今の時期にはもう終わってしまった藤の花。クラシックなラベンダー色がきれい。アップにしてみると、マメ科の花であることがよく分かる。日本の原産種らしい。古来からある花で、目立つだけに俳句ではほとんど限りなく歌われている。「生きてゆく時の切れ目よ藤垂りて 橋本多佳子」。
(2020-04 川崎市 道端)

フジ(藤、学名: Wisteria floribunda)は、マメ科フジ属のつる性落葉木本。
一般名称としての藤には、つるが右巻き(上から見て時計回り)と左巻きの二種類がある。右巻きの藤の標準和名は「フジ」または「ノダフジ」、左巻きの藤の標準和名は「ヤマフジ」または「ノフジ」である(牧野富太郎の命名による)。
形態・生態
つるは木に巻きついて登り、樹冠に広がる。直射日光の差す場所を好む、好日性植物である。花序は長くしだれて、20cmから80cmに達する。花はうすい紫色で、藤色の色名はこれに由来する。他のマメ科植物同様、夜間は葉をすぼめる。
分布・生育地
日本産のフジは固有種。海外のフジは、フジ属に属する別の品種である。
日本では本州・四国・九州の温帯から暖帯に、低山地、平地の林に分布する。
日本で有名なものに亀戸天神社(東京都)、牛島藤花園(埼玉県)、長泉寺(埼玉県)、久伊豆神社(埼玉県)、あしかがフラワーパーク(栃木県)などのふじがある。
人間との関わり
強い日当たりを好むため、公園や庭園などの日光をさえぎるものがない場所に木や竹、鉄棒などで藤棚と呼ばれるパーゴラを設置し、木陰を作る場合が多い。天蓋に藤のつるをはわせ、開花時には隙間から花が垂れ下がるように咲く。変異性に富んでおり、園芸品種が多い。一才藤(いっさいふじ)として鉢植えや盆栽用に流通するのは、樹高50cmくらいの一才物のフジ。
旧・大阪府西成郡野田村(現・大阪市福島区玉川・野田・吉野・大開など)はノダフジ(野田藤)と呼ばれる藤の名所で、牧野富太郎による命名のきっかけとなった。玉川に鎮座する春日神社には、野田の藤跡碑がある。
花は天ぷらなどにすることができる。ただし他のマメ科植物同様にレクチンを中心とした配糖体の毒性が含まれており、多量に摂取すると吐き気、嘔吐、眩暈、下痢、胃痛などを起こすおそれもあるためあまり食用には適していない。加熱されていない種子は中毒の可能性がより高くなる。その他に、樹皮や莢にはウイスタリン(wistarin)、種子には有毒性アルカロイドの一種であるシチシン(cytisine)が存在するという報告も上がっている。
また、他のつる性植物同様に民具の素材とされてきた。藤の花や葉を図案化した家紋「藤紋」があり、十大家紋に数えられている程多くの家に使用されている。
藤 の俳句
藤 の例句
「不耕貪食」花蓼すらも藤の形 香西照雄 対話
あはれさは牛仰むかす藤の花 政岡子規 藤
いくたびも出ては水うつ藤の茶屋 富安風生
いまは藤咲く颱風を娶る紀伊 山口誓子
うち向ふ谷に藤咲くゆあみかな 水原秋櫻子 葛飾
うはばみの巻きつきたるがごとき藤 阿波野青畝
おくつきにとゞきし藤や熊野供養 百合山羽公 春園
おちついてくらせば宵の藤が濃き 大野林火 海門 昭和七年
かかりたる藤の翠微のはなやかに 阿波野青畝
かんざしの蝶ちらつくや藤の花 政岡子規 藤
くぐりては傘上ぐる藤の雨 阿波野青畝
くもり来し重さの藤の熊野供養 能村登四郎
ここに立てば藤房島の上に垂る 山口青邨
こころにもゆふべのありぬ藤の花 森澄雄
この径の藤咲くむかし信徒逆殺ヘ 山口青邨
そこここに藤がかかれり妻つれて 山口青邨
てのひらに藤房一つ花こぼす 山口青邨
