少数派シリーズ/東京オリンピックの危うさVOL.48
ROUND4 新国立競技場 (白紙撤回後の変更デザイン)編 10
新国立競技場建設作業の若者を過労自殺に追い込んだオリンピック悪を糾す
ブログを移転したため、投稿日と記事の日時・状況と整合性がありません。記事は2017年3月、旧ブログに投稿したものです。アスリートファーストの尊重は微塵もなく、政治家・経済界・五輪関係者などは己の思惑・利益・保身のために、東京オリンピックの悪用が目に余ります。年月が経過しても、ブログにてその検証や事実を残しておく必要があると考えます。
■国家的行事でも労働者の命と健康が犠牲になることはあってはならぬ
東京オリンピックメイン会場の新国立競技場建設作業を行っていた、大成建設下請け会社の男性(23歳)が2017年3月に自殺しました。直前の残業が月200時間を超え、2か月前も143時間(数値は残業過少申告の可能性あり)、実態はより酷い状態による過労自殺が原因です。男性は前年に入社したばかりにも関わらず、現場監督を任されました。加重労働の他に、現場責任者として厳しい管理を要求され、工事遅れのストレス、さらにはベテラン先輩から「死ね」 「使えねー(奴)」など大声で罵声・罵倒され続けました。騒がしい工事現場でも、離れた場所の別会社作業員にも聞こえるほどだったそうです。男性はその後、行方不明になり、長野県で遺体が発見されました。近くに遺書が残され、「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした。家族、友人、会社の方、本当にすみませんでした。私をどうかお許しください。」
新国立競技場は、杜撰な計画が白紙撤回されたため、当初計画より1年余遅れで着工し、急ピッチで工事が進められています。男性のご両親は「工期の遅れを取り戻そうとして、厳しい管理を要求されていたのだと思います。同じように、過労で命を落とすような人を出したくない。」とのコメントをされました。ご両親は、どれだけ無念だったでしょうか。この背景に、あえて昔の言い方をすれば、「世紀の祭典」~東京オリンピック開催に、工事現場では多くの労働者が長時間労働を余儀なくされています。国家的行事だからといって労働者の命と健康が犠牲になることはあってはなりません。また建設業界そのものがブラック企業化し、作業員の使い捨てが顕著です。また入社1年目から過剰な責任を負わす、最初からベテラン社員並みの仕事を新人に要求することは、電通女性が自殺した状況と全く同じです。人間を人間と思わぬ行為・ブラック化が、日本中に蔓延しているのです。
■前回1964年のオリンピック工事では100人以上の作業者が亡くなった
担当の川人弁護士は言葉を強め、次の見解を示しました。「人間の生理的限界をはるかに超えた、常軌を逸した時間外労働だ。男性が死亡した後も、業者や関係機関が痛苦な反省の上に改善措置をとっているとは言いがたい。使用業者はもとより、元請け、発注者、さらに東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会、東京都、政府関係機関は、この労働者の深刻な実態を直視すべきだ。労働者が犠牲になることは、断じてあってはならない。また、会社をはじめ、この工事に関与しているすべての皆様方が、働く者の命と健康を守るために力を尽くして頂きたいと思います。」 ここからは、投稿者の感想です。亡くなった彼は、2020年を楽しみにしていたかもしれません。でもご両親は、3年後に新国立競技場で開かれる開会式をどう思うのでしょうか。
投稿者として、かつて読んだ書籍「オリンピックの身代金」 著者:奥田英朗 をご紹介します。TVでもドラマ化され、主役の刑事を竹野内豊、テロリストを松山ケンイチが演じています。前回1964年の東京オリンピック直前のストーリーで、開会式の最中に国立競技場を爆破しようとする犯行予告が届き、警察組織・刑事達とオリンピック妨害犯行を実行しようとする犯人との攻防です。痛烈なテーマがあり、①国家行事をお題目に工事作業者への過酷な要求(虫けら状態) ②オリンピック開催に沸く東京と搾取され貧困にあえぐ深刻な地域格差や貧富の差 ③東京だけが富と繁栄を享受するのは断じて許されない ④日本にオリンピックを開催する資格はない~と犯人は疑問と憤りを抱き、国立競技場の爆破に挑みます。当時も突貫工事の連続で、分かっているだけで100人以上の作業者が亡くなっています。考えれば、半世紀たったにも関わらず、背景は少しも変わっていません。投稿者自身は“爆破行為はしません”が、共感するところは多々あります。
■ザハ案のまま進めば突貫工事事故による多くの作業者が死ぬことに
Web上には、当初決定の「ザハ案なら今回の若者は死なずに済んだ」は、全くの間違いです。厳密に言えば、当該男性は死ななかったかもしれませんが。言わんとすることは、ザハ案では建築難易度が高く、到底、“開会式に間に合わず”、別の多くの作業者のストレス過労死、無理な突貫工事によって重大事故がおき多数の死者が発生したと推察されます。ザハ案は建築物ではなく、ひと言で言えば長さ300m級の大型橋梁です。一般的にこの規模の橋は、10年前後掛かります。巨額もさることながら、数年では無理なので白紙になったのです。今回亡くなった若者は、元凶をたどれば文科省や下部組織が建築不可なザハ案を選定、森五輪組織委員会長の一連の不手際の影響です。これらによって、建設予定が遅れに遅れたしわ寄せです。オリンピックを政治の道具にしか考えない連中、ゼネコンは自分達の言いなりの金額で受注するも下請けには余分な金は回さずただただ儲ける姿勢。結局、下請け企業、とりわけ若者・弱者にしわ寄せが及ぶのです。過労自殺はやるせない・・・
