偽装魚の実態シリーズ 貝類の偽装 鮑(あわび)
偽装貝類名 ロコガイ・ラパスガイ
回転寿司の鮑は全く別種の南米の海で獲れるロコ貝やラパス貝
鮑は伊勢神宮へのお供物で、熨斗袋の語源の縁起良い物
■あまりにもウソがバレて鮑とは言えない多くの回転寿司店
本物の鮑といえば、高級貝・高級ネタの代表です。毎度書くように、そもそも鮑が回転寿司店で食べられること自体がおかしいのです。また回転寿司が「偽装魚」の宝庫であっても、鮑の“偽装貝”ほど本物と食感や姿が違うのではないでしょうか!鮑とは全く別種の、南米(太平洋岸)で獲れるロコ貝やラパス貝が使われます。
昔、回転寿司が「偽装魚」だらけなのを知らなかった“純?”な頃の私も、鮑だけは本物と違う貝だと分かりました。回転寿司店も最近、さすがにこれを鮑と呼ぶには気が引けるのか、チリアワビや正直にロコ貝と表示するところも出てきています。
ともかく回転寿司の業界は、お客に“偽鮑”と見破られることに懲りたのか、ロコ貝やラパス貝を一切使わない店が出てきました。台湾・北米・北欧などから、養殖のアカネアワビやトコブシの亜種フクトコブシを探し出したようです。今度の偽貝は、素人では分からないと言われています。
しかし「回転寿司の高級ネタに本物なし」の言葉のように、所詮、本物ではないのです。個人的には、コリコリとした本物の鮑の食感も遠い昔になってしまいました。中国では大規模な養殖鮑産業が盛んで、日本からもだいぶ買い付けに行っているようです。問題は、中国から輸入されたものが、国産鮑に化けてしまうことです。
■本物・鮑のミニ情報/蒸し鮑・ステーキも乙なもの
本物の鮑は、北海道南部から韓国南部に生息し、貝長20cmにもなります。水深20mぐらいの岩礁に棲み、褐藻類を食べています。岩に張り付き、漁獲しようと触ると、瞬間接着剤を付けたようにくっついてテコでも剥がれません。ご存じにように生ネタはコリコリした歯ごたえが魅力で、また蒸し鮑の軟らかい食感は寿司飯と相性が良いですね。ツメ(煮詰め)を塗った蒸し鮑も乙なものです。
さらに、マメ知識を2つ。「磯の鮑の片思い」とは、“片思い”をしゃれて言う言葉です。鮑は1枚貝なので、片方(一方)をかけたものです。もう1つが「熨斗(のし)」です。鮑は伊勢神宮へのお供え物で、縁起が良い物とされてきました。室町時代は鮑そのものを贈る習慣があり、江戸時代は贈答物の他に鮑を添えました。それが「熨斗袋」のスタイルになったと言われています。
「熨斗袋」は、右上に紅白の紙を雛人形の着物のように作り、そこに「のし」を挟んだものです。のしとは「のし鮑」のことで、鮑をのした(伸ばした)ものです。鮑を外側から巻くように切っていくと、3mにもなるようです。このように以前の「熨斗袋」には、干した鮑の一部を切って前述の部分に挟み込んでいました。しかし現在では「熨斗袋」の鮑も、印刷されたものになってしまいました(笑)。
回転寿司店を始め激安居酒屋・弁当チェーン・ファストフード店・惣菜店など
の安さの秘密は、こういう魚やネタを使っているからです。
偽装魚とは、本物魚の味や食感に似た外国の別種魚や深海魚のことです。