輪の花が静謐なイメージをかもす。花芯にかけてピンクが濃くなるのが分かる。花弁の末端の紅色も素敵。

(2019-11 川崎市 生田緑地バラ苑) 


ローザ ベルモント
Rosa Belmonte

淡ピンク色の美花で、葉は豊富に茂る。
フルーティーな香り。丈夫な強健種。

別名 【Harpearl】

品種名 ローザ ベルモント
      Rosa Belmonte
作出  2007年 イギリス Harkness
系統  F フロリバンダ
交配  未発表

花色  ペールピンク
花形  ●
花径  中輪
芳香  中香   ★★★☆☆

開花  四季咲き ★★★★☆

樹高  1.0m
    

系統 F フロリバンダ
花色 淡いピンク
花形 半剣弁高芯咲き
花径 中輪
芳香 ★★★☆☆中香
香質 
開花 ★★★★☆四季咲き
樹高・伸長 1.2m
樹形 木立樹形 普通タイプ

 

 

 


園芸種で多くみかけるようになった白のコバノタツナミソウ(20-088)

2020年05月22日 09時26分13秒 | 

最近、園芸種で多くみかけるようになった白のコバノタツナミソウ。野草のタツナミソウと比較すると、花も葉も大きいものが多い。

(2020-04 川崎市 道端) 

 

タツナミソウ
タツナミソウは、日本、中国、朝鮮半島などに分布するシソ科タツナミソウ属の常緑性多年草です。
タツナミソウ属の植物は、世界に広く約200種が分布しており、日本には16種が自生しています。

日本で最も多く見られるのがタツナミソウ(Scutellaria indica)で、北海道を除く全国に自生しており、草原や森林の開けた場所などで普通に見られる野草です。
多くの変種が確認されており、種の同定が困難な植物としても知られています。

園芸的に最も多く栽培されるのは、タツナミソウの変種であるコバノタツナミ(Scutellaria indica var. parvifolia)で、福島県以南の本州、四国、九州などに分布しています。
ここではタツナミソウとコバノタツナミの育て方について紹介しています。

タツナミソウの花期は4月~5月。
花期になると、伸びた茎の上部に花序を出し、長さ2㎝程度の小さな花を穂状に咲かせます。
花はシソ科やゴマノハグサ科の植物に多く見られる唇花形で、花序の片側に偏って咲きます。
花弁の内側には繊細な模様があり、この花姿が泡立って押し寄せてくる波の様子に似ていることから、立浪草(タツナミソウ)の名前がついたと言われています。
花色は紫、白、ピンク。


燕が飛んでいるような形の薄紫の花がかわいい「セリバヒエンソウ」」(20-087)

2020年05月22日 08時27分48秒 | 

芹葉飛燕草 という名前どおり、燕が飛んでいるような形の薄紫の花がかわいい「セリバヒエンソウ」。繁殖力が強くて嫌われているところもあるようだが、明治以来の帰化植物でもあり、駆除しなくてもいいのでは。

(2020-05 川崎市 公園) 

 

セリバヒエンソウ
学名 Delphinium anthriscifolium
別名 
芹葉飛燕草 分類 キンポウゲ科ヒエンソウ属 (1年草) 有毒植物
セリのような葉、ツバメが飛んでるような形の花からついた名。 原産・分布 中国。明治時代に渡来。東京を中心に分布。
神奈川県 川崎市、相模原市の平地、丘陵地に分布を広げている。
花の時期 4月~5月

外来種ではあるが、葉や花が柔らかく綺麗なせいもあり在来の山野草のように思う人も多そうだ。同じ属の在来種は無い。
セリバの名の通り、よく似た葉はセリ科に多い。ヤブニンジンやヤブジラミと混生していると区別がつきにくい。
一年草で繁殖力が強いということは種子の発芽率が高いということか。
駆除するには種子を付ける前、花のときに全部抜き取ってしまえば一網打尽なのだが。


純白の花弁がみごとなラン「ドリテノプシス・シティーガール モリタNo.2」(蘭シリーズ 20-17)

2020年05月22日 07時46分24秒 | 

純白の花弁がみごとなラン「ドリテノプシス・シティーガール モリタNo.2」。中心のリップだけ赤紫のアクセントをつけている。芸術品のような美麗な蘭である。ドリテノプシスはコチョウラン属に近縁のドリティス属と交配した属らしい。

(2020-02 東京都 神代植物公園) 

ドリテノプシス・シティガール‘モリタNo.2’

分類 キジカクシ目ラン科ドリテノプシス属
学名 Dorytaenopsis City Girl ‘Morita No2’
属性 多年生草本 互生葉序 穂状花序 花色:白 花期:
原産地 園芸品種


クリームホワイトの花弁が中心部では淡く杏色になるバラ「コスモス」(薔薇シリーズ198)

2020年05月22日 07時02分22秒 | 

クリームホワイトの花弁が中心部では淡く杏色になるバラ「コスモス」。日本のコスモスとは違って、丸弁高芯咲きの花が重そうだ。ドイツのコルデス社の作出によるもので、花のコスモスではなく宇宙のコスモスをイメージして名付けられた花のようだ。なるほど。

(2019-11 川崎市 生田緑地バラ苑) 

 

バラ「コスモス」

野性の強さを秘めた元気なバラ

系統 F フロリバンダ
花色 クリームホワイト中心淡杏
花形 ロゼット咲き
花径 中輪
芳香 ★★☆☆☆微香
香質 ティー
ティー香 
開花 ★★★★☆四季咲き
樹高・伸長 1.0m
樹形 シュラブ樹形 横張りタイプ

 


クラシックなラベンダー色がきれいな「藤」(20-086)

2020年05月21日 09時28分42秒 | 

今の時期にはもう終わってしまった藤の花。クラシックなラベンダー色がきれい。アップにしてみると、マメ科の花であることがよく分かる。日本の原産種らしい。古来からある花で、目立つだけに俳句ではほとんど限りなく歌われている。「生きてゆく時の切れ目よ藤垂りて 橋本多佳子」。

(2020-04 川崎市 道端) 

フジ(藤、学名: Wisteria floribunda)は、マメ科フジ属のつる性落葉木本。

一般名称としての藤には、つるが右巻き(上から見て時計回り)と左巻きの二種類がある。右巻きの藤の標準和名は「フジ」または「ノダフジ」、左巻きの藤の標準和名は「ヤマフジ」または「ノフジ」である(牧野富太郎の命名による)。

形態・生態
つるは木に巻きついて登り、樹冠に広がる。直射日光の差す場所を好む、好日性植物である。花序は長くしだれて、20cmから80cmに達する。花はうすい紫色で、藤色の色名はこれに由来する。他のマメ科植物同様、夜間は葉をすぼめる。

