今月は、2回目の登場、若手ストリートクラウンのしもとり ゆうさんの日記をお届けします。もう、ホント毎回長いので読むのが大変です。勘弁してよね。しもとりくん。(佐々木)
ちょっと見せてよ
「へぇー、君パントマイムやってんだ!ちょっとだけ見せてよ」
(出たよ、このフリ…)
心の中で、やりたくない自分を押し殺す。
「ちょっとだけですよ?」
壁を演じる
「ふーん」
(いや、ふーんってなんだよ?そっちからフッておいて、その反応なによ?)
まだバイトしてたときにたまに言われた言葉です。
ぼくはこういうフリがホントに大っっ嫌いでした。
当時は、毎日違うレストランで、毎日働く仲間が違うという派遣のバイトをしてました。
そこでぼくがパントマイムやってることを知ったレストランの人が、興味本位で聞いてきたのが、冒頭のコメント。
ぼくは、イヤだなぁと思いながら壁を演じたりしてました。
演じたあとは決まって、「ふーん」という特に感想はなかったことが如実にわかるような反応ばかり…
「だから、やりたくなかったんだよ!マジックとかと一緒にすんなよな」と演じたところで誰も得しない時間を過ごしてました。
もし、今この質問をぶつけられたら…
自分から壁を演じたりはしません!
なぜか。
こういう人たちは、「どれ、ひとつ、オレがどれだけ手が動いてないか確認してやろう」と評論家目線になるからです。評価しやすいところはそこだからね。
そういう人たちにいいたい。
マイムは、手がどんだけ動いてないかっていう芸能じゃねぇ。
とはいえ、壁という土俵で戦う限りそういう見方をされてしまうのは仕方のないことかもしれません。でも、こちら側が壁を演じてる限り、あちら側は固定点どんだけキープできてるか選手権の審査員です。ほっといてもこういう状況で壁を演じることは、その選手権へのエントリーを意味します。
なので、そういうときは出場を辞退して、別の部門でその場をやり過ごすのがベターです。
別の部門?例えば?
例えば、無対象で針金を出現させる。そして、身体に貫通させる。とかね。
無対象の演技に、優劣をつけようとする人はいないので、こういうフリには、それが最適解かな。
あとは、自信を持ってやりきるかどうかだけ。
なぜパントマイムには技術大会がないのか
そういえば、常々疑問だったんですが、なんでパントマイムって大会ないんですかね??
他の分野には〇〇賞が存在するのに対し、パントマイムだけは『心を揺さぶるパントマイム作品賞』みたいなものありませんよね。
「大会?なんでそんなものが必要なんだ?賞がほしいならが〜まるちょばみたいにエジンバラで賞とってくればいいじゃないか」
「いきなりエジンバラはハードル高すぎですよ。それにエジンバラの賞ってマイムに限定したものではないですよね?攻撃の方法を拳に限定したボクシングのように、パントマイムに限定した大会ってないんですかね?」
「言われてみれば、パントマイムの大会は存在しないな」
「そうなんですよ。大道芸のジャンルとして似たようなところを見渡すと、マジック界にはFISMというプロマジシャンが真剣勝負する場があり、ジャグリングだってJJFという大会があり、バルーンはツイスターズなど様々な大会がある。でも、パントマイムにはそれがありません。これっておかしくないですかね?」
「でも、これらはすごいやつNo.1を決める大会であって、多様な価値観のマイムに優劣はつけられないだろう」
「だったら漫才やコント、落語はどうなんですか?M-1やキングオブコント、新人演芸大賞があるじゃないですか!」
「パントマイムは表現の世界じゃないか」
「表現の世界を見渡してもバレエのブノワ賞、ドラマのエミー賞、映画のアカデミー賞だってあります。どうしてパントマイムだけがないんですか?」
「なら聞くけど、そもそもなにを競うんだ?演技か?それとも固定点の精度か?いかに困難な状況でも固定点動かないかコンテストなんて考えただけで退屈だぜ?」
「いや、それはそうですけど、でもフィギュアスケートのように技術と演技を競う大会もありますよね?」
