今回は、もうすぐ夏休みということで、夏休みに是非読んでみたいパントマイム関係のおすすめの本をご紹介します。
パントマイム関係の本って、ご存知の方はご存知ですが、いやあ、本当に数少ないですね。普通の書店に行っても、まず本が置いていません。これだけパントマイムがテレビや新聞などで取り上げられていて、映画の題材になっているにも関わらず、その割には少ない気がします。これから、本が出てくると良いのですが、出版社の方、パントマイミストの方、是非是非、期待しております。
その中でも厳選して、今回は2冊の本をご紹介します。
まず、「マイムの言葉‐思考する身体」(エティエンヌ・ドゥクルー著、並木孝雄監修、小野暢子訳)。現代のパントマイムの祖として知られる、エティエンヌ・ドゥクルーの講演や雑誌記事、未発表のエッセイなどを集めて出版された本の翻訳です。ドゥクルーという方は、一言で説明すると、ジャン・ルイ・バローやマルセル・マルソーの師です。ドゥクルーによるパントマイム理論が内容の中心なのですが、とにかく文章が難解過ぎて、僕には完全には分かりません。なのですが、パントマイムとは演劇やダンスとどう違うの?という、その表現スタイルを考える上で非常に色々と興味深い話が書かれていると言えると思います。あと、世界のパントマイム史にご興味がある方(少数かもしれませんが)にとっては、この書籍の及川廣信先生による解説文はかなり参考になるのではないでしょうか。マイム論を考えるのがお好きな方、マイムの歴史にご興味のある方にとっておすすめの一冊です。
続いて「砂漠にコスモスは咲かない」(ヨネヤマママコ著)。こちらの本は、残念ながら絶版となっておりますが、一部の図書館に行けば読むことができます。わが国のパントマイム草創期を開拓したヨネヤマママコさんご本人による思い出とエッセイが掲載された1冊です。内容としては、ママコさんがアメリカにわたった時のエピソード(想像を絶するような貴重なお話が書いてあります)の数々、ご自身のパントマイムに対する想い、そして、ママコさんのパントマイム論も少し記載されております。まだ、パントマイムというジャンルが確立していない道を自ら1人で切り開いていくことの困難さと勝ち取っていくことの喜びが描かれていて、歴史的にも貴重な記録と言えると思います。
今回、2冊の本をご紹介しましたが、やはり、読みたいのは故・並木孝雄先生の文章を一冊にまとめた本です。細川紘未さんのホームページにいくつか並木先生ご自身の文章が掲載されておりますが、マイムとは何かを考える上で非常に示唆に富んでいる内容で、大変興味深い。どなたか書籍化される方がいないのでしょうかと言ってみたくなります。
というわけで誌面の関係で、2冊しか紹介できませんでしたが、パントマイムを舞台で観るだけでなく、文章で楽しむということも、パントマイムの魅力を知る上で大事なのではないでしょうか。