分布・生育地
日本産のフジは固有種。海外のフジは、フジ属に属する別の品種である。
日本では本州・四国・九州の温帯から暖帯に、低山地、平地の林に分布する。
日本で有名なものに亀戸天神社(東京都)、牛島藤花園(埼玉県)、長泉寺(埼玉県)、久伊豆神社(埼玉県)、あしかがフラワーパーク(栃木県)などのふじがある。

人間との関わり

強い日当たりを好むため、公園や庭園などの日光をさえぎるものがない場所に木や竹、鉄棒などで藤棚と呼ばれるパーゴラを設置し、木陰を作る場合が多い。天蓋に藤のつるをはわせ、開花時には隙間から花が垂れ下がるように咲く。変異性に富んでおり、園芸品種が多い。一才藤(いっさいふじ)として鉢植えや盆栽用に流通するのは、樹高50cmくらいの一才物のフジ。

旧・大阪府西成郡野田村(現・大阪市福島区玉川・野田・吉野・大開など)はノダフジ(野田藤)と呼ばれる藤の名所で、牧野富太郎による命名のきっかけとなった。玉川に鎮座する春日神社には、野田の藤跡碑がある。

花は天ぷらなどにすることができる。ただし他のマメ科植物同様にレクチンを中心とした配糖体の毒性が含まれており、多量に摂取すると吐き気、嘔吐、眩暈、下痢、胃痛などを起こすおそれもあるためあまり食用には適していない。加熱されていない種子は中毒の可能性がより高くなる。その他に、樹皮や莢にはウイスタリン(wistarin)、種子には有毒性アルカロイドの一種であるシチシン(cytisine)が存在するという報告も上がっている。

また、他のつる性植物同様に民具の素材とされてきた。藤の花や葉を図案化した家紋「藤紋」があり、十大家紋に数えられている程多くの家に使用されている。

 

