認知症と介護シリーズ11
認知症九大法則◇記憶障害1ー1「物忘れは正さないで上手にかわすこと」
家族は認知症の本人とまともにぶつかり合わず優しく場面を変えること
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「最初に知っておきたい認知症」(著者・杉山孝博)を参考にしました。
■「食事をさせないで俺を殺すのか!」と怒鳴られたら家族はどうしたらいいの?
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認知症の人には共通した特徴が見られ、それが「九大法則」と申し上げました。ここからは具体的な説明に入り、「第一の法則/記憶障害に関する法則」を2回に渡り説明します。記憶障害は認知症の最も基本的な症状で、(a)記銘力低下 (b)全体記憶の障害 (c)記憶の逆行性喪失の3つの特徴があります。様々な困った行動にも、記憶力や判断力が低下した認知症の人の立場からみれば、十分に納得できる理由があります。それを理解して対処すれば、介護する家族が抱える問題の深刻さを軽くすることが可能です。
▽記銘力低下 (酷い物忘れ)
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体験したことを、すぐに思い出す力を「記銘力」と言います。認知症が始まると、まず記銘力が低下します。言い換えれば、物忘れが起こります。認知症の人は、同じ話を何回・何十回と繰り返すのはこのためです。「もう何回も聞いた」と反論したり、怒ってはいけません。認知症の本人は、その度に忘れてしまい、初めてのつもりで相手に対して働き掛けているからです。家族は、そうした気持ちを理解して接しましょう。
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認知症の本人に丁寧に教えた後、「分かった」と返事をしても安心できません。また同じことを、繰り返します。返事した瞬間に、教えられたことを忘れてしまっているのです。家族が本人のためと繰り返し教えても、効果がないばかりか本人から「この人はくどい人だ、うるさい人」だと受け取られてしまいます。家族の思いや行為は逆効果で、この場合はむしろ“しないほう”がよいのです。
▽全体記憶の障害 (出来事自体をごっそり忘れてしまうこと)
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これは、出来事の全体をごっそり忘れてしまうことを言います。訪ねて来た人が帰った直後に、認知症の人は「そんな人は来ていない」と言ったり、デイサービスから帰った後に 「どこにも出掛けていない、1日中、家にいた」と答えることがあります。明らかな事実を本人が認めないことに、家族が教えても効果がなく、本人の混乱が酷くなるだけです。家族は、むきになって本人と対峙しないほうがよいのです。
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よく例に出てくるように、食事したことを忘れてしまいます。食べた献立を忘れたのではなく、食事したこと自体を忘れることです。認知症の人は、ある時期、異常な食欲を示すことがあります。1食分丸々食べても空腹感が残り、しかも食べたこと自体を忘れてしまいます。「早くご飯を用意しろ!」 「食事をさせないで、俺を殺すつもりか!」と怒鳴られることがあります。
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家族はついつい、「今、食べたばかりでしょ」 「これ以上食べると、お腹をこわすからダメ」と言ってはいけません。ここも本人と対峙することなく、おにぎり程度の量に留めます。あるいは「今、準備しているから少し待ってね」と上手にかわし、時間を稼いで食欲を“忘れさせる”手も有効です。このように家族は、認知症の本人とまともにぶつかり合うのではなく、『優しく場面を変える』ことを心掛けることが大事です。
■ご連絡「最初に知っておきたい認知症」(著者:杉山孝博)を参考にしました。
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いつも、「認知症と介護シリーズ」をご覧頂きありがとうございます。世の中では
介護疲れで長年連れ添った配偶者や親を殺す事件を耳にします。しかし投稿中の杉山
孝博氏の「最初に知っておきたい認知症」の著書を読んで、大変ではあるものの苦悩
に追い込まれず、心に余裕を持って介護できます。著作権に抵触しますが、前述の理
由から著書の内容をお伝え致します。
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著書の表紙と杉山孝博氏のプロフィール ← クリックすると拡大します!