ながからむ妻の祈りや藤の花 齋藤玄 飛雪
のめり聳つ巌薄明の懸り藤 鷲谷七菜子 銃身
はるかなる約婚の日や藤も褪せ 山口誓子
ひと紋は藤なる武者幟 福田蓼汀 秋風挽歌
ふぐりてふかすかな重り藤ゆふべ 能村登四郎
ふるさとの井戸のくらがり藤散りこむ 桂信子 新緑
ほぐれんとする藤房の下にゐる 廣瀬直人
ほと酔ふも神酒なればよし藤の昼 稲畑汀子
ほのぼのと藤は醜神鎮めたる 阿波野青畝
ほのぼのと虚空界より藤の花 鷲谷七菜子 一盞
まず藤がのぞく隧道穴明り 赤尾兜子 歳華集
まだ風のたけも短し藤の花 政岡子規 藤
まつの藤しきりに露をこほしけり 政岡子規 藤
みどり児のあくび短し藤の花 星野麥丘人
むらさきの藤房死者の忘れもの 秋元不死男
もろうてさしてよく寝ている子に藤のはな 荻原井泉水
やはらかき藤房の尖額に来る 橋本多佳子
ゆふかぜや藤の花房甕にあまり 大野林火 海門 昭和九年
ゆらぐとき藤見あぐれば猿の顔 阿波野青畝
ゆらゆらと帆綱めきたる藤の幹 阿波野青畝
わが頭上無視して藤の房盗む 橋本多佳子
われ山上に眼下の真藤おぼろめく 赤尾兜子 歳華集
ステッキではない杖もつて藤の花かな 荻原井泉水
ローマよし七つの丘に藤咲きて 山口青邨
一つある耶馬の湯宿も藤に暮れ 阿波野青畝
一つらに藤の實なびく嵐哉 政岡子規 藤の實
一つ長き夜の藤房をまのあたり 高浜年尾
一房の藤下げてもつ鯖のごとし 山口青邨
一日中藤の枯蔓日当らず 高野素十
万緑に藤豆の垂れわたりたる 阿波野青畝
三宝寺池の翡翠藤浪に 川端茅舎
三歳のわが寝息かも藤の奥 橋閒石 卯
三輪の藤宜し八十八夜より 阿波野青畝
下乗より藤讃へつつ参向す 阿波野青畝
下向にも神神坐す山の藤 阿波野青畝
乳児寝かすごとく畳に藤の房 鷹羽狩行
今日はまた西へ吹かれつ藤の花 政岡子規 藤
今日も伸び伸びけり藤の花 政岡子規 藤
低き木に藤咲いて居る山路かな 河東碧梧桐
佐保神を見送る藤の咲きにけり 上村占魚
何色に振袖そめん藤の花 政岡子規 藤
佳き藤に祖霊の宿りたまひたる 後藤比奈夫
修復成る神杉若葉藤の花 政岡子規 若葉
修験道ゆるめて山の藤咲けり 百合山羽公 樂土
僧朽ちて玉の緒の藤白く懸かる 橋閒石 卯
公卿若し藤に蹴鞠をそらしける 橋本多佳子
刺繍に倦んで女あくびす藤の花 政岡子規 藤
加太の雛源平藤橘まちまちに 阿波野青畝
勉強によその子も来て藤の午後 大野林火 早桃 太白集
原始林やさし藤房懸けわたし 津田清子
去年より一尺長し藤の花 政岡子規 藤
反橋や池を巡りて藤の棚 政岡子規 藤
反橋や藤紫に鯉赤し 政岡子規 藤
叟(そう)の杖六尺藤の長さ欲し 平畑静塔
古寺に藤の花さく枯木哉 政岡子規 藤
古水に浮いて干からぶ藤の花 富安風生
吊橋を渡る通草を藤で提げ 鷹羽狩行
吹かれてはもつれてとけて藤の花 政岡子規 藤
吹降りに当りたる日やさわぐ藤 阿波野青畝
咀嚼音ふと老めくや藤了る 能村登四郎
咲きそめて藤の花房整はず 高浜年尾
四万川をおほふ藤浪そよぐなり 水原秋櫻子 緑雲
園児等の一人に藤の房とゞく 星野立子
地に低く水にもひくく藤の房 鷹羽狩行
垂れし藤杉に美し詣でけり 阿波野青畝
城に藤播州平野海霧流れ 野見山朱鳥 幻日
城塁や咲かむとしつつ藤白し 山口誓子
墓守は読むこともなく藤の花 山口青邨
壮夫巌藤をかけたるやさしさよ 山口青邨
夕鴉眠らむとす藤暗ければ 阿波野青畝
大山に殯の藤房遠傾(なだ)れ 金子兜太
大山祇の神の藤房田に映る 飴山實 句集外
大山藤幽し荒瀬に風巻きて 鷲谷七菜子 銃身
大河に逆浪たちて藤咲けり 山口誓子
大津画に似た塗笠や藤の花 政岡子規 藤
