父親だらけの会場で「父とは如何」と誰かを問いただしたかった。出来れば自分と似たような考えの相手と話がしたかった。自分とはまったく相容れない価値観とぶつかり合うほど体力は残っていない。似たような色同士でより濃く深い沼に沈みたかった。
私は妻を大切にしたい。息子たちを幸せにしたい。というよりも、妻と息子たちにとって私が父でよかったと思ってほしかった。こんな凡夫な私でもいてくれて幸せだったといってほしい。だから今も爪先立ちなのだ。
幸せになってな。ただ幸せになってな。
そんなメロディが聞こえてきた。
その通りだと思った。だからこそめちゃくちゃにもなるのだろう。なにもかも台無しにしてしまうかもしれない。
これは片手間で出来ることじゃない。そもそも私はそんなに器用じゃない。
なら、父とはなんだとあらためて詰め寄ってやろう。お前は、世間様は、そんな父で良しとするのかと一喝してやろう。
そこで初めて彼も語り出すだろう。
父としての己を
【おわり】