藤 の俳句

藤 の例句 
「不耕貪食」花蓼すらも藤の形 香西照雄 対話
あはれさは牛仰むかす藤の花 政岡子規 藤
いくたびも出ては水うつ藤の茶屋 富安風生
いまは藤咲く颱風を娶る紀伊 山口誓子
うち向ふ谷に藤咲くゆあみかな 水原秋櫻子 葛飾
うはばみの巻きつきたるがごとき藤 阿波野青畝
おくつきにとゞきし藤や熊野供養 百合山羽公 春園
おちついてくらせば宵の藤が濃き 大野林火 海門 昭和七年
かかりたる藤の翠微のはなやかに 阿波野青畝
かんざしの蝶ちらつくや藤の花 政岡子規 藤
くぐりては傘上ぐる藤の雨 阿波野青畝
くもり来し重さの藤の熊野供養 能村登四郎
ここに立てば藤房島の上に垂る 山口青邨
こころにもゆふべのありぬ藤の花 森澄雄
この径の藤咲くむかし信徒逆殺ヘ 山口青邨
そこここに藤がかかれり妻つれて 山口青邨
てのひらに藤房一つ花こぼす 山口青邨
ながからむ妻の祈りや藤の花 齋藤玄 飛雪
のめり聳つ巌薄明の懸り藤 鷲谷七菜子 銃身
はるかなる約婚の日や藤も褪せ 山口誓子
ひと紋は藤なる武者幟 福田蓼汀 秋風挽歌
ふぐりてふかすかな重り藤ゆふべ 能村登四郎
ふるさとの井戸のくらがり藤散りこむ 桂信子 新緑
ほぐれんとする藤房の下にゐる 廣瀬直人
ほと酔ふも神酒なればよし藤の昼 稲畑汀子
ほのぼのと藤は醜神鎮めたる 阿波野青畝
ほのぼのと虚空界より藤の花 鷲谷七菜子 一盞
まず藤がのぞく隧道穴明り 赤尾兜子 歳華集
まだ風のたけも短し藤の花 政岡子規 藤
まつの藤しきりに露をこほしけり 政岡子規 藤
みどり児のあくび短し藤の花 星野麥丘人
むらさきの藤房死者の忘れもの 秋元不死男
もろうてさしてよく寝ている子に藤のはな 荻原井泉水
やはらかき藤房の尖額に来る 橋本多佳子
ゆふかぜや藤の花房甕にあまり 大野林火 海門 昭和九年
ゆらぐとき藤見あぐれば猿の顔 阿波野青畝
ゆらゆらと帆綱めきたる藤の幹 阿波野青畝
わが頭上無視して藤の房盗む 橋本多佳子
われ山上に眼下の真藤おぼろめく 赤尾兜子 歳華集
ステッキではない杖もつて藤の花かな 荻原井泉水
ローマよし七つの丘に藤咲きて 山口青邨
一つある耶馬の湯宿も藤に暮れ 阿波野青畝
一つらに藤の實なびく嵐哉 政岡子規 藤の實
一つ長き夜の藤房をまのあたり 高浜年尾
一房の藤下げてもつ鯖のごとし 山口青邨
一日中藤の枯蔓日当らず 高野素十
万緑に藤豆の垂れわたりたる 阿波野青畝
三宝寺池の翡翠藤浪に 川端茅舎
三歳のわが寝息かも藤の奥 橋閒石 卯
三輪の藤宜し八十八夜より 阿波野青畝
下乗より藤讃へつつ参向す 阿波野青畝
下向にも神神坐す山の藤 阿波野青畝
乳児寝かすごとく畳に藤の房 鷹羽狩行
今日はまた西へ吹かれつ藤の花 政岡子規 藤
今日も伸び伸びけり藤の花 政岡子規 藤
低き木に藤咲いて居る山路かな 河東碧梧桐
佐保神を見送る藤の咲きにけり 上村占魚
何色に振袖そめん藤の花 政岡子規 藤
佳き藤に祖霊の宿りたまひたる 後藤比奈夫
修復成る神杉若葉藤の花 政岡子規 若葉
修験道ゆるめて山の藤咲けり 百合山羽公 樂土
僧朽ちて玉の緒の藤白く懸かる 橋閒石 卯
公卿若し藤に蹴鞠をそらしける 橋本多佳子
刺繍に倦んで女あくびす藤の花 政岡子規 藤
加太の雛源平藤橘まちまちに 阿波野青畝
勉強によその子も来て藤の午後 大野林火 早桃 太白集
原始林やさし藤房懸けわたし 津田清子
去年より一尺長し藤の花 政岡子規 藤
反橋や池を巡りて藤の棚 政岡子規 藤
反橋や藤紫に鯉赤し 政岡子規 藤
叟(そう)の杖六尺藤の長さ欲し 平畑静塔
古寺に藤の花さく枯木哉 政岡子規 藤
古水に浮いて干からぶ藤の花 富安風生
吊橋を渡る通草を藤で提げ 鷹羽狩行
吹かれてはもつれてとけて藤の花 政岡子規 藤
吹降りに当りたる日やさわぐ藤 阿波野青畝
咀嚼音ふと老めくや藤了る 能村登四郎
咲きそめて藤の花房整はず 高浜年尾
四万川をおほふ藤浪そよぐなり 水原秋櫻子 緑雲
園児等の一人に藤の房とゞく 星野立子
地に低く水にもひくく藤の房 鷹羽狩行
垂れし藤杉に美し詣でけり 阿波野青畝
城に藤播州平野海霧流れ 野見山朱鳥 幻日
城塁や咲かむとしつつ藤白し 山口誓子
墓守は読むこともなく藤の花 山口青邨
壮夫巌藤をかけたるやさしさよ 山口青邨
夕鴉眠らむとす藤暗ければ 阿波野青畝
大山に殯の藤房遠傾(なだ)れ 金子兜太
大山祇の神の藤房田に映る 飴山實 句集外
大山藤幽し荒瀬に風巻きて 鷲谷七菜子 銃身
大河に逆浪たちて藤咲けり 山口誓子
大津画に似た塗笠や藤の花 政岡子規 藤
大茶園尽きしところに藤懸る 百合山羽公 寒雁
大藤の現れ出たる恐しさ 阿波野青畝
大雨の日藤茶屋に寄りて飲む水や 中川一碧樓
天に藤地に藤神慮あるままに 阿波野青畝
天よりの藤房百に捉はるる 鷲谷七菜子 一盞
天懸る藤を古関のかざしかな 鷲谷七菜子 天鼓
天押雲命や藤さがる 阿波野青畝
天神のおとがひ長き藤の房 鷹羽狩行
奥にまで夕日のさして藤の棚 鷹羽狩行
女の心触れあうてゐて藤垂るる 桂信子 月光抄
娵どりの暮やどこかに藤が咲き 山口誓子
子規の藤池のおもてにとどきさう 亭午 星野麥丘人
宙に浮く藤根に腰を掛けむとす 阿波野青畝
寧楽山は藤咲けるなりくもれども 水原秋櫻子 霜林
尼僧きて藤のむらさきくもりけり 秋元不死男
山に碑が建つ藤躑躅色をそへ 山口青邨
山の藤見て来て鉄路跨ぐかな 山口誓子
山の辺のみちのべの藤つつじなど 阿波野青畝
山口の昏るるに間ある藤の花 松村蒼石 寒鶯抄
山宿や藤のこぼるゝ裏廂 高野素十
山水の上に綾なす藤の花 右城暮石 句集外 大正十五年
山猿をのせてゆらめく藤の花 阿波野青畝
山神の藤さらばこそ花少な 飯島晴子
山藤や短き房の花ざかり 政岡子規 藤
山路やかたみに見えし藤の花 阿波野青畝
岨の藤ゆらぐは瀧の懸りけり 水原秋櫻子 殉教
岩藤ののり出し咲ける淵くらし 松本たかし
岩藤の高き雫や淵の雨 松本たかし
岩藤や犬吼え立つる橋の上 村上鬼城
岩藤や降らで過ぎにし山の雷 森澄雄
峯の松に藤なるらんと思ふのみ 阿波野青畝
島の藤漁網うち懸けたるごとし 阿波野青畝
崖削いで天嶮をなす藤の花 上田五千石『森林』補遺
崩れゐる朝の藤いろ牡丹かな 佐藤鬼房
巨き松大き藤かけ淋漓たり 山口青邨
巫女の髪ぐらゐの丈の藤に手を 阿波野青畝
常濡れの巌温みなく深山藤 鷲谷七菜子 銃身
御仏は藤の莟を眉としぬ 山口青邨
御婚儀を祝ふや藤の作り花 政岡子規 藤