ROUND4 新国立競技場 (白紙撤回後の変更デザイン)編 10
新国立競技場建設作業の若者を過労自殺に追い込んだオリンピック悪を糾す
ブログを移転したため、投稿日と記事の日時・状況と整合性がありません。記事は2017年3月、旧ブログに投稿したものです。アスリートファーストの尊重は微塵もなく、政治家・経済界・五輪関係者などは己の思惑・利益・保身のために、東京オリンピックの悪用が目に余ります。年月が経過しても、ブログにてその検証や事実を残しておく必要があると考えます。
■国家的行事でも労働者の命と健康が犠牲になることはあってはならぬ
東京オリンピックメイン会場の新国立競技場建設作業を行っていた、大成建設下請け会社の男性(23歳)が2017年3月に自殺しました。直前の残業が月200時間を超え、2か月前も143時間(数値は残業過少申告の可能性あり)、実態はより酷い状態による過労自殺が原因です。男性は前年に入社したばかりにも関わらず、現場監督を任されました。加重労働の他に、現場責任者として厳しい管理を要求され、工事遅れのストレス、さらにはベテラン先輩から「死ね」 「使えねー(奴)」など大声で罵声・罵倒され続けました。騒がしい工事現場でも、離れた場所の別会社作業員にも聞こえるほどだったそうです。男性はその後、行方不明になり、長野県で遺体が発見されました。近くに遺書が残され、「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした。家族、友人、会社の方、本当にすみませんでした。私をどうかお許しください。」
新国立競技場は、杜撰な計画が白紙撤回されたため、当初計画より1年余遅れで着工し、急ピッチで工事が進められています。男性のご両親は「工期の遅れを取り戻そうとして、厳しい管理を要求されていたのだと思います。同じように、過労で命を落とすような人を出したくない。」とのコメントをされました。ご両親は、どれだけ無念だったでしょうか。この背景に、あえて昔の言い方をすれば、「世紀の祭典」~東京オリンピック開催に、工事現場では多くの労働者が長時間労働を余儀なくされています。国家的行事だからといって労働者の命と健康が犠牲になることはあってはなりません。また建設業界そのものがブラック企業化し、作業員の使い捨てが顕著です。また入社1年目から過剰な責任を負わす、最初からベテラン社員並みの仕事を新人に要求することは、電通女性が自殺した状況と全く同じです。人間を人間と思わぬ行為・ブラック化が、日本中に蔓延しているのです。
■前回1964年のオリンピック工事では100人以上の作業者が亡くなった
担当の川人弁護士は言葉を強め、次の見解を示しました。「人間の生理的限界をはるかに超えた、常軌を逸した時間外労働だ。男性が死亡した後も、業者や関係機関が痛苦な反省の上に改善措置をとっているとは言いがたい。使用業者はもとより、元請け、発注者、さらに東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会、東京都、政府関係機関は、この労働者の深刻な実態を直視すべきだ。労働者が犠牲になることは、断じてあってはならない。また、会社をはじめ、この工事に関与しているすべての皆様方が、働く者の命と健康を守るために力を尽くして頂きたいと思います。」 ここからは、投稿者の感想です。亡くなった彼は、2020年を楽しみにしていたかもしれません。でもご両親は、3年後に新国立競技場で開かれる開会式をどう思うのでしょうか。
投稿者として、かつて読んだ書籍「オリンピックの身代金」 著者:奥田英朗 をご紹介します。TVでもドラマ化され、主役の刑事を竹野内豊、テロリストを松山ケンイチが演じています。前回1964年の東京オリンピック直前のストーリーで、開会式の最中に国立競技場を爆破しようとする犯行予告が届き、警察組織・刑事達とオリンピック妨害犯行を実行しようとする犯人との攻防です。痛烈なテーマがあり、①国家行事をお題目に工事作業者への過酷な要求(虫けら状態) ②オリンピック開催に沸く東京と搾取され貧困にあえぐ深刻な地域格差や貧富の差 ③東京だけが富と繁栄を享受するのは断じて許されない ④日本にオリンピックを開催する資格はない~と犯人は疑問と憤りを抱き、国立競技場の爆破に挑みます。当時も突貫工事の連続で、分かっているだけで100人以上の作業者が亡くなっています。考えれば、半世紀たったにも関わらず、背景は少しも変わっていません。投稿者自身は“爆破行為はしません”が、共感するところは多々あります。
■ザハ案のまま進めば突貫工事事故による多くの作業者が死ぬことに
Web上には、当初決定の「ザハ案なら今回の若者は死なずに済んだ」は、全くの間違いです。厳密に言えば、当該男性は死ななかったかもしれませんが。言わんとすることは、ザハ案では建築難易度が高く、到底、“開会式に間に合わず”、別の多くの作業者のストレス過労死、無理な突貫工事によって重大事故がおき多数の死者が発生したと推察されます。ザハ案は建築物ではなく、ひと言で言えば長さ300m級の大型橋梁です。一般的にこの規模の橋は、10年前後掛かります。巨額もさることながら、数年では無理なので白紙になったのです。今回亡くなった若者は、元凶をたどれば文科省や下部組織が建築不可なザハ案を選定、森五輪組織委員会長の一連の不手際の影響です。これらによって、建設予定が遅れに遅れたしわ寄せです。オリンピックを政治の道具にしか考えない連中、ゼネコンは自分達の言いなりの金額で受注するも下請けには余分な金は回さずただただ儲ける姿勢。結局、下請け企業、とりわけ若者・弱者にしわ寄せが及ぶのです。過労自殺はやるせない・・・