自民党の「強固な政権基盤」崩壊、衆院選の「戦略ミス」…安倍元首相に詫びてほしい 連立拡大なければ石破政権退陣も
八木秀次氏緊急寄稿
まずは、天上の安倍晋三元首相に心の底から詫びてほしい。
安倍氏が第2次政権以来、選挙に勝ち続けて築いてきた「強固な政権基盤」をいとも簡単に崩壊させたこと。選挙で数々の「戦略ミス」を犯してしまったこと。
本来は大した問題でもなかった「政治とカネ」の処理を誤って大きく育ててしまったこと。そして、自分たちの拙劣さを棚に上げて政権支持率が低い原因を、安倍氏や安倍派に求めて恨んでいたこと。
その結果、安倍氏が「この人物だけは首相にしてはならない」と公言していた石破茂氏を首相にして衆院選を戦ってしまったこと。
安倍氏の影響力を消すかのように、安倍派を排除すべく「非公認」や「比例重複を認めない」など「二重処罰」したこと。それが「政治とカネ」の問題を再燃させ、安倍派のみならず自民党の本体や公明党まで火の粉を被るようにしてしまったこと。
これらについてだ。
27日投開票の衆院選で、自民党と公明党の与党は目標議席とした過半数(233議席)を大きく下回った。野党の一部を連立政権に入れなければ、予算案も法案も通らない異常事態だ。
これではどんな政策も前に進めることはできない。連立拡大で過半数を確保できなければ、石破政権は退陣せざるを得まい。何より与党過半数割れでは、いつでも内閣不信任案を可決できるからだ。
今回の選挙は、岸田文雄前政権の成績評価の側面もあった。「政治とカネ」の問題の処理を誤って大きな問題に育てたのは、他ならぬ岸田氏だ。首相在任中、何度も解散風を吹かせたものの低支持率のまま退陣せざるを得なかった。
その岸田氏が「国民的人気がある」と勘違いして自民党総裁選で後継に選んだのが石破氏だが、総裁選で大言壮語したものの首相になるや「変節」やトーンダウンし、大した政策もなかったことを露呈した。
国民人気も幻で、内閣支持率は28%(時事通信、17日公開)という、発足時では2000年以降の歴代内閣の最低を記録した。「岩盤保守層」も忌避し、選挙応援に入る度に票が減ると言われた。大惨敗は石破氏の存在によるものだ。
終盤に発覚した、非公認候補者に公認と同じ2000万円を振り込んだ件も、当選後に追加公認を受けるようにとの狙いだろうが、場当たり的だった。森山裕幹事長、小泉進次郎選対委員長の責任も大きい。総裁選で石破氏を支持した菅義偉副総裁も、かつての鋭さはどこに消えたのか。
まもなく米国の大統領も決まる。ドナルド・トランプ前大統領の再登板となったとき、この少数与党の態勢で対応できるのか。中国の習近平国家主席や、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に向き合えるのか。
失ったものは、あまりにも大きい。
八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。山本七平賞選考委員など。安倍・菅内閣で首相諮問機関・教育再生実行会議の有識者委員を務めた。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員も歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。
zakzak
東北電力は女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機が29日に再稼働したことで、液化天然ガス(LNG)や石炭など火力発電の燃料費を2025年度に年間約600億円削減できる見通しとなった。原発再稼働は燃料費負担を減少させ収益に好影響を与えるだけでなく、電力の安定供給や脱炭素化への貢献といった経営改善の追い風にもなりそうだ。
再稼働に向けては、防潮堤の工事や防火帯の設置など多様な安全対策を実施したほか、テロ行為を想定した「特定重大事故等対処施設」を設置中だ。合計7100億円にのぼる費用は、再稼働後に月間30億円程度の減価償却費として一定期間計上する。
一方、再稼働による火力の燃料削減の効果を月70億円と見込んでおり、順調に稼働すれば、投資費用を回収した上で、収益改善を積み重ねることができる見通しだ。
また、再稼働による温室効果ガスの排出削減は年間300万トンにのぼる。これは一般家庭約110万世帯分に相当し、宮城県内の世帯数(約105万世帯)を上回る規模になるという。
電力各社は原発の再稼働が遅れており、電源の過半を火力発電が占める中、燃料市況の乱高下を受け業績が安定しない状況が続く。
こうした中、運転可能な原発7基をすべて再稼働させた関西電力は利益水準が電力大手で最も高く、電気料金も安く設定しており、「再稼働の影響はかなり大きい」と大和証券エクイティ調査部の西川周作シニアアナリストは指摘する。
もっとも、東北電力は再稼働を見越し、23年6月に標準家庭(契約電流30アンペア、使用電力量260キロワット時)の電気料金について、月150円程度の負担軽減を実施済みで、再稼働に伴うさらなる値下げは予定していない。25年3月期の業績予想も収益改善分は織り込み済みだが、予定通り再稼働できたことで「今年度の収益計画を達成できる確度が増した。燃料市況などが想定より低水準となれば業績が上振れする余地はある」と西川氏はみている。(万福博之)産経新聞