御慶事を祝ふや藤の造り花 政岡子規 藤
微笑みてかしらよけたる藤の花 三橋敏雄
念仏に季はなけれとも藤の花 政岡子規 藤
恩寵の如し藤咲き満ちたるは 石塚友二 磊[カイ]集
我すでに昏れたり藤も三尊も 橋閒石 卯
我笠に藤振りかゝる山路哉 政岡子規 藤
手に提げし藤土につくうれしさよ 政岡子規 藤
手力にもげざる藤のゆらぎかな 阿波野青畝
手甲の手が立藤を剪りにけり 清崎敏郎
手繰る藤素直に寄り来藤ちぎる 橋本多佳子
持ちそふる狩衣の袖に藤の花 政岡子規 藤
掛茶屋や頭にさはる藤の花 政岡子規 藤
揺り離すかに藤落花ゆたかなれば 香西照雄 素心
揺るぎなき大藤房となり暮るる 鷲谷七菜子 銃身
放置さる藤の白房地に触るを 山口誓子
散る藤のほろほろわれに恋あるごと 伊丹三樹彦
散る藤や真近嶺にさへ雪残り 及川貞 榧の實
新道路広くなりたる藤の花 右城暮石 散歩圏
旅立の髪梳くゆふべ藤おもし 鷲谷七菜子 黄炎
早乙女や藤の花房髪に垂れ 水原秋櫻子 緑雲
明寺に藤の花咲く枯木哉 政岡子規 藤
明治慶応此の茂る藤の老木なり 荻原井泉水
昔絵の春や弁慶藤娘 政岡子規 春
春信のいたるところに藤さかり 下村槐太 天涯
春園やサロンは藤を垂れそむる 百合山羽公 春園
春日野の藤を華鬘となしたまふ 水原秋櫻子 葛飾
春早しまだ芽もふかぬ藤の棚 政岡子規 春浅し
春著の人藤綱橋を小急ぎに 山口青邨
昼休み藤の盛りを言ふ女工 三橋鷹女
月はなほ光放たず藤の房 山口誓子
木がくれて藤残る家の障子かな 渡邊水巴 白日
木の末をたわめて藤の下りけり 政岡子規 藤
木をあげて藤の紫吹きもまれ 阿波野青畝
木仏師や水のごとくに藤筵 古舘曹人 樹下石上
木馬道しばらくゆけば藤こぼれ 山口青邨
本を読むゼ石藤の花こぼれ 山口青邨
束髪の余り背高し藤の花 政岡子規 藤
来し方の藤美しきこと告げよ 阿波野青畝
来て見ればひとに売る家の藤咲けり 及川貞 榧の實
松の木に藤さがる画や百人首 政岡子規 藤
枯れたる樹春日(かすが)の藤を懸けて立つ 津田清子
枯藤に雲の按配きまりけり 飯島晴子
梢の子躍り満樹の藤揺るる 中村草田男
棚藤の上なる山に懸り藤 松本たかし
森の主藤一連に咲かせたり 平畑静塔
椅子沈む思いの 藤の花の昼 伊丹三樹彦
樹に巻きて藤一つ燈の歓喜天 古舘曹人 砂の音
橋際に藤棚のある茶店哉 政岡子規 藤
檻の天より藤垂れ獅子を懐柔す 津田清子 礼拝
歇むまじき藤の雨なり旅疲れ 杉田久女
此の家の藤に向ひて一人坐す 右城暮石 句集外 大正十年
武蔵野の古へよりの藤の茶屋 富安風生
歩み板とつて返して藤の花 石田勝彦 秋興以後
歩をとどめとどめて藤に能役者 下村槐太 天涯
母の顔わすれ野藤の花を知る 山口青邨
水まではとどかぬ風や藤の花 政岡子規 藤
水神の水音藤をかげらしめ 佐藤鬼房
水谷川の雨滴はげしきかかり藤 阿波野青畝
永き日やそのしだり尾の下り藤 政岡子規 藤
汁粉屋の狭き庇に藤枯るゝ 清崎敏郎
汗くさき女工となりて藤を知らず 三橋鷹女
池に散り藤撒き餌とも蒔絵とも 鷹羽狩行
沈思する場所藤の実の下にあり 百合山羽公 樂土
泉辺は藤蔓掛けて直き木々 中村草田男
浜べの田石州の藤垂れにけ`り 阿波野青畝
浴後未だ明るさのこす軒の藤 能村登四郎
海へ向け藤浪の丘二夕流れ 松崎鉄之介
深山藤蔓うちかへし花盛り 前田普羅 春寒浅間山
深山藤風雨の夜明け遅々として 前田普羅 飛騨紬
深山路や松の闇より藤の花 政岡子規 藤
淵くらし逆落ちざまに深山藤 鷲谷七菜子 銃身
湯抱の小宿三軒藤の花 阿波野青畝
満目の藤浪に酔ひ泳ぎをり 能村登四郎
滝となる前のしづけさ藤映す 鷲谷七菜子 銃身
滝の水引きある藪の土用藤 右城暮石 句集外 昭和六年
滝の面に垂れて藤蔓揺れやまず 清崎敏郎
潟に垂れ家持の藤ここに在り 阿波野青畝
激流に短か藤房花終る 山口誓子
灸屋の蕾の藤を見上げけり 飯島晴子
煙管の先に煙草立てゝは藤白し 飯島晴子
熊ん蜂狂ひ藤房明日は果つ 西東三鬼
熊野さまに線香藤にラムネ瓶 百合山羽公 寒雁
熊野のため里人のため藤長し 百合山羽公 樂土
父ありき遠き日藤を見にゆきし 安住敦
牡丹咲き藤垂れ友等すこやかに 山口青邨
物好に藤咲かせけり庭の松 政岡子規 藤
瓔珞しのび*刑冠想ふ藤の下 中村草田男
瓦焼く家に藤咲く石州路 阿波野青畝
生きてゆく時の切れ目よ藤垂りて 橋本多佳子
田の上に咲き白けけり藤の花 右城暮石 句集外 大正十四年
田は植えてうつくし松に藤のかかり 荻原井泉水
田螺売る野茶屋に藤の花早き 政岡子規 田螺
畑打つて藤一棚も培ひぬ 河東碧梧桐
病める掌にのせて藤房余りたり 橋本多佳子
白き藤房に夜が明け咳やまず 佐藤鬼房
百千の藤を垂らして幹古ぶ 鷹羽狩行
直会にゆふべの藤の揺れにけり 阿波野青畝
眉にかゝる藤の長房むらさきに 村山故郷
砂ずりの藤の短かさにはふれず 後藤比奈夫
砧石の落花の藤をうち払ふ 前田普羅 飛騨紬
磐座として天つ藤国つ藤 阿波野青畝
磨崖佛消えぎえに世に藤の花 森澄雄
神にます山のはづれに藤咲きぬ 阿波野青畝
神の扉にどの藤房のかげならめ 阿波野青畝
神域の 藤と競うて 首振る亀 伊丹三樹彦
禅の天藤房暗く懸りたり 山口誓子
稿疲れ昆蟲界に藤垂れて 秋元不死男
窓あきしまま藤の夜となりにけり 桂信子 女身
窓の樹や藤たかだかと濃むらさき 飯田蛇笏 春蘭
窓の藤煌くや殊に妻居ぬ日 中川一碧樓
窓遠き逗子や炭屋に藤垂れて 飯田龍太
窗の樹や藤たかだかと濃むらさき 飯田蛇笏 心像
立雛の衣手藤の匂ふなり 水原秋櫻子 蓬壺
竹あれば竹に懸りて藤の房 鷹羽狩行
竹垣に咲いてさがれり藤の花 村上鬼城
筍藪の外にかゝりて藤新芽 右城暮石 句集外 昭和七年
篠原の風にもつるる藤懸り 阿波野青畝
粕壁の藤を見に来し野の曇り 村山故郷
素盞嗚に大藤匂ふ夕べかな 森澄雄
紫の藤の細工や蜆殻 政岡子規 蜆
結界に六尺藤を現じてし 平畑静塔
絵を習ふ絵師か娘や藤の花 政岡子規 藤
翁道すぎきぬ藤に二度の花 松崎鉄之介
老い古りて不死身の真藤芽を吹けり 阿波野青畝
腰掛に眠れる人や藤の花 渡邊白泉
自堕落の羅漢もおはす藤ぐもり 上田五千石『森林』補遺
船白し藤蔓に潮流るる九月 飯田龍太
花乏し藤の紫柔毛たつ 石橋秀野
花咲かぬ藤の若葉の書斎かな 山口青邨
花屑のむらさきなれば藤といふ 山口青邨
花散りし藤の若葉の毛虫哉 政岡子規 若葉