「たしかにな。でも、なんでそんなに大会がしたいんだ?」
「ぼく、もっと肩書きがほしいんです。
- 【全日本パントマイム大会クリエイティブ部門優勝】とか。
- 4分のネタで勝負する「P1グランプリ決勝進出」とか
- 複数人演じ分け大賞2020受賞とか
- 観客が選んだ「まわりに勧めたくなる」パントマイマー100人に選ばれましたとか
- 固定点の神様とか
- 古典ギャグをしっかり演じられる認定アーティストとか
- 1個拾ったら別の1個落としてそれで笑いとれる実力の持ち主とか
- 令和のパイ投げ爆笑王とか
名乗ってみたいです!!!」
(後半は、勝手に名乗っていいと思うぞ…)
「なるほどね。そういうことなら最近パントマイム協会ってものが発足しただろ。そこの人たちが動いてくれれば、可能性はゼロではないな」
「えっ、ホントですか?パントマイム協会の方、これ見てくれてるかなぁ??よろしくおねがいします!!」
パントマイムがいまいちマイナーなのは大会がないのも一因なんじゃないのか?ってことを最近、考えます。
もしそういうのがあったら「ヘブンアーティスト所持者」なんて一般の人からみたらよくわかんない肩書きなんかよりも全然いい。
まぁ、少なくとも大会の存在に対する需要はともかく、肩書への需要は爆発的にありそうな気がします。
そして、ここまで書けば、きっとパントマイム協会の人が動いてくれると信じています(丸投げ)
「でも、ちょっと待って!その前にそもそもマイム人口が少なすぎるんじゃないのか?」ということをふと思いまして、「競技人口が100人以下で大会成立しないやろ、まずはパントマイムをやる側の人を増やすことも必要じゃないだろうか。」
そんなことを思っていた矢先のことでした。
無対象の4原則を発見
それは、こんなメールからはじまりました。
「~前略~ ところがその無対象がきちんとできません。自分の演技の質を向上するために、カクカクしたパントマイムではなく、そこにきちんと対象物がある、それとのやり取りというかその対象物から影響を受ける、お客様にもそれが見えるようなパントマイムができるようになりたいのですが、どこで習うのが一番良いか教えてください。」
言うなれば、「壁」や「かばんの固定」をやらないパントマイム教室を教えてくれ。というもの。 そこで、答えにつまってしまいました。
そして、ふと10年くらい前のことを思い浮かべました…
ぼくがまだ大学生だったころ、やたらショートコントを仕掛けてくる友人がいました。
そいつが演じると、その空間がまるで別の世界になったかのように演技がうまかったんですよ。
医者を演じれば、見えないカルテが見えてきて、
探偵を演じれば、見えない帽子が見えてきて、
店員を演じれば、見えないメニューが見えてきました。
そして、みんなの笑い声が響くなか、ぼく自身の心のなかにギラギラと燃える、ホントはあいつみたいに人を笑わせる存在になりたい、っていう悔しさが渦巻いてました。
ずっと疑問に思ってたんです。「なんで、アイツがたまにやるコントはうまいんだろう」って。そして、「それに比べてオレの演技って…、自分でも下手ってわかるわ。」と打ちひしがれて、それでも何をしていいのかわからず…
やがて、パントマイムの道に進み、今ではアイツの演じる医者はなぜ見えないカルテが見えてくるのかということが説明できる自信がついてきた。
そんな折に、こんな問い合わせ。
そして、何度かやり取りした後、ぼくがその方に無対象の演技を教えることに決まり、動画講座をつくることになりました。教え方を模索する過程で、とことんシンプルに簡略化して「これだけ覚えておけばOK」という大原則を発見。
それが無対象の4原則です。
- その場でつかむ
- 形状維持
- 連動
- 変形
この4原則を知っていれば、無対象の演技の90%は表現できるという心強い法則です。
原則の強さ
ところで、めっちゃ話変わりますけど、
名刺とか年賀状って自分でつくってます?
