児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

ありふれた命

2023-09-30 | 物語 (電車で読める程度)
ありふれた人生を探していた。

傷つきたくないから

だとすれば、どうすればよかったんだろうか。

おめでとうと二人に伝えた帰り道。

これからたくさんの幸せを掴むんだろうとおもった。

息子や娘がいたら、息子の言葉に肩を震わせる父や、娘のサプライズに涙する母になるのだろう。


ありふれた人生はかけがえのないほど繊細で、凡庸な僕らにはあまりにも大切だった。

そしたらさ。と美しい木造建築のなか。ようやくいま、また資格を取ろうと思うんです。と話す後輩は当時の彼と入籍するつもりだと教えてくれた。何かが上手くいかなくて、それから再起した意思がみえた。

じゃあさ。と宴のなか。仕事を辞めたというふたり。海外をみて、あるいはスポーツに勤しんで。それから100社以上面接をして。ようやく掴んだ明日の糊代。車輪を阻む段差があることが何よりも乗り越えがたい壁なのだと思い知らされたようだった。
所詮文系だからと話す声に耳を澄ませた。

ありふれた話といえばそれまでなんだろうか。


ならさ。と薄暗いバスのなか。昨晩ハネムーンから帰国した彼女の幸せな話はそれまでの恋の裏切りや愛の分裂を乗り越えてきたひとつの結末のようだった。ひとつ物語を終えた彼女は「生きるのに必死やった」と最後に教えてくれた。

ありふれた幸せ、ありふれた不幸なんていわないでほしい。

歴史に名を刻まない僕らは不幸に打ちのめされ、幸せに救われ、この手を握る愛しい人のために捧げるのだ。


それをありふれたなんて言わないでほしい。


【おわり】

残暑の宵

2023-09-28 | 物語 (電車で読める程度)
上手く話せない。
肩を落とす。

雑談って難しい。背中で聞く話題。無視されたんじゃないかと小心者は背中も小さくする。お金のためとはいえ、傷ついてないふりは必要なんだ。

帰り道、金木犀が秋の物悲しさを伝えていた。


悲しかった。喉に詰まったままだった。

アルコールで、煙草で、友人で、音楽で、
こんな夜をやり過ごしていたっけ。

それなら、これからどうすればいいんだろう。愛は夜と添い遂げられるのかな。
忙しくて忘れさせてはくれるのかもね。

夕焼けをみたい。久しぶりにみる藍桃色の空は綺麗なんだろうな。


ただひとつわかることは家族を幸せにするのか、不幸にするのかは自分次第なのだという啓示だけだった。

身も心も貧しくなれば、残暑の湿気のような理不尽がいつまでも纏わりつくのだろう。

だからって絶対なんてどこにもないし。


難しいな、簡単だけど。

【おわり】


29歳の二人へ

2023-09-04 | 物語 (電車で読める程度)
29歳のいーちゃんとおんちゃんへ。

いまあなたたちがあの交差点の向こうにいたのなら、父のことをどうおもうかな?

いーちゃんとおんちゃんはどんな大人になってるのかな?

どんな大人になっていたっていいんだけどね。

父としてはやっぱりちょっと恥ずかしくて敬語になっちゃうかもな。話す女性ってママくらいだからさ。すごく大人びていて、ママのような聡明な二人にきっと圧倒されちゃうんだろうな。

なんていうんだろう?子どもがふたりいるんですよって携帯で写真をみせたりするのかな。一応ここで働いていて…とか別に興味ない仕事の話とかするんかな?

それともママとの出会いとか二人の話をするのかな?うまく話せるやろうか…
がっかりされちゃうかなぁ。

二人がどんな大人であっても大切なことは変わらないよ。

ただせめてもの希望を言うなら、ふたりとも今までの人生いろいろあったろうけど、まぁなんだかんだ悪くなかったなってさっぱりした顔で教えてくれたらそれでいいと思ってるし、そう祈ってる。

実を結んでほしい。

どんな時間も経験も、最後は無駄にならないのだと、父の父が言っていたように、
あるいは点と点を繋げるのだという先生の金言のように、

実を


【おわり】