花藤と女の裳裾と揃ひ揺れ 波多野爽波 鋪道の花
花藤の力抜かざる房の先 能村登四郎
花藤や母が家厠紙白し 中村草田男
苗代の畦さへ藤を垂れにけり 富安風生
若き等は藤の辺をゆき藤は見ず 富安風生
若杉の梢を走る藤ありぬ 山口青邨
茶柱やあるじの鉢に藤つつじ 石川桂郎 含羞
草深く木深き寺の藤を見し 松本たかし
荒き雨横渡りして山の藤 細見綾子
菫見て過ぐ藤房を見に来しなり 山口誓子
落ちかゝる岩を抱えて藤の花 政岡子規 藤
落ちかゝる石を抱えて藤の花 政岡子規 藤
葉かげなるただ一房の藤を愛づ 山口青邨
葡萄狩る源平藤橘借り鋏 百合山羽公 樂土
蔓たれて水田のへりに下り藤 阿波野青畝
薄暮より血を引く藤の色もなし 古舘曹人 能登の蛙
藁屋根に藤房が臥て犬も留守 香西照雄 素心
藤あまた咲かせ山には齢なし 鷹羽狩行
藤かかり寺格も賤しからずとか 高野素十
藤かかり尖帽(カプチーヌ)僧本を読む 山口青邨
藤かかり立たせ給へる観世音 山口青邨
藤かかるレストーランは嬉しけれ 山口青邨
藤か橘か山田案山子の目鼻立 上田五千石『風景』補遺
藤が咲き平々として川行けり 山口誓子
藤こぼれ石平らかに卓となす 山口青邨
藤こぼれ遺族の人等やすらへり 山口青邨
藤さかり今がさかりと思へりし(奈良二句) 細見綾子
藤さがるあちらこちらの梢かな 政岡子規 藤
藤さげて大洞山のあらし哉 前田普羅 飛騨紬
藤さげて水に見とるゝ柳かな 渡邊白泉
藤づるのからまる下の流急 阿波野青畝
藤のかげ友いとし妻さびにける 桂信子 月光抄
藤の下古郷夫人を大と見き 星野麥丘人
藤の下犬無雑作に通りけり 桂信子 月光抄
藤の下赤犬藤をしらずゆく 桂信子 月光抄
藤の前舞ひ納めたる初扇 森澄雄
藤の天重き飛行機ゆつくり飛ぶ 山口誓子
藤の房しばらく赤き西日さす 山口誓子
藤の房まさぐりてゐて面向けず 上田五千石 田園
藤の房寄りあひ雨のだだ漏れに 橋本多佳子
藤の房成さずよ雑木低ければ 阿波野青畝
藤の房松の花粉の風に寄る 石橋秀野
藤の房長しゆふべの壺は濡れ 橋閒石 朱明
藤の房風に遊びのはじまりぬ 鷲谷七菜子 一盞
藤の昼けだるさ故の無口かな 中村苑子
藤の昼膝やはらかくひとに逢ふ 桂信子 女身
藤の根の這ひて石段とぎれがち 阿波野青畝
藤の花こぼして門は開くなり 山口青邨
藤の花こぼれ石の卓石の榻 山口青邨
藤の花ちぎつて若き日の匂ひ 百合山羽公 樂土以後
藤の花ほつりと夫を待つ日暮 桂信子 月光抄
藤の花またチエホフにかへりくる 亭午 星野麥丘人
藤の花よく晴れたれば昼寝たり 森澄雄
藤の花了る匂ひに顔合はす 飯島晴子
藤の花咲き垂れて病日々に快し 村山故郷
藤の花挿して翁九十四端坐しておる 荻原井泉水
藤の花昼より雲の風を呼ぶ 上村占魚 鮎
藤の花産後の顔の睡りをり 森澄雄
藤の花盛りにダムの定水位 鷹羽狩行
藤の花真下に落ちて岸に寄る 山口誓子
藤の花西日を背に掃く小庭 上村占魚 鮎
藤の花見てねむくなる田舎寺 百合山羽公 寒雁
藤の花這うていみじき樹齢かな 阿波野青畝
藤の花長うして雨ふらんとす 政岡子規 藤
藤の芽のもたげかけゐるほの白さ 右城暮石 句集外 昭和十三年
藤の芽の高きより雨こぼし降る 右城暮石 句集外 昭和十一年
藤の芽は花さきさうになかりけり 政岡子規 藤
藤の芽や竜翔ぶ姿そのままに 阿波野青畝
藤の芽を撓めて落ちぬ雨蛙 前田普羅 普羅句集
藤の葉に雨上がるらし鷹の声 右城暮石 句集外 昭和十七年
藤の葉の満天にあり散りはじむ 古舘曹人 能登の蛙
藤の蔓千切る力が足らざりし 阿波野青畝
藤の蔓引けば動きて雉出さう 右城暮石 声と声
藤の蔓羅漢を指してゆれてをり 下村槐太 天涯
藤の虻ときどき空を流れけり 藤田湘子
藤の長房年年に短くなるとよ老僧よ 荻原井泉水
藤の雨子叱る暗き母の顔 波多野爽波 鋪道の花
藤の風まなこ明るきものぐるい 橋閒石 荒栲
藤の香のここは届かず伎芸天 稲畑汀子
藤の高さ山の深さを告ぐるごとし 大野林火 方円集 昭和五十三年
藤はさかり或る遠さより近よらず(奈良二句) 細見綾子
藤も垂れぎは少女ら髪を編み垂らし 三橋鷹女
藤わたり仁王の胸の朱剥げたり 山口青邨
藤を去る人に別るる如くなり 山口青邨
藤を描くならはし加茂の扇には 後藤比奈夫
藤を描く背後の山は描ききれず 津田清子
藤を眺めてよく話す薬売り 廣瀬直人
藤を瞳にゑがきて模範女工なり 三橋鷹女
藤を見て来しが電燈黄に点る 山口誓子
藤を見に行きしきのふの疲れ哉 政岡子規 藤
藤六が平六具して御慶かな 内藤鳴雪
藤冷のあとの牡丹の冷なりけり 安住敦
藤千房青年ら顎立て膝伸し 赤尾兜子 歳華集
藤咲いて 妻の婚歴句歴似る 伊丹三樹彦
藤咲いてバタヤ等ここに行き合へり 三橋鷹女
藤咲いて人にさみしきうなじがある 三橋鷹女
藤咲いて低きは池に垂れて咲く 村山故郷
藤咲いて天のしづけさ垂れにけり 鷲谷七菜子 游影
藤咲いて山の手曇る都かな 渡邊白泉
藤咲いて新しき彩一つふゆ 野澤節子 存身
藤咲いて映る湯壷やかきこはす 渡邊白泉
藤咲いて昼夜わかたぬ川流る 山口誓子
藤咲いて海光ひとの額に消ゆ 三橋鷹女
藤咲いて眼やみ籠るや薬師堂 政岡子規 藤
藤咲いて碓氷の水の冷たさよ 臼田亜郎 定本亜浪句集
藤咲いて背合せに佛立ちたまふ 水原秋櫻子 霜林
藤咲いて起居にまとふ翳淡し 鷲谷七菜子 黄炎
藤咲いて近づく音のいくたびも 廣瀬直人
藤咲きて離宮に擬ふ竹の縁 山口誓子
藤咲きぬ松に一夜を寝て見やう 政岡子規 藤
藤咲きぬ林あかるく風あふれ 水原秋櫻子 重陽
藤咲くやむかし小使室暗し 岡本眸
藤咲くや瀬がしらはしるあめの魚 水原秋櫻子 緑雲
藤咲くや野井にいびつな旅の顔 角川源義
藤咲く家母をも末弟汝が護りし 中村草田男
藤咲けばその蒼空が目に残る 右城暮石 句集外 昭和十五年
藤咲けば淡き羽織の裏模様 飯田龍太
藤咲けり杖に縋りてもよろめくか 小林康治 四季貧窮
藤咲ける襞も夜明くる浅間山 前田普羅 春寒浅間山
藤垂らす荒瀬と荒瀬との間 山口誓子
藤垂るる日の土臭さ子と分かち 廣瀬直人
藤垂るる法事の僧を呼びにゆく 廣瀬直人
藤垂れてここ浦古し舟作る 阿波野青畝
藤垂れてこの世のものの老婆佇つ 三橋鷹女
藤垂れてむらさきに淵よみがへる 原裕 青垣
藤垂れてわが誕生日むらさきに 山口青邨
藤垂れて一園殊に春ふかし 水原秋櫻子 殉教
藤垂れて傘下一切水の音 古舘曹人 能登の蛙
藤垂れて川遠くより来りけり 山口誓子

