久しぶり会った学生時代の同期は同じ街の同じ駅のおおよそ同じ時間帯の列車に毎日乗っているはずなのに、数年振りであった。僅かな誤差で交わらないことを否応になく感じさせられてしまった。
卒業してから、一度会って、また会って、また偶然見かけた奴に声をかけたら、在学中の時の交際相手といまも遠距離恋愛しているようだった。
少しあか抜けて、その分やつれた奴は、当時部活が気に入っていて、けれども最後は少しだけ疎遠になってしまったのだった。
学生の時、いい年をして科学館に行ったことをふと思い出した。科学なんて何一つ興味ないまま、ただ雰囲気だけでプラネタリウムを何人かで連れ立って見に行った。そのうち一人は公務員になり結婚して、俺と奴は今日も同じ電車に揺られながら、もう一人のその後をここだけの話しという前置きのもと、伺い知った。
今年、生まれたばかりの子を一人で育てているらしい。今は育児をして、いつか資格をとって働くらしい。
たったそれだけの近況のなかにどれほどのため息があったのか、想像してみた。
あの日、一緒に偽物の星空を見上げた我々は、いまは砕けた硝子のように散り散りとなって、それぞれの片隅にて佇んでいるんだ。
言葉はありきたりに整えて、それぞれ別れた。
それがお互いにできる最善策だったのだ。
【おわり】