少数派シリーズ/東京オリンピックの危うさVOL.18
ROUND2 迷走する会場選定・巨額の建設費編 9 <3会場見直し>
ボート会場・海の森水上競技場に渦巻くのは強風と波とドス黒い莫大な利権
ブログを移転したため、投稿日と記事の日時・状況と整合性がありません。記事は2016年10月、旧ブログに投稿したものです。アスリートファーストの尊重は微塵もなく、政治家・経済界・五輪関係者などは己の思惑・利益・保身のために、東京オリンピックの悪用が目に余ります。年月が経過しても、ブログにてその検証や事実を残しておく必要があると考えます。
■海の森は風力発電の風車をストップさせるほど風が強い場所
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新たなる3会場見直しについて、5回に渡り独自の見解をお伝え致します。既号でボート・カヌー(スプリント)競技の会場は埼玉県戸田市の「彩湖」を、水泳・水球・シンクロ競技は都・江東区の「東京辰巳国際水泳場」(既設・増築)が相応しいと書きました。今回、バレーボールも、新横浜の「横浜アリーナ」(既設)に変更検討されていることに賛同します。今回の投稿は、その後に知り得た内容を補足(重複もあり)する形で説明致します。今回の見直しについては評価しますが、それにしても遅過ぎます。本来なら2013年の招致前にしっかり検討しておけば、何でもなかった話です。あるいはせめて2014年の舛添知事就任時に、済ませておくべきだったのです。
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では最初に、「海の森水上競技場」の問題点を炙り出します。既号のように強風・波が高いことは、ボート・カヌー両競技において致命的な欠陥です。TV・新聞等で会場図を何度もご覧になっていると思いますが、図の中に風力発電の風車が描かれるほどこの場所は風が強いのです。風が強過ぎて、風車が壊れないようにプロペラ回転を止めることさえ多々あるそうです。また気象予報士の多くは、東京湾は穏やかなイメージがあっても、風を遮る地形がないため、1年中、強い風が吹くのです。特に夏場はコースの真横から吹く強風(南風)や、突如、乱気流・突風が吹きます。ボート・カヌー競技の艇は細くて長い構造なので、風や波が高いと極めてコントロールが難しいのです。現役選手は、こんな場所でレースをすることは“クレージー”と言います。都は、オリンピック後に都民に開放するとしています。しかし選手は、自分達でも漕艇が難しいのにアマチュアでは危険この上ないと言います。
■パラリンピック選手は下半身が利かないため風や波によって転覆の恐れ
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ボート・カヌーのレースは、基本的に淡水で行われます。そのためボート選手によると、海の森水上競技場は海水による浮力が付いて操艇が難しいそうです。また大型旅客機が数分おきに低空を飛ぶ騒音も問題で、これらの異常な環境条件に競技の不平等が大きいのです。さらには私として大問題と考えるのは、パラリンピック関係者の指摘です。下肢障害者は下半身が利かないため、上半身だけで漕ぐ必要があります。そのため風や波の影響を受けると、とっさのコントロールができないため転覆の恐れが大と言います。パラリンピックの精神から、あってはないない会場なのです。
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これほど海の森水上競技場の条件が悪いにも関わらず、IOCやボート・カヌーの国際競技連盟が海の森競技場を支持する態度に憤りを感じます。森組識委会長が、政治力を使って強引にネジ込んだのでしょう。強引に、会場を作らせようとしているのが見て取れます。アスリートファーストと言いながら、連盟自らが全く選手の声・希望を取り入れず切り捨てていることに憤りを感じます。連盟の上層部や役員は、酷いレース条件が予想されるにも関わらず、自分の面子と大会組織委員会の顔色を見てばかりです。役員の多くは元選手であったにも関わらず、“偉く”なると過去の名声維持や保身ばかりです。両競技連盟は、俺たちが東京のごく近い場所に「競技場を作ってやったんだ!」という思い上がりが先行しています。将来ある若者のためのオリンピックなのに、見苦しい限りです。
■海の森を絶対手放さないのは莫大な利権が渦巻いているから
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海の森水上競技場は、当初69億円(建築物のみの費用)、招致が成功するや否や1,038億円、そして批判を食らうと491億円に。さらにはバッハIOC会長の来日や宮城県・長沼ボート場が検討されると、あっさり300億円前後まで圧縮されました。まるで、“バナナの叩き売り”のようです(何本買えるのかな・笑)。圧縮には、不埒な理由が2つあります。1つは元々の試算が甘いというか、所詮、大本は税金なのでドサクサ紛れの使い放題の体質です。2つめは、1,038億円から491億円になった時と同じように、都税への付け替えです。圧縮にもっともらしい説明を付けていますが、今回再びオリンピック予算から外して、都の建築・港湾・環境予算などに付け替えするかも知れません。
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小池都知事が何と言おうと気にも止めず、都の役人は海の森水上競技場周辺の東京湾岸・臨海部の再開発に税金を注ぎ込むことに躍起なのです。数十年前から、あの辺一帯に大規模な総合的・複合的な施設やエリアにすべく進行中です。そんな折りにオリンピックが招致できたので、これ幸いに「オリンピックを食い物(便乗開発)」にしようとしたのです。恐らくドス黒い莫大な利権が、渦巻いているのでしょう。だから森組識委会長は、バッハ会長や国際競技連盟の幹部を口説き、何としても海の森水上競技場で開くことを画策したのです。そのためバッハ会長はIOC会長という立場を忘れ、異例とも言える細々した内容まで突っ込んできました。海の森ならぬ“陸の森”(組識委会長)が、仕掛けたに違いありません。現時点では300億円前後の予算でも、大会が近付くにつれて不透明で分からない形にして、再び大幅な予算になっていくと思われます。
▽最終決定会場 追記 再見直し検討も変更せず
ボート競技 海の森水上競技場 (新設)
カヌー(スプリント)競技 海の森水上競技場 (新設)
水泳競技 アクアティクスセンター (新設)