藤垂れて春蚕はねむりさめにけり 加藤秋邨
藤垂れて松風ばかり宙にあり 廣瀬直人
藤垂れて水神の空むらさきに 原裕 青垣
藤垂れて深山にねむるごとき顔 飯田龍太
藤垂れて病室まぎれなくにほふ 飯田龍太
藤垂れて紙漉くひとりふたり見ゆ 相生垣瓜人 微茫集
藤垂れて遠く奥峰にかかる滝 村山故郷
藤娘は嫂の遺愛や春深し 山口青邨
藤懸かる山墓に佳き火を蔵へ 佐藤鬼房
藤懸けて小濱渚の息づかひ 佐藤鬼房
藤懸けて道をいざなふ出湯村 野澤節子 八朶集以後
藤懸る電気起して無臭の川 山口誓子
藤房が垂れて潮引川の上 鷹羽狩行
藤房にあしながむすめとびつきぬ 平畑静塔
藤房にかへらぬ花の散りこぼれ 平畑静塔
藤房に山羊は白しと旅すぎゆく 金子兜太
藤房のこのしなやかさわれに欲し 鷹羽狩行
藤房のもつるることのなき乱れ 鷹羽狩行
藤房のゆつくりと揺れ急に揺れ 清崎敏郎
藤房の先の重りや雨しづく 能村登四郎
藤房の先まで雨の音つたふ 能村登四郎
藤房の垂るるに倦みて揺れにけり 鷹羽狩行
藤房の堪ゆるかぎりの雨ふくむ 橋本多佳子
藤房の夜見の国あり陽の山あり 金子兜太
藤房の寸余をあます蝌蚪の上 上田五千石『森林』補遺
藤房の幼きは反り衣川 佐藤鬼房
藤房の幼くて風素通りす 鷲谷七菜子 一盞
藤房の揺れる長さの違ふ風 稲畑汀子
藤房の柱にそひて衰へし 高野素十
藤房の柱にそひて長かりし 高野素十
藤房の百の裾よりのぼる闇 鷲谷七菜子 游影
藤房の盛り上がらむとしては垂れ 鷹羽狩行
藤房の色より来たる夕べかな 桂信子 草影
藤房の花にはあらぬものこぼす 山口青邨
藤房の身も世もあらぬごとく揺れ 鷹羽狩行
藤房の身重かくさず水の上 上田五千石『田園』補遺
藤房の途中がピクと動きたり 永田耕衣
藤房の隙間だらけに入日時 橋本多佳子
藤房の風生むために揺れはじめ 鷹羽狩行
藤房は力尽きたる祭かな 石田勝彦 秋興
藤房を剪り思はざる水しぶき 能村登四郎
藤房を妻の手に載す平かに 石川桂郎 含羞
藤房を寸断にせし子と帰る 山口誓子
藤房を浸すごとくに 暮色きて 鷹羽狩行
藤挿頭す宇佐の女禰宜は今在さず 杉田久女
藤揺るる昃りに習ふ高野切 鷲谷七菜子 黄炎
藤揺れて山の暗きは姥ごのみ 佐藤鬼房
藤揺れて朝な夕なの切通し 中村汀女
藤散つて波郷の肩にやゝ溜る 小林康治 玄霜
藤散るや三鬼がわたす米袋 石田波郷
藤散るや亀重なりて甲羅干し  鷹羽狩行
藤散るや黄昏を来てよく釣るる 村山故郷
藤昏るる刻の浪費をし尽して 橋本多佳子
藤暁くる吹かるるとなきさゆらぎに 鷲谷七菜子 銃身
藤暮るる谿や蒼茫と四十年 水原秋櫻子 蓬壺
藤枯れて晝の日弱る石の牛 政岡子規 枯藤
藤棚にかかりし藤の先見ゆる 桂信子「草影」以後
藤棚に提灯つりし茶店哉 政岡子規 藤
藤棚に赤提灯をつるしけり 政岡子規 藤
藤棚のある料理屋や町はづれ 政岡子規 藤
藤棚や池をめぐりて屈曲す 政岡子規 藤
藤活けて酒をさしたるきほひかな 政岡子規 藤
藤浪に雨かぜの夜の匂ひけり 前田普羅 飛騨紬
藤浪のゆらぎがかくす有為の山 能村登四郎
藤浪の松より竹へ清閑寺 川端茅舎
藤浪の溺れむばかり熊野の墓 能村登四郎
藤浪や峰吹きおろす松の風 村上鬼城
藤浪を揺らし過ぎゆく光陰か 安住敦
藤淡し観世音寺の木にかかり 山口青邨
藤満開紫の房鬱々と 山口誓子
藤男の死塵舞ふ花に風邪の息(二月十五日) 飯田龍太
藤白くまたも日をとり違えたり 橋閒石俳句選集 『和栲』以後(Ⅱ)
藤白し古書に埋れて老いる身か 橋閒石 雪
藤白の嶮を越えずに寒詣 山口誓子
藤盗む樹上少女の細脛よ 橋本多佳子
藤碧しさめざめと暮れきたるなり 飯田龍太
藤紫白澗水澄んで浅からず 日野草城
藤翳る木椅子かたへに夕爾在り 安住敦
藤芽吹く棚の四脚を水中に 岡本眸
藤若葉死人の帰る部屋を掃く 飯島晴子
藤蔓をもて遊船を繋ぎたる 清崎敏郎
藤褪せし灯ともし頃の夕嵐 飯田蛇笏 家郷の霧
藤豆の咲きのぼりゆく煙出し 高野素十
藤豆太り日々の泉辺去るべくも 香西照雄 対話
藤這へば房は地に触れざるを得ず 阿波野青畝
藤長し父存命の昔より 古舘曹人 能登の蛙
藤長し音無川は鏡なす 阿波野青畝
藤靉慧お神楽きこえそめにけり 阿波野青畝
蝶蝶のはいる透なし藤の花 政岡子規 藤
行くほかはなし白日に藤懸かり 橋閒石 和栲
行く春や日記を結ぶ藤の歌 政岡子規 行く春
行く春や苣に届きし藤の花 政岡子規 藤
行人にたちまち雨の藤となる 山口青邨
裁かるるごとく藤房岩の上 鷹羽狩行
見かへれば藤は藤色木にかかる 山口青邨
見事なる藤を背負ひて杣下山 高野素十
観音を秘佛としたり藤の花 森澄雄
誰やらの紋に結ばん藤の花 政岡子規 藤
谷の藤吹かれ浮びし風の過ぐ 清崎敏郎
谷橋に来て飯に呼ぶ藤の花 村上鬼城
谷藤の夜の闇ほらひつつ朝に 山口青邨
谷霞藤の紫消えさりぬ 阿波野青畝
赤肌の崖にちかづき藤を見る 百合山羽公 故園
越前から美濃へ溢れて藤や卯の花 金子兜太
遅藤のまれに紫さがりけり 阿波野青畝
遅藤のものに隠れて垂れにけり 阿波野青畝
遠き木にまぎれたれども藤咲けり 山口誓子
野の窪の木立匂ふは藤咲ける 水原秋櫻子 霜林
野の藤はひくきより垂り吾に垂る 橋本多佳子
野も山も静まり返り藤の花 右城暮石 句集外 昭和六十一年
針もてばねむたきまぶた藤の雨 杉田久女
鏘々と藤房鳴りて蜂迷ふ 津田清子 礼拝
長藤に蹌踉の酔ひ見えはじむ 能村登四郎
長藤に酔ふ人は人蜂は蜂 百合山羽公 樂土
長藤に長藤腐しありにけり 百合山羽公 樂土以後
門の藤むらさきにして夕かな 相馬遷子 山国
門入りておのづから触る藤の花 山口青邨
間をおいてあつまる老女土用藤 飯島晴子
雀海に入り藤太龍宮より歸る 政岡子規 雀蛤となる
雨がちに藤咲き而して散りぬ 村山故郷
雨のごとく長き藤房さびしとも 山口青邨
雨の藤大和と河内またがりて 阿波野青畝
雨ばかり降る活辧の絲柳 佐藤鬼房
雲間より垂れたる藤の濃紫 福田蓼汀 山火
青天に藤かけて巌や峰はどこ 原石鼎 花影
青岸渡寺堂塔映えて藤咲けり 水原秋櫻子 帰心
頬に触れなまぬるかりし藤の花 草間時彦 櫻山
風にゆられ水にゆられて藤の花 政岡子規 藤
風にゆれ藤をまとひて山つばき 飯田蛇笏 心像
風をやりすごせし百の藤の房 鷹羽狩行
風吹て逃るやうなり藤の花 政岡子規 藤
飢ふかき一日藤は垂れにけり 加藤秋邨
高うして藤浪池に映り得ず 松本たかし
高き木にからみあまりて藤咲けり 細見綾子 和語
高やしろ田子の藤浪房青し 山田みづえ 手甲
高空より藤こぼれくる雲明り 鷲谷七菜子 花寂び
鯉集ふ藤の落花を食べんとて 山口誓子
鶯の藤咲く山に老いにける 政岡子規 老鶯
鷹の巣の断崖藤の花かけて 山口青邨
鷹鳩と化す藤房は容れられず 政岡子規 鷹化為鳩
鷹鳩と化す藤房は隠れけり 政岡子規 鷹化為鳩
鹿の背に藤の洩れ日のみだれつつ 伊丹三樹彦
鼻ひりて老いの無惨に藤咲けり 佐藤鬼房


