「鮎壺広場」の脇の園路からみた、黄瀬川の奔流の途切れる箇所です。そこが有名な「鮎壺の滝」にあたりますが、滝そのものは、園路から回り込んで南側へ行かないと見えませんでした。
この時点で、さきに見た案内板の写真の「現在地」の辺りに居ました。滝の位置からやや上流側にあたり、かつての富士山溶岩流が止まって形成された大きな岩崖の上に立っていたことを知りました。
滝が見える位置へはどうやっていくのだろう、と見回した時、犬を連れた地元の方らしき老人がゆっくりとした足取りで、私の居る園路の横の分岐から下へ降りてゆきました。あの方向か、と察して、その後をついていきました。
下りの階段道になっているのを降りていくうちに、滝の音がより響いてきて、右手に上図の景色がパッと見えてきました。
おお、これが「鮎壺の滝」ですか。予想以上に迫力がある滝でした。溶岩流の三ヶ所の切れ目から凄まじい勢いでドドドドと川水が落ちていました。
思わず「うわあ、凄いなあ・・・」と声に出してしまいました。それほどに感動的な滝の姿でした。私の声に、先ほどの犬を連れた老人が振り向いて、にこやかな表情で「確かに今日のは凄いですな、普段はなかなか見られるもんじゃない・・・」と話しかけてきました。
「え、普段はこういう状態ではないのですか、やっぱり昨晩の大雨で・・・?」
「そうそう、あれだけ雨降りましたからな、黄瀬川もあっという間に増水してますな。いつもはこんなじゃないのですよ・・・」
「すると今のこの流水量は、普段の倍ぐらいになっているのですか」
「倍どころか、もっと増えてますな。この状態ならな。三倍ぐらいかな」
「そんなに・・・、すると今日はなかなか見られない状態であるわけですか」
「そうそう、ここに20年住んでて毎日ここを散歩しとるのですが、こんな滝の姿は年に二、三回ぐらいですかな。普段は少なくて、最低限だと水も枯れてしまったりで、滝の下とか裏に回れますからな」
「滝の下や裏に行けるんですか・・・。今日は無理ですね・・・」
「そういうことです」
それから老人は、園路の南の橋を指さして、「あの橋からも滝がよく見えますよ」とすすめてきました。会釈して謝意を述べると、「では」と待ちくたびれていた犬を起き上がらせて、もと来た方向へ戻っていきました。
橋の方へ行ってみると、なんと吊り橋でした。マップで見ると「鮎壺のかけ橋」とありました。西岸にも「鮎壺の滝公園」というエリアがあるので、そこへの連絡橋となっているようです。
ここも吊り橋であるのが、ゆるキャン聖地巡礼のスポットには相応しく思えました。志摩リンは、果たしてこの橋を渡ったのでしょうか。しっかりした歩道橋のような造りで、高所恐怖症の私でも難なく渡れました。
橋からは、「鮎壺の滝」が正面に見えました。このビューポイントを狙って橋を架けたのでしょう。滝を形成している富士山溶岩流の段差面も階段状に見えてよく分かります。ここも伊豆半島ジオパークの景勝地に指定されており、しかも北端に位置しているので、伊豆半島ジオパークの観光ルートもここからスタートしているそうです。
デジカメの望遠モードで撮影しました。さきに滝が三つ並んで見えましたが、少し離れた西側にもう一つ見えました。溶岩流の切れ目が四ヶ所にあるということでしょう。この時は流水量が約三倍になっていたそうですから、本来ならば流れない所にも水があふれて、小さな滝が派生しているのも見えました。
普段はこの三分の一の流水量であるらしいので、滝の姿もこんなに迫力あるものにはならないようです。今回は滅多にないタイミングで来られたようだな、と思いました。 (続く)