無事を祈り続けてきた家族のもとに1日、つらい知らせがもたらされた。石川県能登地方の豪雨で行方不明の輪島市の中学3年、喜三翼音(きそ・はのん)さん(14)の可能性がある遺体が、福井港沖で見つかった。希望を捨てず姿を捜し続けた家族は涙にくれた。
翼音さんは中学1年のころから、輪島塗職人の祖父、誠志さん(63)が「輪島朝市」に構えていた店舗で接客の手伝いを始めた。元日の能登半島地震で店が焼失した後も、各地で開かれる出張朝市につき添い、包装も会計も1人でできるまでに成長した。
誠志さんとは、輪島塗の制作を教わると約束していた。「高校生になったら少しやってみようかな」。進学しても誠志さんの仕事を手伝うと話していた。
捜索中、小学校の卒業制作で輪島塗の「沈金」という技法を用いてバラの花を描いたパネルが見つかった。「最初からあれだけできることはそうそうない。才能あるんじゃないか」。誠志さんもうなる出来栄えだったという。
産経新聞