月刊パントマイムファン編集部電子支局

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アーティストリレー日記(23)バーバラ村田さん

2012-12-08 23:07:15 | アーティストリレー日記
今号では、舞☆夢☆踏出身で、国内だけでなく海外でも活躍中のパントマイミスト、バーバラ村田さんの日記をお届けします。

【近況】
御無沙汰しております、バーバラ村田です。
早いものでもう12月。今年が明けて、春にイベントをやって夏の3ヵ月間ヨーロッパを回り、ちょっと突っ伏していたらもう秋の大道芸シーズン。またちょっと突っ伏していたら師走とは…。

実は今年の初めから、新作を作っていました。
ソロの、大道芸の(と限らなくてもいいのだけど)新作を一から作るのは本当に久しぶりでした。
私は一つの作品を育てるのにものすごく時間がかかります。
今、一番上演頻度の高い「バーバラビットのキャバレーショー」は今の形になるのにたぶん7年くらいかかっています。
生まれたてのまだ目鼻立ちも今ひとつ判然としないところから、はいはい、よちよち歩きを経てやっとこ歩き回れるようになったら方向音痴で道に迷ったり、全くとんちんかんな方向に走っていってすっ転んだりしてしばしうずくまったりして、やがてまた手探りで歩き出す。
そんな感じで少しずつ、少しずつ。それは真っ暗な森の中を雲に翳りながら射す月明かりを頼りに進むような道行き。
そんな風にして一体何処へ向かっているのかと問われれば、たぶん、私が「きっとどこかにある」「あってほしい」と願う景色に向かって。
やっとその景色に辿り着いたところでまた次の旅が始まるので、全く作品にゴールはないのだけれどそんなふうにしていると本当に時はあっという間に過ぎてしまったりするようです。
だから今回、久々にそのスタート地点に立ってみて、その果てしなさに改めてクラクラしながらワクワクし、呆然としながら陶然としました。
イメージの断片を集めて、探って、足して引いて千切って捏ねて丸めて寝かしてまた捏ねる。なかなか、形にならない。茹でてみる。蒸してみる。焼いてみる。焦げた。やりなおし。
なんとか目鼻がついて、赤子を舞台に乗せる。とにかく、生まれた。
外(大道芸)に出してみる。風に吹かれて飛ばされるし、へしゃげるし、へこむ。
銀座とスイス、2箇所での野外実習(大道芸)を経て、気付く。
たぶんこの子、こうじゃない。暗転。

もう一度、生まれる前の混沌にたちかえる。
何も、ないのかもしれない。あるような気がする。でも、ないのかもしれない。ぐるぐると混沌のまわりを回るうちにふと、思う。
もう、あるのかもしれない。
私のイメージを受けて美術家と衣装家の手から生み出されたマスクとドレスがそこにあり、私の体がここにある。
この三つが出会ったところに、もう物語は生まれている。んじゃないのか。私が物語を作るのではなく。既に。
このモノたちは、仮面とドレスと体はどう現れたいのか、動きたいのか、仮面と体、ドレスと体、仮面とドレスはどう交わりたいのか。
そこをただひたすらに探り掘り起こして行ったら、不可思議な顔をした物語がきょとん、と横たわっていました。
まだ土まみれででこぼこしたその物語と共に上野、静岡、厚木のフェスティバルをよちよち歩きで回りました。
回を重ねる毎に、人と、場所と会う毎に滑らかな肌を見せ目に光が灯りはじめたこの物語は名前を「月のおはなし」と云います。

暗闇に、細く射す月あかりのような作品に育ちますよう。
どこかで観て頂けたら幸いです。


【最近ハマっていること】
まだハマってはいないのですが、旋回舞踊。タンヌーラとかスーフィー、セマー、メヴラーナとかいうもので、でっかいスカートを履いてひたすらくるくる回る舞踊です。繰り返し旋回することによって神との一体化を求める、トルコやエジプトの伝統舞踊。
回る、ということがずっと気になっているので是非ワークショップを受けてみたい…のですが定期的に教えているところがあまりなく、1件だけ見つけたクラスは日曜の昼、という芸人泣かせ。きっと来年には。
訓練すると1時間でも回り続けられるそうですよ。いいなあ…。

バーバラ村田
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