湿地に自生する「オランダガラシ」(20-085)

2020年05月21日 08時49分17秒 | 

湿地に自生する「オランダガラシ」。クレソンとも呼ばれる。サラダにされているのは少し手を加えた品種らしい。アップでみると、四弁の整った花だ。

(2020-05 川崎市 公園) 

 

オランダガラシ(和蘭芥子)は水中または湿地に生育するアブラナ科の多年草。クレソン(フランス語:Cresson)またはクレス(cress)ともいう。「葶藶(ていれき「てい」は草冠に「亭」、「れき」は草冠に「歴」の旧字)」ともいう。ヨーロッパから中央アジアの原産。学名としてはNasturtium officinale、N. nasturtium-aquaticum、N. aquaticum、Rorippa nasturtium-aquaticum(別属Rorippa に含める場合)が用いられる。

特徴
抽水植物もしくは沈水植物。繁殖力はきわめて旺盛。切った茎は水に入れておけば容易に発根するうえ、生長が速い。オランダガラシは清流にしか育たないという俗説は誤りで、汚水の中でも生育する。日本でもよく似たコバノオランダガラシ(N. microphyllum またはN. officinale var. microphyllum)とともに川や溝に野生化・雑草化しているのがよく見られる。葉は奇数羽状複葉、5月頃、茎の先に白い小花を咲かせ、その後細いさや状の種子をつける。

外来種問題
日本には明治の初めに在留外国人用の野菜として導入されたのが最初とされている。外国人宣教師が伝道の際に日本各地に持って歩いた事で広く分布するに至ったと言われている。日本で最初に野生化したのは、東京上野のレストラン精養軒で料理に使われたもので、茎の断片が汚水と共に不忍池に流入し根付いたと伝えられている。現在では各地に自生し、比較的山間の河川の中流域にまで分布を伸ばしており、ごく普通に見ることができる。

爆発的に繁殖することで水域に生育する希少な在来種植物を駆逐する恐れや水路を塞ぐ危険性が指摘されている。日本では外来生物法によって要注意外来生物に指定されており、駆除が行われている地域もある。

利用
栽培
半水生なので水耕栽培に向いており、特に弱アルカリ性の水でよく生育する。栽培すると高さ 50-120 cm にもなる。耐寒性は強く冷涼な気候を好む為、夏に水温が上がりすぎると弱る。日本では品種はないが、イギリスではWater、Water large leaved、Water broad leavedといった品種がある。クレソンと野生種N. microphyllumとの種間雑種のNasturtium x sterileはサラダ用に栽培されている。

 

 


珍しく黄色の胡蝶蘭「ファレノプシス・シルク・オレンジ」(蘭シリーズ 20-16)

2020年05月21日 08時15分10秒 | 

珍しく黄色の胡蝶蘭「ファレノプシス・シルク・オレンジ」。黄色の花弁に赤のストライプがはいって、見る人を驚かせる。赤のリップも力強い。

(2020-02 東京都 神代植物公園) 

 

 

ファレノプシス・シルクオレンジ

ラン科ファレノプシス属
学名 Phalaenopsis Silk Orange
原産地 栽培種
多年草
 コチョウランの園芸品種の一つ。大輪ではないが、オレンジ色の花色に紅色の葉脈模様が入り、華やかで明るい花色ながら、強い個性も感じる花である。花形も整い、発色も良い。


アプリコット色の輝くようなバラ「パーク・ロイヤル」(薔薇シリーズ197)

2020年05月21日 07時24分02秒 | 

アプリコット色の輝くようなバラ「パーク・ロイヤル」。もっと開くとピンクを帯びてくるらしい。次第に薄く黄色になるグラデーションが上品なバラだ。

(2019-11 川崎市 生田緑地バラ苑) 

 

バラ「パーク・ロイヤル」

外国語表記 Park Royal
作出年 1967年
作出者 J.H. Eddie
作出国 カナダ
咲き方 四季咲き
香り 微香
花色 橙

 

 


「老いて尚なつかしき名の母子草 高浜虚子」(20-084)