- できあがってるデザインを買う
- 半分できてるモノを買ってそれを自分でアレンジする
- 全部ゼロから自分でデザインする
あなたは、どれ派ですか??
ぼくは、「既製品のデザインってなんかつまらねぇんだよなぁ」ってなんでもゼロからつくりたい派なので、名刺も年賀状も自作です。
そのため、デザインソフトも使います。
今ではすっかり使いこなせるようになりましたが、最初に触った時は、何から何まで決めなくちゃならなくて、打ちひしがれたのをよく覚えています。だって、写真の大きさ変えられるし、文字の大きさも変えられるし、色も無限に選択肢あって、決めることがありすぎて結局つたないデザインになってしまったり…「郵便番号と住所と電話番号、どうやって配置したらええん?住所長いから電話番号大きくして…いや変でしょ!」みたいなことで永遠と悩んでました。
でも、デザインの4原則というのを知ってから圧倒的にクオリティあがったんですよ。 「あ、このラインをそろえればすっきりするやん!」とか、 「これとこれを離せば、みやすくなるやん!って。
原則の力を思い知ったのはそのころです。
考えてみれば、動きも指針がないとつくれないんですよね。動きを組み立てる側になって、はじめて「あれ?動きってつくるのむずくない?速度や、軌道、重心、どこを動かしてどこを動かさないかを細かく突き詰めるとどうやって動きを決めていけばいいのかわかんないよぅ」って気付いたりして、一時期まったく動きがつくれませんでした。
そして、そのときの自分のような人に、無対象の4原則をおくりたい。そんな思いで、『無対象の教科書』という動画教材をリリースしました。(ここから宣伝です)
一言でいうと
一言で言うと、「壁を教えないパントマイム動画レッスン」
「Udemyみたいなモノ」で伝わる人には、そんな感じ。2分〜12分くらいの録画された動画が40個あるような講座といえばイメージが伝わるでしょうか?(決められた時間に一緒にやるレッスンではありません)
パントマイムの教材が圧倒的に世の中に少ない中、この講座を起点にパントマイムを見ていた人が、興味もってやる側になってくれたらうれしいな。そして、パントマイム人口がもっと増えれば、パントマイムの大会もできるかもしれない。なんて妄想をしてます。
先ほどの大学時代の友人のようなことがうまくなりたい方向けです。
「へぇ、でその講座を受講すれば、無対象を100%コントロールできるの?」
残念ながら、そこまではお約束できません。この講座は、現時点で、ぼくが知ってる無対象の演技方法をまとめたものですけど、正直なところ、完成された理論ではありません。
しかし、ここで語られる法則は、おおくの人のパントマイムをみてきて実践されてきたこと。それをまとめました。
あ、今さらですが、お前誰だよって方のために自己紹介しておくと、
最近パントマイムで稼げるようになってきた34歳です。
先月、このアーティストリレーに登場した山本光洋氏のもとで10年くらいパントマイムを習ってます。
主に路上で活動してます。
路上で?