大茶園尽きしところに藤懸る 百合山羽公 寒雁
大藤の現れ出たる恐しさ 阿波野青畝
大雨の日藤茶屋に寄りて飲む水や 中川一碧樓
天に藤地に藤神慮あるままに 阿波野青畝
天よりの藤房百に捉はるる 鷲谷七菜子 一盞
天懸る藤を古関のかざしかな 鷲谷七菜子 天鼓
天押雲命や藤さがる 阿波野青畝
天神のおとがひ長き藤の房 鷹羽狩行
奥にまで夕日のさして藤の棚 鷹羽狩行
女の心触れあうてゐて藤垂るる 桂信子 月光抄
娵どりの暮やどこかに藤が咲き 山口誓子
子規の藤池のおもてにとどきさう 亭午 星野麥丘人
宙に浮く藤根に腰を掛けむとす 阿波野青畝
寧楽山は藤咲けるなりくもれども 水原秋櫻子 霜林
尼僧きて藤のむらさきくもりけり 秋元不死男
山に碑が建つ藤躑躅色をそへ 山口青邨
山の藤見て来て鉄路跨ぐかな 山口誓子
山の辺のみちのべの藤つつじなど 阿波野青畝
山口の昏るるに間ある藤の花 松村蒼石 寒鶯抄
山宿や藤のこぼるゝ裏廂 高野素十
山水の上に綾なす藤の花 右城暮石 句集外 大正十五年
山猿をのせてゆらめく藤の花 阿波野青畝
山神の藤さらばこそ花少な 飯島晴子
山藤や短き房の花ざかり 政岡子規 藤
山路やかたみに見えし藤の花 阿波野青畝
岨の藤ゆらぐは瀧の懸りけり 水原秋櫻子 殉教
岩藤ののり出し咲ける淵くらし 松本たかし
岩藤の高き雫や淵の雨 松本たかし
岩藤や犬吼え立つる橋の上 村上鬼城
岩藤や降らで過ぎにし山の雷 森澄雄
峯の松に藤なるらんと思ふのみ 阿波野青畝
島の藤漁網うち懸けたるごとし 阿波野青畝
崖削いで天嶮をなす藤の花 上田五千石『森林』補遺
崩れゐる朝の藤いろ牡丹かな 佐藤鬼房
巨き松大き藤かけ淋漓たり 山口青邨
巫女の髪ぐらゐの丈の藤に手を 阿波野青畝
常濡れの巌温みなく深山藤 鷲谷七菜子 銃身
御仏は藤の莟を眉としぬ 山口青邨
御婚儀を祝ふや藤の作り花 政岡子規 藤
御慶事を祝ふや藤の造り花 政岡子規 藤
微笑みてかしらよけたる藤の花 三橋敏雄
念仏に季はなけれとも藤の花 政岡子規 藤
恩寵の如し藤咲き満ちたるは 石塚友二 磊[カイ]集
我すでに昏れたり藤も三尊も 橋閒石 卯
我笠に藤振りかゝる山路哉 政岡子規 藤
手に提げし藤土につくうれしさよ 政岡子規 藤
手力にもげざる藤のゆらぎかな 阿波野青畝
手甲の手が立藤を剪りにけり 清崎敏郎
手繰る藤素直に寄り来藤ちぎる 橋本多佳子
持ちそふる狩衣の袖に藤の花 政岡子規 藤
掛茶屋や頭にさはる藤の花 政岡子規 藤
揺り離すかに藤落花ゆたかなれば 香西照雄 素心
揺るぎなき大藤房となり暮るる 鷲谷七菜子 銃身
放置さる藤の白房地に触るを 山口誓子
散る藤のほろほろわれに恋あるごと 伊丹三樹彦
散る藤や真近嶺にさへ雪残り 及川貞 榧の實
新道路広くなりたる藤の花 右城暮石 散歩圏
旅立の髪梳くゆふべ藤おもし 鷲谷七菜子 黄炎
早乙女や藤の花房髪に垂れ 水原秋櫻子 緑雲
明寺に藤の花咲く枯木哉 政岡子規 藤
明治慶応此の茂る藤の老木なり 荻原井泉水
昔絵の春や弁慶藤娘 政岡子規 春
春信のいたるところに藤さかり 下村槐太 天涯
春園やサロンは藤を垂れそむる 百合山羽公 春園
春日野の藤を華鬘となしたまふ 水原秋櫻子 葛飾
春早しまだ芽もふかぬ藤の棚 政岡子規 春浅し
春著の人藤綱橋を小急ぎに 山口青邨
昼休み藤の盛りを言ふ女工 三橋鷹女
月はなほ光放たず藤の房 山口誓子
木がくれて藤残る家の障子かな 渡邊水巴 白日
木の末をたわめて藤の下りけり 政岡子規 藤
木をあげて藤の紫吹きもまれ 阿波野青畝
木仏師や水のごとくに藤筵 古舘曹人 樹下石上