2020年05月20日 09時28分39秒 | 

どこでも咲いているハハコグサ。母と子ではなく「全体を覆う白い綿毛が「ほおけ立つ」ことから、かつてはホオコグサと呼ばれていた」という名前の由来は納得である。それでも母子草という名前ゆえに、俳句の世界では好まれた。「老いて尚なつかしき名の母子草 高浜虚子」。「いつまでも子なき妻かや母子草 遠藤緑雨」は少し寂しいか。

(2020-04 川崎市 道端) 

ハハコグサ

ハハコグサ [母子草]
花の色 黄
開花時期 4月 、 5月 、 6月
誕生花3 月 1日花言葉無償の愛
花の特徴 黄色い小さな花がつぶつぶになって固まって咲く。 花(頭花)は真ん中にある筒状の両性花と、周りにある糸状の雌花からなる。
葉の特徴 葉はへら形で、互い違いに生える(互生)。
実の特徴 花の後にできる実はそう果(熟しても裂開せず、種子は1つで全体が種子のように見えるもの)である。
この花について 属名の Gnaphalium はギリシャ語の「gnaphallon(フェルト)」からきている。 種小名の affine は「近似の」という意味である。
その他 春の七草の一つ御形(ゴギョウ・オギョウ)はこの花のことである。 若い葉や茎は食べられる。 今の草餅の材料は蓬(ヨモギ)だが、以前は母子草(ハハコグサ)が使われていたという。 全体にビロード状の白い綿毛がある。 和名の由来であるが、全体を覆う白い綿毛が「ほおけ立つ」ことから、かつてはホオコグサと呼ばれていた。それがハハコグサに変化したという。俳句の季語は春である。

 

母子草
 
草の戸の軒端草なる母子草 富安風生
父子草母子草その話せん 高野素十
母子草焦土は今も草の底 田川飛旅子
母子草山々人の世を離れ 飯田龍太
目鼻寄せ羅漢が笑ふ母子草 有馬籌子
母子草跼めば影に入りにけり ながさく清江
母子草やさしき名なり莟もち 山口青邨
老いて尚なつかしき名の母子草 高浜虚子
菩提寺へ母の手を引き母子草 富安風生
百歩にて返す散歩や母子草 水原秋櫻子
老いて尚なつかしき名の母子草 高浜虚子
母子草母居る時の我が家好き 岡林知世子
母子草なりの小さき絮とばす 田畑美穂女
笑ひこらへし叱り羅漢や母子草 福田万紗子
母子草咲く登呂人の炉址かも 岡田貞峰
島どこもばつてん訛り母子草 川村哲夫
目鼻寄せ羅漢が笑ふ母子草 有馬籌子
石仏の嘆き聞く日ぞ母子草 秋元不死男
風雪に耐えてなぞへの母子草 吉井初枝
母子草母となりても母恋し 宮尾 寿子
母子草一束ねして活けられし 寺岡 小夜子
花御堂花の卍は母子草 河野静雲
母子草咲いて仏母の日なりけり 伊藤虚舟
母子草空真青にかたまれり 上野好子
母子草跼めば影に入りにけり ながさく清江
母在りし日には見ざりき母子草 矢島渚男
女坂に向くひと叢の母子草 河野多希女
菩提寺へ母の手を引き母子草 富安風生
母子草やさしき名なり莟もち 山口青邨
父と子の暮しに慣れて母子草 五十島典子
母子草利根の船路はすたりける 水原秋桜子
老いて尚なつかしき名の母子草 高浜虚子
娘の胸の少しふくらむ母子草 中村真由美
闇のほか土偶は知らず母子草 柴田三津雄
薄ら日や風に安らぐ母子草 田川美枝
母子草山々人の世を離れ 飯田龍太
母子草かなしき穂綿あげにけり 山崎保翠
いつまでも子なき妻かや母子草 遠藤緑雨
母子草咲く登呂人の炉址かも 岡田貞峰
母子草やさしき名なり莟もち 山口青邨
老いて尚なつかしき名の母子草 高浜虚子
遺伝子のやさしさうにも母子草 後藤立夫
引きのこしおきたる母子草咲けり 黒田杏子 木の椅子
母子草浦波荒びそめにけり 黒川龍吾
老いて尚なつかしき名の母子草 高濱虚子
千代田城天守閣跡母子草 坂本蓬子
まだ起伏残る在所の母子草 松下康雨
我ら知らぬ母の青春母子草 寺井谷子
引きのこしおきたる母子草咲けり 黒田杏子
火に焦げし土よ春なる母子草 右城暮石 声と声
獄遠く近き日曇る母子草 古沢太穂 古沢太穂句集
梅雨屋上に汝が青年母子草 古沢太穂 古沢太穂句集
母子草幾日も経て声に出す 和知喜八 同齢
母子草うなずく海風蜥蜴の手話 八木三日女 石柱の賦
小ひさきは女人の墓か母子草 稲垣きくの 黄 瀬
母子草墓地買ふ人の来て佇てり 長谷川かな女 花寂び
雨となる雲沖に出て母子草 長谷川双魚 風形
母子草壁間のそれ踏絵かや 下村槐太 天涯
老いて尚なつかしき名の母子草 高濱虚子
あまたたび家出で立ちぬ母子草 池田澄子
法然の国に来てをり母子草 大峯あきら
母子草能に泣きたる帰り道 田川飛旅子
母子草灯下に光る夜を大切に 田川飛旅子
ごぎやうはこべらそれから先の戦かな 藤谷和子
 
これやこの母子草芽もあはあはと 石塚友二 磊[カイ]集
ちちこ草ははこ草野川温みたり 臼田亜郎 定本亜浪句集
はじめにことばありきとちさきははこぐさ 加藤秋邨
ははこぐさなびきなびきて猫の上 加藤秋邨
われに一日母子草にも一日かな 高野素十
仮に挿す小壜になじみ母子草 岡本眸
火に焦げし土よ春なる母子草 右城暮石 声と声
我のせよ御形咲野のはだか馬 祐甫
鶏の目には鶏の世あらん母子草 加藤秋邨
山ははこ草貝殻草と乾燥花 山口青邨
山母子草といへるが群落す 清崎敏郎
寺の鐘鳴れば泡立つ母子草 飯田龍太
小石積むは祈りのしるし山母子草(やまははこ) 佐藤鬼房
石垣は弾痕深し母子草 水原秋櫻子 蓬壺
先乗りの子へ気使う手 母子草 伊丹三樹彦
草の戸の軒端草なる母子草 富安風生
灯台の正面はここ母子草 鷹羽狩行
筒井筒白き粉ふき御形咲く 岡井省二 鹿野
尼将車発願の寺ぞ母子草 水原秋櫻子 餘生
百歩にて返す散歩や母子草 水原秋櫻子 餘生
母子草やさしき名なり莟もち 山口青邨
母子草咲くにあらずや烽火台 加藤秋邨
母子草伸び細りたる茎に花 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
母子草人の見やらぬ春闌けて 水原秋櫻子 緑雲
母子草壁間のそれ踏絵かや 下村槐太 天涯