プラザロコのゆるキャンコーナーをのぞいた後、40分ほど時間が余っていたので、新金谷車両区への散歩見物にあてました。最初に上図のSLかわね号用の客車を見ました。ヘッドマークが付けられたままなので、SLかわね号用の客車というのはこの車輌が常に使われているのか、と気付きました。SLはC10形8号機ですから、この車輌の前に連結して運行される筈ですが、その際にヘッドマークもC10形8号機のほうに付け替えるのだろうか、と考えました。
続いて、旧南海電鉄の6000系を見ました。現在の大井川鐡道本線においては最も新しい車輌です。ですが、大井川鐡道の公式サイトには全く名が見えないので、少なくとも営業運転に向けての諸準備が行われる段階には至っていない、ということだけは察せられました。
この6000系が大井川鐡道に譲渡されたのは令和二年の7月ですから、まだ三年にもなっていません。ですが、三年近くも車両区の留置線に置かれたまま、というのも考えてみますと妙です。なにか事情があるのでしょうか。
そもそも、この6000系が譲受された理由は、老朽化した旧近鉄の16000系1編成と置き換えるため、であったと聞きます。既に何度も旧近鉄車輌の引退が間近な件について触れているのも、この新型車輌の存在があるからです。
聞けば、譲受された令和二年のうちに営業運転開始を予定していたそうです。ですが、令和五年1月現在の時点でまだ営業に入っておらず、上図のように行先表示には「試運転」の表示が出たままになっています。
要するに、置き換える予定であった旧近鉄の16000系1編成が、いまだに現役状態で機能しているために、この折角の新型車輌が予備役のままになっているわけです。既に三年が経とうとしているのに、16000系1編成を廃車にするといったニュースは全く聞こえてきません。
ゆるキャンファンの視点でみますと、16000系1編成はやがてスタートするアニメ3期の大井川キャンプ編にて井川線のアプト式列車とともに大井川鐡道の顔ともなる主役級の存在となります。各務原なでしこが金谷駅から千頭駅までの本線全区間を乗る「レトロな列車」がこの16000系なので、既に現在のコラボキャンペーンでもあfろ氏の描き下ろしイラストにも描かれますし、それ以前に原作コミック第10巻のカバー表紙やカラーページに描かれて、ゆるキャンにおける大井川鐡道の顔に既になっています。
なので、これをアニメ3期のスタート前に引退させてしまうと、それだけでゆるキャンアニメとの重要なコラボ要素の一つを失ってしまいます。全国に75万人が居るといわれる各務原なでしこのファン達の一割が巡礼に向かえば、その75000人は必ず16000系に乗りたがりますから、廃車にしてしまうと、もう巡礼そのものの契機が失われます。
そうでなくても、ゆるキャンファンの鉄道利用での巡礼者は間違いなく一度は必ず16000系に乗ります。それが出来ないと、ゆるキャン聖地巡礼で大井川方面へ行く動機の何割かが失われます。それらのダメージは相当な累積効果を生み出しますから、折角のアニメ聖地としての大井川鐡道への評価も落ちてしまいかねません。
赤字に続いて災害不通で苦しむ大井川鐡道にとって、ゆるキャンのブームによる観光ムーブメントは、間違いなく救世主となるでしょうから、その重要な因子でもある旧近鉄の16000系1編成をここで引退させるわけにはいきません。そういう事情によって16000系を現役のままに留め、旧南海の新型車輌を譲受しておきながら三年近くも留置しているのだ、と推測しておりますが、考え過ぎでしょうか。
ちなみに、2023年5月時点で大井川鉄道の公式サイトでは、本線の運用電車に関して「元南海電鉄21000系、元近鉄電車16000系統、元東急電車7200系の3車種を毎日ローテーションして使用しています。」と述べられています。少なくとも、16000系はまだ現役である、ということでしょう。
色々と考えをめぐらせつつ、転車台のほうへ近づきました。
前回巡礼時に見た時と同じ状況で、C12形164号機が転車機の上に乗ったままでした。ずっとこのままになっている雰囲気がありますが、トーマス号の営業運転期間には、イベントアトラクションとしてトーマス号をこの転車機に載せて回して子供たちの人気を呼んでいるそうですから、C12形164号機も他の位置へ移動しているわけです。
なんとなく、ずーっと眺めてしまいました。
見ていて、なぜか飽きないのでした。古びた機関車独特のメカメカ感が、なにか心にグッとくるのです。そして熱い何かがこみ上げてきて、近寄って鉄の肌を撫でてやりたい気持ちになってくるのです。
奥には、かわね号のC10形8号機も健在でした。こちらは現役ですから、常に整備されて綺麗に磨かれたピカピカの状態でした。
いいですね。ここは本当に楽しい所です。
そういえば、亡き父は、鉄道工学の技術者でした。名古屋の鉄道メーカーに勤務して、新幹線の初代0系など数々の車輌の開発設計に関わってきた人なので、昔はよく一緒に鉄道に乗ると、必ず何か一つは鉄道車輌に関わるエピソードを話してくれました。蒸気機関車の専門家でもあり、家に「C系」や「D系」の設計図や部品仕様書が一杯積んであったほどなので、もしここでも生きて側に在れば、きっと様々な専門用語を交えて大井川鐡道の車輌への思いを熱く語っただろうな、と思います。
時間も迫ってきたので、新金谷駅の駅舎に戻りました。その横に上図のバス停があるのを見つけ、近寄って島田市のコミュニティバスと大鉄アドバンスの連絡バスの2路線がここを通っている事を知りました。富士山静岡空港への便もあるのですね・・・。空路で静岡まで来て、バスで大井川鐡道へ観光に行けるわけです。
たまたま見つけた、駅舎の建物の本社部分の二階の外壁のマーク。大井川鐡道の社章であるようです。
17時10分、改札口を通りました。次に乗る17時21分の列車の案内が電光表示板に出たからでした。
改札口から踏切をわたってホームへと進みました。
なんとなく名残惜しい気分にもなりました。ゆるキャン聖地巡礼で何度も利用していますが、今回で一段落して、来年1月ぐらいと予想されるアニメ3期のスタート以後までのほぼ一年ほどは、大井川鐡道に来る機会がなさそうに思えたからです。
この昭和レトロの情緒たっぷりなホームの建物も、両側の古めかしい雰囲気の客車も、黄昏時に見るとまた感動的な景色になっていました。
17時21分発の列車は、すでにおなじみとなった旧東急電鉄の7200系でした。4分後の17時25分に終点の金谷駅に着きました。降りた直後に上図の写真を撮り、JR金谷駅への連絡口を通ってJR線のホームに行きました。ようやく巡礼1日目を完了だ、と軽い疲労感を感じつつも、翌日の予定表を取り出して再チェックしたりしました。
以上で、「ゆるキャン△の聖地をゆく29」の記述を完了し、2023年1月の二回目の大井川鐡道巡礼編として括ります。翌日の巡礼行程は、項を改めて綴ります。 (了)