関西電力が福井県内の原子力発電所から出る使用済み核燃料の搬出について大まかな工程表を示したことで、同県の杉本達治知事は「全体として、必要な量を搬出する計画が示された」と了解する姿勢を表明した。ただ、杉本氏は「一つ一つをみると必ずしも十分ではない」とも述べた。描かれた道筋は実現性が不透明なままで、課題は山積している。 関電の原発で現在、貯蔵プールにためられている使用済み燃料は計約3710トン。このうち高浜原発は約4年で満杯になる計算で、搬出先の確保が急務となっている。 工程表でまず関電が掲げたのは、青森県六ケ所村の再処理工場への搬出。将来的に同工場で受け入れる毎年800トンの使用済み燃料のうち、関電がどれだけの割合を占めるかは電力会社同士で今後協議する。 同工場を運営する日本原燃は「令和6年度上期のできるだけ早い時期」に完成するとしているが、当初平成9年だった予定は規制基準への対応などを理由に26回延期。関電は人員を増派して審査の迅速化を支援する。 また、フランスへの搬出は令和9年度から11年度にかけて計200トンを予定。これも仏オラノ社が北部ラ・アーグで稼働する再処理工場の状況次第で、受け入れが困難になる事態も想定される。 フランス搬出は電気事業連合会が実施する実証実験の一環。民間の取り組みで国の予算はつかないが、資源エネルギー庁の担当者は「フランス側との調整など政府の役割を果たし、計画を支援していく」と話す。 関電は中間貯蔵施設について「2030年ごろに2千トン規模で操業開始」を計画する。中国電力と山口県上関(かみのせき)町で共同建設を計画するが、中国電が8月に文献調査に入ったばかり。 中間貯蔵を含む核燃料サイクルについて、福井県議会が今月10日に可決した意見書は「国が前面に立って主体的に取り組むよう強く求める」とした。原発の安定稼働に向けて、官民挙げた取り組みが不可欠だ。
(牛島要平) 産経新聞
関電の原発で現在、貯蔵プールにためられている使用済み燃料は計約3710トン。このうち高浜原発は約4年で満杯になる計算で、搬出先の確保が急務となっている。