木馬道しばらくゆけば藤こぼれ 山口青邨
本を読むゼ石藤の花こぼれ 山口青邨
束髪の余り背高し藤の花 政岡子規 藤
来し方の藤美しきこと告げよ 阿波野青畝
来て見ればひとに売る家の藤咲けり 及川貞 榧の實
松の木に藤さがる画や百人首 政岡子規 藤
枯れたる樹春日(かすが)の藤を懸けて立つ 津田清子
枯藤に雲の按配きまりけり 飯島晴子
梢の子躍り満樹の藤揺るる 中村草田男
棚藤の上なる山に懸り藤 松本たかし
森の主藤一連に咲かせたり 平畑静塔
椅子沈む思いの 藤の花の昼 伊丹三樹彦
樹に巻きて藤一つ燈の歓喜天 古舘曹人 砂の音
橋際に藤棚のある茶店哉 政岡子規 藤
檻の天より藤垂れ獅子を懐柔す 津田清子 礼拝
歇むまじき藤の雨なり旅疲れ 杉田久女
此の家の藤に向ひて一人坐す 右城暮石 句集外 大正十年
武蔵野の古へよりの藤の茶屋 富安風生
歩み板とつて返して藤の花 石田勝彦 秋興以後
歩をとどめとどめて藤に能役者 下村槐太 天涯
母の顔わすれ野藤の花を知る 山口青邨
水まではとどかぬ風や藤の花 政岡子規 藤
水神の水音藤をかげらしめ 佐藤鬼房
水谷川の雨滴はげしきかかり藤 阿波野青畝
永き日やそのしだり尾の下り藤 政岡子規 藤
汁粉屋の狭き庇に藤枯るゝ 清崎敏郎
汗くさき女工となりて藤を知らず 三橋鷹女
池に散り藤撒き餌とも蒔絵とも 鷹羽狩行
沈思する場所藤の実の下にあり 百合山羽公 樂土
泉辺は藤蔓掛けて直き木々 中村草田男
浜べの田石州の藤垂れにけ`り 阿波野青畝
浴後未だ明るさのこす軒の藤 能村登四郎
海へ向け藤浪の丘二夕流れ 松崎鉄之介
深山藤蔓うちかへし花盛り 前田普羅 春寒浅間山
深山藤風雨の夜明け遅々として 前田普羅 飛騨紬
深山路や松の闇より藤の花 政岡子規 藤
淵くらし逆落ちざまに深山藤 鷲谷七菜子 銃身
湯抱の小宿三軒藤の花 阿波野青畝
満目の藤浪に酔ひ泳ぎをり 能村登四郎
滝となる前のしづけさ藤映す 鷲谷七菜子 銃身
滝の水引きある藪の土用藤 右城暮石 句集外 昭和六年
滝の面に垂れて藤蔓揺れやまず 清崎敏郎
潟に垂れ家持の藤ここに在り 阿波野青畝
激流に短か藤房花終る 山口誓子
灸屋の蕾の藤を見上げけり 飯島晴子
煙管の先に煙草立てゝは藤白し 飯島晴子
熊ん蜂狂ひ藤房明日は果つ 西東三鬼
熊野さまに線香藤にラムネ瓶 百合山羽公 寒雁
熊野のため里人のため藤長し 百合山羽公 樂土
父ありき遠き日藤を見にゆきし 安住敦
牡丹咲き藤垂れ友等すこやかに 山口青邨
物好に藤咲かせけり庭の松 政岡子規 藤
瓔珞しのび*刑冠想ふ藤の下 中村草田男
瓦焼く家に藤咲く石州路 阿波野青畝
生きてゆく時の切れ目よ藤垂りて 橋本多佳子
田の上に咲き白けけり藤の花 右城暮石 句集外 大正十四年
田は植えてうつくし松に藤のかかり 荻原井泉水
田螺売る野茶屋に藤の花早き 政岡子規 田螺
畑打つて藤一棚も培ひぬ 河東碧梧桐
病める掌にのせて藤房余りたり 橋本多佳子
白き藤房に夜が明け咳やまず 佐藤鬼房
百千の藤を垂らして幹古ぶ 鷹羽狩行
直会にゆふべの藤の揺れにけり 阿波野青畝
眉にかゝる藤の長房むらさきに 村山故郷
砂ずりの藤の短かさにはふれず 後藤比奈夫
砧石の落花の藤をうち払ふ 前田普羅 飛騨紬
磐座として天つ藤国つ藤 阿波野青畝
磨崖佛消えぎえに世に藤の花 森澄雄
神にます山のはづれに藤咲きぬ 阿波野青畝
神の扉にどの藤房のかげならめ 阿波野青畝
神域の 藤と競うて 首振る亀 伊丹三樹彦
禅の天藤房暗く懸りたり 山口誓子
稿疲れ昆蟲界に藤垂れて 秋元不死男
窓あきしまま藤の夜となりにけり 桂信子 女身
