かんごくらしいよ。ここって。
ぼくらはわるい人だからここにいるんだ。
あーあ、たいくつ。はやくここからでたい。いらつく。きしょくわるい。
僕のとなりに座る彼は看守に気づかれないほどの小声で教えてくれた。もとい最後はひどい言葉を吐き捨てられて僕自身傷ついた。(彼が僕に言っている訳ではないとわかっていてもつらかった。)
視聴覚室へ向かう。僕らはまるで軍隊のように行進して、決められた席につく。
そこで、すこし前に流行ったアニメをみた。優等生の振る舞いを崩さないやつがボロボロと泣いていた。
そこまで感情が昂るわけではなかったがそこそこ面白くみていた。けれども他のやつになめられないようにすこしつまらなそうな表情に努めた。
ある日、昼食後の時間に年長者が突然話しかけてきた。肉料理のおかわりをこっそり僕が譲ったことに気づいたようで、少しばつがわるそうに受け取っていた。その埋め合わせだろうか。
ここがどこかしってるか。
かんごくなんでしょ?
ちがうよ。
じゃあどこ?
ここは船のなかなんだ。
なんで?
だってくもがずっと左に流れているし、たまに潮のにおいが風にのってくる。
そう?
僕には生き物の腐った臭いかとおもったけれど。年長者は随分と自信満々にいうものだからあまり口を挟めなかった。
もし、その話が本当なんだとすれば、僕らはいったいどこへ連れていかれるのだろう。窓のない部屋で外の波を感じようとしてみたけれど、よくわからなかった。
少なくとも、ここにいる理由を僕らは互いに知られてはいけないきまりだった。
僕らは互いに本当の名前さえ知らずに出会い、ある日突然いなくなる。知らない間に看守に呼ばれ、それから戻ってきたりそれっきりだったりする。
壁に囲まれた外は学校の運動場のようだった。