食品のカラクリシリーズ 菓子パン/菓子
乳児の“パン喉詰まり死亡事故”2年後もまだ売っていた「かぼちゃとにんじんのやさいパン」
調査結果:一口サイズパン・水分量が少なく子どもの唾液だけでは柔らかくするのが難しい
■まず投稿者の文章|国民生活センターが「この商品はリスクが高い」と注意喚起
21年にカネ増製菓の「かぼちゃとにんじんのやさいパン」を食べた乳児が喉を詰まらせて死亡し、国民生活センターが注意喚起を行ったことを、失礼ながら投稿者はしばらくぶりにふと思い出した。現状はどう改善されたか調べたが、包装袋に「注意書き」がされた程度で、さして進展していないことから、今回、投稿するに至った。当時、投稿者はメーカーの不誠実を認識しており、2年前であっても新聞記事を保管してあったのでご紹介する。後段には、同傾向の「こんにゃくゼリー・22人死亡事故」と対比させた。なお、どちらの商品も大した改善もされず、今も平然と店頭や通販で売られているので注意願いたい。
▽「一口サイズパン」のど詰まり・国民生活センター注意喚起 (毎日新聞2021/10/21付)
国民生活センターは(21年10月)19日、大阪府河内長野市の「カネ増製菓」が製造した乳児向けの「かぼちゃとにんじんのやさいパン」を食べた沖縄県の生後10カ月の男児が、昨年(20年)3月に死亡していたと明らかにした。今年6月には、静岡県の生後11カ月の男児がのどを詰まらせたケースもあった。センターは、この商品はリスクが高いとの判断を示すとともに、乳幼児の食べ物による窒息事故を防ぐため、適切な大きさにして与えるなど注意を呼び掛けている。
センターによると、パンは1個が2~3センチ大。沖縄の男児は、母親が目を離した隙に丸ごとのみ込もうとした。母親は口に手を入れたが、わずかしかパンを出すことはできず、苦しみだし、救急搬送された。静岡の男児はベビーカーに乗った状態でパンを食べ、呼吸ができなくなった。センターは、乳児が食べる際に食べやすい大きさにすることや、お茶や水でのどを湿らせる配慮を求めている。さらに親などが硬さを確認し、のみ込むまで目を離さないようにして、万一詰まらせたらすぐ119番すべきだとしている。同社は事故を踏まえ、商品のパッケージに丸ごと口に入れるとのどを詰まらせる恐れがあるなどと注意喚起をすることを決めた。
▽「乳幼児向けパンの窒息事故、また浮き彫りになった基準作りの難しさ」(国民生活センター) 同
国民生活センターによると、サイズは一口大(縦約3センチ、横約3.5センチ、厚さ約2センチ)。死亡事故を受け、メーカーはまず45グラム入り(左)にはのど詰まりに関する注意書きを加えた。センターは(同)19日、パンの大きさや水分量が窒息のリスクを高めたとする調査結果を公表した。子どもに与えるときは小さくちぎり、飲み込むまで目を離さないよう呼びかけた。実験で、人工唾液(だえき)の中で、5分間、頻繁に容器に当たるようにかき混ぜたところ、形状が保たれたままだった。水分量は食パンの半分ほどで、類似品に比べて人工唾液の吸収スピードが15~20倍速かったという(※下記補足)。事故防止のために業界に働きかけることを消費者庁に求めた。ただ、食品の形状などに関する乳幼児向けの国の基準はなく、センターの担当者は「のどに詰まる要因には食べる人の発達具合も関係しているので、食品だけに安全を担保する基準を設けることは難しい」と述べた。
補足/水分量が少なくぱさぱさして、子どもの唾液だけではやわらかくするのが難しい。
■投稿者の文章|メーカー自身に子供を守る・子供の心理を考えて製造していない
案の定、世間は「こんにゃくゼリー」を食べて22人が亡くなった事件(下記リンク参照)と同じく、「母親が悪い!」「何でもメーカーのせいにするな!」ばかりで失望した。世間もメーカーも、「子供は社会で育てる(守る)」=「メーカーは子供が誤飲してもある程度は防げる対策が必要」の精神を持っていない。2008年当時の「こんにゃくゼリー」事故の時と大きく変わったのは、子育ては各家庭だけでなく社会全体で行うもの(守るもの)の認識が高まった。しかし、若いと思われる方(特に独身男性)は今も母親を責めるコメントばかりだ。「こんにゃくゼリー」の投稿で申し上げたことは(詳しくはリンク参照)、<若い方は、どれだけ我が子を注視しても、一瞬、目を離すことがありうることを認識していない。あなた方が今も生きていられるのは、小さい頃に悪いことをした時、たまたま運良く母親が見ていたタイミングだからだ>と書いた。つまり親の不注意に押し付けるのではなく、メーカーもできるだけ安全性(子供の命を守る工夫)を考えるべきと申し上げた。
両者の事故の共通性は、はっきりしている。(1)どちらも乳幼児が、一口で食べられそうなサイズ。ツルッと喉まで達し、詰まらせる。子供の心理で、どうしても一気に口に入れようとする。つまりもっと大きくしておけばそんな気は起こらず、本能でなめたり噛んで食べようとするし親もそうさせる。(2)どちらも“意外な食材”を使っていたことだ。「こんにゃくゼリー」は、いわゆるゼリーの食感ではなく、まさしく硬い「こんにゃく」そのもの。「パン」のほうも調査結果の通り、通常のパンより遙かに硬いことだ。言わんとすることは、メーカー側が全く子供の心理(親の心理も)や子供の身体機能を前提に作っておらず、大人の感覚そのままだ。消費者庁や国民生活センターは、親の注意だけでは限界があることを認識しているからこそ、できるだけ“子供が事故に巻き込まれない”商品作りを求めている。今回つくづく感じたことは、子育ては社会で!の掛け声が高まっていても、世の中の人々は過失を親だけに押し付け、安全努力さえ感じられないメーカーを擁護する態度に、我が国に本当の育児や子育ての精神が備わるには長い時間を要すと感じた。
こんにゃくゼリーで22人死亡も改善せず拡販を優先させたメーカーの悪質さ
メーカーはこんにゃくゼリー死亡事故を全て消費者の責任にした