窓の樹や藤たかだかと濃むらさき 飯田蛇笏 春蘭
窓の藤煌くや殊に妻居ぬ日 中川一碧樓
窓遠き逗子や炭屋に藤垂れて 飯田龍太
窗の樹や藤たかだかと濃むらさき 飯田蛇笏 心像
立雛の衣手藤の匂ふなり 水原秋櫻子 蓬壺
竹あれば竹に懸りて藤の房 鷹羽狩行
竹垣に咲いてさがれり藤の花 村上鬼城
筍藪の外にかゝりて藤新芽 右城暮石 句集外 昭和七年
篠原の風にもつるる藤懸り 阿波野青畝
粕壁の藤を見に来し野の曇り 村山故郷
素盞嗚に大藤匂ふ夕べかな 森澄雄
紫の藤の細工や蜆殻 政岡子規 蜆
結界に六尺藤を現じてし 平畑静塔
絵を習ふ絵師か娘や藤の花 政岡子規 藤
翁道すぎきぬ藤に二度の花 松崎鉄之介
老い古りて不死身の真藤芽を吹けり 阿波野青畝
腰掛に眠れる人や藤の花 渡邊白泉
自堕落の羅漢もおはす藤ぐもり 上田五千石『森林』補遺
船白し藤蔓に潮流るる九月 飯田龍太
花乏し藤の紫柔毛たつ 石橋秀野
花咲かぬ藤の若葉の書斎かな 山口青邨
花屑のむらさきなれば藤といふ 山口青邨
花散りし藤の若葉の毛虫哉 政岡子規 若葉
花藤と女の裳裾と揃ひ揺れ 波多野爽波 鋪道の花
花藤の力抜かざる房の先 能村登四郎
花藤や母が家厠紙白し 中村草田男
苗代の畦さへ藤を垂れにけり 富安風生
若き等は藤の辺をゆき藤は見ず 富安風生
若杉の梢を走る藤ありぬ 山口青邨
茶柱やあるじの鉢に藤つつじ 石川桂郎 含羞
草深く木深き寺の藤を見し 松本たかし
荒き雨横渡りして山の藤 細見綾子
菫見て過ぐ藤房を見に来しなり 山口誓子
落ちかゝる岩を抱えて藤の花 政岡子規 藤
落ちかゝる石を抱えて藤の花 政岡子規 藤
葉かげなるただ一房の藤を愛づ 山口青邨
葡萄狩る源平藤橘借り鋏 百合山羽公 樂土
蔓たれて水田のへりに下り藤 阿波野青畝
薄暮より血を引く藤の色もなし 古舘曹人 能登の蛙
藁屋根に藤房が臥て犬も留守 香西照雄 素心
藤あまた咲かせ山には齢なし 鷹羽狩行
藤かかり寺格も賤しからずとか 高野素十
藤かかり尖帽(カプチーヌ)僧本を読む 山口青邨
藤かかり立たせ給へる観世音 山口青邨
藤かかるレストーランは嬉しけれ 山口青邨
藤か橘か山田案山子の目鼻立 上田五千石『風景』補遺
藤が咲き平々として川行けり 山口誓子
藤こぼれ石平らかに卓となす 山口青邨
藤こぼれ遺族の人等やすらへり 山口青邨
藤さかり今がさかりと思へりし(奈良二句) 細見綾子
藤さがるあちらこちらの梢かな 政岡子規 藤
藤さげて大洞山のあらし哉 前田普羅 飛騨紬
藤さげて水に見とるゝ柳かな 渡邊白泉
藤づるのからまる下の流急 阿波野青畝
藤のかげ友いとし妻さびにける 桂信子 月光抄
藤の下古郷夫人を大と見き 星野麥丘人
藤の下犬無雑作に通りけり 桂信子 月光抄
藤の下赤犬藤をしらずゆく 桂信子 月光抄
藤の前舞ひ納めたる初扇 森澄雄
藤の天重き飛行機ゆつくり飛ぶ 山口誓子
藤の房しばらく赤き西日さす 山口誓子
藤の房まさぐりてゐて面向けず 上田五千石 田園
藤の房寄りあひ雨のだだ漏れに 橋本多佳子
藤の房成さずよ雑木低ければ 阿波野青畝
藤の房松の花粉の風に寄る 石橋秀野
藤の房長しゆふべの壺は濡れ 橋閒石 朱明
藤の房風に遊びのはじまりぬ 鷲谷七菜子 一盞
藤の昼けだるさ故の無口かな 中村苑子
藤の昼膝やはらかくひとに逢ふ 桂信子 女身
藤の根の這ひて石段とぎれがち 阿波野青畝
藤の花こぼして門は開くなり 山口青邨
藤の花こぼれ石の卓石の榻 山口青邨
藤の花ちぎつて若き日の匂ひ 百合山羽公 樂土以後
藤の花ほつりと夫を待つ日暮 桂信子 月光抄
藤の花またチエホフにかへりくる 亭午 星野麥丘人