そう、路上です。言ってみれば、常にはじめましての通行人を観客に変えることを追求してます。「パントマイムは路上で通用するのか」というコンセプトの人体実験を続けてきました。無対象の演技でも、十分に人の足を止められるもんです。
架空のレビューを書いてみる
信頼のおける何人かには見てもらってるのですが、3時間に迫る長さなのですべてを見終わった方はまだいません。 そのため、レッスンを視聴したあとの感想が存在しない…
ので、「過去の自分」や「これを作らなかった人生の自分」がこれを受講したと仮定してレビューを書いてみました。
架空のレビュー
今までなんとなくでやっていた演技に自信を持つことができました。パントマイムって口承芸能のような側面があって、教わったときには「なるほど!そうやって演じればいいのか」と思っても、いざ自分でやってみようと思ったときには細かい部分が再現できなくてなかなか習得できず…
けど、この講座は自分が「これやってみたい」って思った演技を何度も練習できるし、解説がこれ以上ないほどわかりやすいかったです。
僕はプロを目指していますが、結果的にお金をムダにすることが減ると思うし、時間の短縮になると思います。独学で、これを体得するには10年くらい余計にかかりそうですが、この講座を何度も反復して、加速したいです。
パントマイムの無対象なんて、はっきり言って売れる見込みゼロなモノをよくつくったなと思う。
正直に言うと、彼から「これ、ちょっと見てくださいよ!」と頼まれたときは、「どうせ大したことないだろう」と半ばバカにしていた。それに「パントマイムの理論なんて知り尽くしているはず…」そう思い、私は卒業アルバムを開くような気分で再生しはじめた。
ところが、動画を見始めてみると「大したことない」という印象は吹き飛んでしまった。
「そうか、こうやって教えればいいんだ」という知見がいくつも得られ、メモの嵐。彼の真剣さが伝わってきた。もし、自分がパントマイムを習いはじめの新人だったら、とめられても何度も見返したくなりますね。
この前、オーディションでエチュードをしたときに、自分が想像しているコレ、薄っぺらいなーって思ってたんです。
結果は当然、ダメで。
それ以降、人前で演じることに自信が持てませんでした。
そんなときに「無料の部分もあるし、ちょっとやってみようかな」って軽い気持ちでこの講座を受講してみたんです。
最初は、見ただけで満足しちゃってそのまま放置してました。けど、このままじゃいけないなと思って、この講座の内容を自分でもやってみたんです。
今では、少しずつですが「これで伝わってる!」って自信をもちながら演技できるようになりました。
パントマイムをやるんやったらこれは見とかへんとあかんな、と思う講座。
特に、無対象の4原則はパントマイムに携わる人やったら絶対に知っとくべきやな。
「なんであいつの演じるコップはリアルやねん。何もないのに…」って同じようなことをずっと考えてたけど、これを見て答えわかった。
この人の言ってること、不思議と納得できんねん。
「こういうところに注意して演技すれば、見えてくる。でも、力で演技するとかえって見えなくなるから、こうやって回避したらええ」
こんな感じやから、なんか最強の先輩を動画にして雇っている感覚。ほんまに心強い。おすすめというレベルではない。みるべき動画や!
言っておきますが、これフィクションですからね(笑)
えぇ、想像で書きましたよ。ぜんぶ。
え?だってパントマイムって想像力っしょ!?
内容
内容の一部を抜粋すると…
- 見えないものが見えてくる3つの秘訣
- 無対象の演技が格段にうまくなるために覚えておくべき1番大切なこと
- 棒だけで緊張感をつくる
- 驚き と 共感 を生み出すメカニズム
- 無対象の4原則
って感じ。
台本を文字数にすると5万字くらい書きました。 卒論でもそんな書いたことねぇよってレベルで、深く考え、どうすれば未経験の人でもできるようになるのかもがき、無対象やりたい人にマジで届けって思いこめた講座です。
- 冒頭のエピソードに共感できる方
- マイムをはじめて5年未満のパフォーマー
- 壁とかいいから見えないものが見える演技がしたい役者
- プロになるつもりはないけど、プロみたいに演じられたらいいなと思う人
- 好奇心があり、現状に満足せず、退屈してる人
向けです。
詳しくはこちらをどうぞ
追伸
ここまでご覧になっていただき、本当にありがとうございます。
「へぇ〜ちょっと見てみようかな」って詳細ページに進んでくれるか
正直ドキドキしています。
その先に講座を見てくれるにせよ、やめるにせよ、ここまで長い文章にお付き合いしてくれただけでぼくの心は踊りっぱなしです。
ぜひ、動画でお会いしましょう!
追伸2
ようやくワクチンがはじまりましたね。この一年、ホントつらかったけど、夜明けはもうすぐやってきそうです。はやく、飲み会できるといいなー。