藤の花よく晴れたれば昼寝たり 森澄雄
藤の花了る匂ひに顔合はす 飯島晴子
藤の花咲き垂れて病日々に快し 村山故郷
藤の花挿して翁九十四端坐しておる 荻原井泉水
藤の花昼より雲の風を呼ぶ 上村占魚 鮎
藤の花産後の顔の睡りをり 森澄雄
藤の花盛りにダムの定水位 鷹羽狩行
藤の花真下に落ちて岸に寄る 山口誓子
藤の花西日を背に掃く小庭 上村占魚 鮎
藤の花見てねむくなる田舎寺 百合山羽公 寒雁
藤の花這うていみじき樹齢かな 阿波野青畝
藤の花長うして雨ふらんとす 政岡子規 藤
藤の芽のもたげかけゐるほの白さ 右城暮石 句集外 昭和十三年
藤の芽の高きより雨こぼし降る 右城暮石 句集外 昭和十一年
藤の芽は花さきさうになかりけり 政岡子規 藤
藤の芽や竜翔ぶ姿そのままに 阿波野青畝
藤の芽を撓めて落ちぬ雨蛙 前田普羅 普羅句集
藤の葉に雨上がるらし鷹の声 右城暮石 句集外 昭和十七年
藤の葉の満天にあり散りはじむ 古舘曹人 能登の蛙
藤の蔓千切る力が足らざりし 阿波野青畝
藤の蔓引けば動きて雉出さう 右城暮石 声と声
藤の蔓羅漢を指してゆれてをり 下村槐太 天涯
藤の虻ときどき空を流れけり 藤田湘子
藤の長房年年に短くなるとよ老僧よ 荻原井泉水
藤の雨子叱る暗き母の顔 波多野爽波 鋪道の花
藤の風まなこ明るきものぐるい 橋閒石 荒栲
藤の香のここは届かず伎芸天 稲畑汀子
藤の高さ山の深さを告ぐるごとし 大野林火 方円集 昭和五十三年
藤はさかり或る遠さより近よらず(奈良二句) 細見綾子
藤も垂れぎは少女ら髪を編み垂らし 三橋鷹女
藤わたり仁王の胸の朱剥げたり 山口青邨
藤を去る人に別るる如くなり 山口青邨
藤を描くならはし加茂の扇には 後藤比奈夫
藤を描く背後の山は描ききれず 津田清子
藤を眺めてよく話す薬売り 廣瀬直人
藤を瞳にゑがきて模範女工なり 三橋鷹女
藤を見て来しが電燈黄に点る 山口誓子
藤を見に行きしきのふの疲れ哉 政岡子規 藤
藤六が平六具して御慶かな 内藤鳴雪
藤冷のあとの牡丹の冷なりけり 安住敦
藤千房青年ら顎立て膝伸し 赤尾兜子 歳華集
藤咲いて 妻の婚歴句歴似る 伊丹三樹彦
藤咲いてバタヤ等ここに行き合へり 三橋鷹女
藤咲いて人にさみしきうなじがある 三橋鷹女
藤咲いて低きは池に垂れて咲く 村山故郷
藤咲いて天のしづけさ垂れにけり 鷲谷七菜子 游影
藤咲いて山の手曇る都かな 渡邊白泉
藤咲いて新しき彩一つふゆ 野澤節子 存身
藤咲いて映る湯壷やかきこはす 渡邊白泉
藤咲いて昼夜わかたぬ川流る 山口誓子
藤咲いて海光ひとの額に消ゆ 三橋鷹女
藤咲いて眼やみ籠るや薬師堂 政岡子規 藤
藤咲いて碓氷の水の冷たさよ 臼田亜郎 定本亜浪句集
藤咲いて背合せに佛立ちたまふ 水原秋櫻子 霜林
藤咲いて起居にまとふ翳淡し 鷲谷七菜子 黄炎
藤咲いて近づく音のいくたびも 廣瀬直人
藤咲きて離宮に擬ふ竹の縁 山口誓子
藤咲きぬ松に一夜を寝て見やう 政岡子規 藤
藤咲きぬ林あかるく風あふれ 水原秋櫻子 重陽
藤咲くやむかし小使室暗し 岡本眸
藤咲くや瀬がしらはしるあめの魚 水原秋櫻子 緑雲
藤咲くや野井にいびつな旅の顔 角川源義
藤咲く家母をも末弟汝が護りし 中村草田男
藤咲けばその蒼空が目に残る 右城暮石 句集外 昭和十五年
藤咲けば淡き羽織の裏模様 飯田龍太
藤咲けり杖に縋りてもよろめくか 小林康治 四季貧窮
藤咲ける襞も夜明くる浅間山 前田普羅 春寒浅間山
藤垂らす荒瀬と荒瀬との間 山口誓子
藤垂るる日の土臭さ子と分かち 廣瀬直人
藤垂るる法事の僧を呼びにゆく 廣瀬直人
藤垂れてここ浦古し舟作る 阿波野青畝
藤垂れてこの世のものの老婆佇つ 三橋鷹女
藤垂れてむらさきに淵よみがへる 原裕 青垣
藤垂れてわが誕生日むらさきに 山口青邨
藤垂れて一園殊に春ふかし 水原秋櫻子 殉教
藤垂れて傘下一切水の音 古舘曹人 能登の蛙
藤垂れて川遠くより来りけり 山口誓子
藤垂れて春蚕はねむりさめにけり 加藤秋邨
藤垂れて松風ばかり宙にあり 廣瀬直人
藤垂れて水神の空むらさきに 原裕 青垣
藤垂れて深山にねむるごとき顔 飯田龍太
藤垂れて病室まぎれなくにほふ 飯田龍太
藤垂れて紙漉くひとりふたり見ゆ 相生垣瓜人 微茫集
藤垂れて遠く奥峰にかかる滝 村山故郷
藤娘は嫂の遺愛や春深し 山口青邨
藤懸かる山墓に佳き火を蔵へ 佐藤鬼房
藤懸けて小濱渚の息づかひ 佐藤鬼房
藤懸けて道をいざなふ出湯村 野澤節子 八朶集以後
藤懸る電気起して無臭の川 山口誓子
藤房が垂れて潮引川の上 鷹羽狩行
藤房にあしながむすめとびつきぬ 平畑静塔
藤房にかへらぬ花の散りこぼれ 平畑静塔
藤房に山羊は白しと旅すぎゆく 金子兜太
藤房のこのしなやかさわれに欲し 鷹羽狩行
藤房のもつるることのなき乱れ 鷹羽狩行
藤房のゆつくりと揺れ急に揺れ 清崎敏郎
藤房の先の重りや雨しづく 能村登四郎
藤房の先まで雨の音つたふ 能村登四郎
藤房の垂るるに倦みて揺れにけり 鷹羽狩行
藤房の堪ゆるかぎりの雨ふくむ 橋本多佳子
藤房の夜見の国あり陽の山あり 金子兜太
藤房の寸余をあます蝌蚪の上 上田五千石『森林』補遺
藤房の幼きは反り衣川 佐藤鬼房
藤房の幼くて風素通りす 鷲谷七菜子 一盞
藤房の揺れる長さの違ふ風 稲畑汀子
藤房の柱にそひて衰へし 高野素十
藤房の柱にそひて長かりし 高野素十
藤房の百の裾よりのぼる闇 鷲谷七菜子 游影
藤房の盛り上がらむとしては垂れ 鷹羽狩行
藤房の色より来たる夕べかな 桂信子 草影
藤房の花にはあらぬものこぼす 山口青邨
藤房の身も世もあらぬごとく揺れ 鷹羽狩行
藤房の身重かくさず水の上 上田五千石『田園』補遺
藤房の途中がピクと動きたり 永田耕衣
藤房の隙間だらけに入日時 橋本多佳子
藤房の風生むために揺れはじめ 鷹羽狩行
藤房は力尽きたる祭かな 石田勝彦 秋興
藤房を剪り思はざる水しぶき 能村登四郎
藤房を妻の手に載す平かに 石川桂郎 含羞
藤房を寸断にせし子と帰る 山口誓子
藤房を浸すごとくに 暮色きて 鷹羽狩行
藤挿頭す宇佐の女禰宜は今在さず 杉田久女
藤揺るる昃りに習ふ高野切 鷲谷七菜子 黄炎
藤揺れて山の暗きは姥ごのみ 佐藤鬼房
藤揺れて朝な夕なの切通し 中村汀女
藤散つて波郷の肩にやゝ溜る 小林康治 玄霜
藤散るや三鬼がわたす米袋 石田波郷
藤散るや亀重なりて甲羅干し 鷹羽狩行
藤散るや黄昏を来てよく釣るる 村山故郷
藤昏るる刻の浪費をし尽して 橋本多佳子
藤暁くる吹かるるとなきさゆらぎに 鷲谷七菜子 銃身
藤暮るる谿や蒼茫と四十年 水原秋櫻子 蓬壺
藤枯れて晝の日弱る石の牛 政岡子規 枯藤
藤棚にかかりし藤の先見ゆる 桂信子「草影」以後
藤棚に提灯つりし茶店哉 政岡子規 藤
藤棚に赤提灯をつるしけり 政岡子規 藤
藤棚のある料理屋や町はづれ 政岡子規 藤
藤棚や池をめぐりて屈曲す 政岡子規 藤
藤活けて酒をさしたるきほひかな 政岡子規 藤
藤浪に雨かぜの夜の匂ひけり 前田普羅 飛騨紬
藤浪のゆらぎがかくす有為の山 能村登四郎
藤浪の松より竹へ清閑寺 川端茅舎
藤浪の溺れむばかり熊野の墓 能村登四郎
藤浪や峰吹きおろす松の風 村上鬼城
藤浪を揺らし過ぎゆく光陰か 安住敦
藤淡し観世音寺の木にかかり 山口青邨
藤満開紫の房鬱々と 山口誓子
藤男の死塵舞ふ花に風邪の息(二月十五日) 飯田龍太
藤白くまたも日をとり違えたり 橋閒石俳句選集 『和栲』以後(Ⅱ)
藤白し古書に埋れて老いる身か 橋閒石 雪
藤白の嶮を越えずに寒詣 山口誓子
藤盗む樹上少女の細脛よ 橋本多佳子
藤碧しさめざめと暮れきたるなり 飯田龍太
藤紫白澗水澄んで浅からず 日野草城
藤翳る木椅子かたへに夕爾在り 安住敦
藤芽吹く棚の四脚を水中に 岡本眸
藤若葉死人の帰る部屋を掃く 飯島晴子
藤蔓をもて遊船を繋ぎたる 清崎敏郎
藤褪せし灯ともし頃の夕嵐 飯田蛇笏 家郷の霧
藤豆の咲きのぼりゆく煙出し 高野素十
藤豆太り日々の泉辺去るべくも 香西照雄 対話
藤這へば房は地に触れざるを得ず 阿波野青畝
藤長し父存命の昔より 古舘曹人 能登の蛙
藤長し音無川は鏡なす 阿波野青畝
藤靉慧お神楽きこえそめにけり 阿波野青畝
蝶蝶のはいる透なし藤の花 政岡子規 藤
行くほかはなし白日に藤懸かり 橋閒石 和栲
行く春や日記を結ぶ藤の歌 政岡子規 行く春
行く春や苣に届きし藤の花 政岡子規 藤
行人にたちまち雨の藤となる 山口青邨
裁かるるごとく藤房岩の上 鷹羽狩行
見かへれば藤は藤色木にかかる 山口青邨
見事なる藤を背負ひて杣下山 高野素十
観音を秘佛としたり藤の花 森澄雄
誰やらの紋に結ばん藤の花 政岡子規 藤
谷の藤吹かれ浮びし風の過ぐ 清崎敏郎
谷橋に来て飯に呼ぶ藤の花 村上鬼城
谷藤の夜の闇ほらひつつ朝に 山口青邨
谷霞藤の紫消えさりぬ 阿波野青畝
赤肌の崖にちかづき藤を見る 百合山羽公 故園
越前から美濃へ溢れて藤や卯の花 金子兜太
遅藤のまれに紫さがりけり 阿波野青畝
遅藤のものに隠れて垂れにけり 阿波野青畝
遠き木にまぎれたれども藤咲けり 山口誓子
野の窪の木立匂ふは藤咲ける 水原秋櫻子 霜林
野の藤はひくきより垂り吾に垂る 橋本多佳子
野も山も静まり返り藤の花 右城暮石 句集外 昭和六十一年
針もてばねむたきまぶた藤の雨 杉田久女
鏘々と藤房鳴りて蜂迷ふ 津田清子 礼拝
長藤に蹌踉の酔ひ見えはじむ 能村登四郎
長藤に酔ふ人は人蜂は蜂 百合山羽公 樂土
長藤に長藤腐しありにけり 百合山羽公 樂土以後
門の藤むらさきにして夕かな 相馬遷子 山国
門入りておのづから触る藤の花 山口青邨
間をおいてあつまる老女土用藤 飯島晴子
雀海に入り藤太龍宮より歸る 政岡子規 雀蛤となる
雨がちに藤咲き而して散りぬ 村山故郷
雨のごとく長き藤房さびしとも 山口青邨
雨の藤大和と河内またがりて 阿波野青畝
雨ばかり降る活辧の絲柳 佐藤鬼房
雲間より垂れたる藤の濃紫 福田蓼汀 山火
青天に藤かけて巌や峰はどこ 原石鼎 花影
青岸渡寺堂塔映えて藤咲けり 水原秋櫻子 帰心
頬に触れなまぬるかりし藤の花 草間時彦 櫻山
風にゆられ水にゆられて藤の花 政岡子規 藤
風にゆれ藤をまとひて山つばき 飯田蛇笏 心像
風をやりすごせし百の藤の房 鷹羽狩行
風吹て逃るやうなり藤の花 政岡子規 藤
飢ふかき一日藤は垂れにけり 加藤秋邨
高うして藤浪池に映り得ず 松本たかし
高き木にからみあまりて藤咲けり 細見綾子 和語
高やしろ田子の藤浪房青し 山田みづえ 手甲
高空より藤こぼれくる雲明り 鷲谷七菜子 花寂び
鯉集ふ藤の落花を食べんとて 山口誓子
鶯の藤咲く山に老いにける 政岡子規 老鶯
鷹の巣の断崖藤の花かけて 山口青邨
鷹鳩と化す藤房は容れられず 政岡子規 鷹化為鳩
鷹鳩と化す藤房は隠れけり 政岡子規 鷹化為鳩
鹿の背に藤の洩れ日のみだれつつ 伊丹三樹彦
鼻ひりて老いの無惨に藤咲けり 佐藤鬼房