児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

歩く亀より脱兎となれ

2016-02-10 | 物語 (電車で読める程度)



ふらふら歩いていた。大学とは真逆の方に。わたしはいったいなにをしているんだろう。河に沿って歩く。天気はいい。体調もいい。けれどわたしの体は重かった。わたしを中心とした半径3cm以内だけ虚ろな世界が広がっている。外は柔らかな日射しが降り注いでいるのに、わたしのもとには冷めきって届かない。わたしは今日もテストを休んだ。これまで頑張って出席した単位すべてが吹っ飛んでしまった。もう、なにもしたくないのだ。頭の隅でそれは嘘だとかなんだとか言っている自分がいた。けど、またどうせいつもの前頭葉のお節介だ。どうでもいい。ブリキの兵隊のようにアタシは足を動かす。お爺ちゃんが散歩してて、テストのない大学生がイチャイチャ楽しそうにしていた。別にいいのだ。ヨソはヨソ。ひとりぼっちの行軍。わたしはこのままどこに行くんだろう…。水は低きに流れるのなら、わたしもこのまま流れていっちゃうのかな。突然お茶が飲みたくなってベンチへ座った。ぺちゃんこのリュックからペットボトルを取り出して、グビグビ飲む。一瞬だけ何かが満たされたかけて、やっぱり何も満たされなかった。ついでに少しだけ本を読んでいくことにした。リュックの奥底から取り出すと、折れた染みだらけの表紙をなぞった。それはわたしが好きだった本。ワクワクして止まらなかったページを今はゆっくりとめくる。適当に開いた文を殊更ぼんやりと眺めた。目の前には一級河川が青空の雲と共に左へと流れてゆく。2,3ページ程読んで脇に置いた。つまんないお話し。足をぶらぶらする。わたしは再び歩き出した。

つまんないお話しをしてあげる。わたしはわたしの脳幹へと語りかける。わたしにはおそらく唯一の友達がいた。とっても地味で優しい子。おとなしくて控えめなその子とは小さい頃から一緒だった。唯一そう、わたしとまだ友達でいてくれる子。昔わたしには「お友達」がたくさんいた。けれどそれはあっという間の現象のようなものだった。嵐が過ぎれば空は晴れるように、気がつけばわたしのもとにはなにも残っていなかった。

「子どもは風の子…」

少しだけクスリと笑った。

「それ、使い方違うんだよ。」

そんなご指摘が聞こえた気がして、つい可笑しかったのだ。唯一の友人は度々そうやってわたしの間違いを正してくれた。それがなんだか楽しかった。学校は当然窮屈でよくわからないことだらけだった。勉強よりも落書きのほうに熱中した。「お友達」同士のルールはシンプルで、たった1度の違反でレッドカードだった。当然それはとても高度なプレーを求められたし、時には不本意なチームプレーを強いられた。けれども元々わたしにそんな器用さはなかった。レギュラー確保に向けてギリギリの日々を送っていた。ある日、上手くいかないことが辛くて、わたしは簡単にそこから眼をそむけた。けど、唯一の友人はそんなことをしなかった。ただただ言われたことを、先生や「お友達」に言われたことをやり続けていた。

例えば野球選手ならホームランを打てば、それでよかったのかもしれない。わたしは9回裏二死までバッターボックスに立てない臆病者だった。幾度も絶体絶命の窮地を火事場の馬鹿力によって引き分けに押さえ込んできた。けれど最近その力さえも馬力不足で、わたしの人生はジリジリと負け越しはじめていた。点差が開くにつれわたしは自分に絶望した。あの子は空振っても、ピッチャーゴロでも、ただの凡フライでもすべての打席に立ち続けた。いつの間にかあの子とわたしとでは比べ物にならないほどの差ができてしまった。今、わたしはあの子に会うことがこわい。今の有り様をみてあの子が唯一でも友人でもなくなってしまうことがこわいのだ。






さてと。わたしはこのお話しに終わりをつけるためピタリと歩みを止めた。
困ったもので、それでもわたしは全く懲りてないのだ。


どうせもう追い付けないなら

歩く亀より脱兎たれ。

わたしは先の対岸へと伸びる橋を目指して駆け出した。



【おわり】

ボッコくん

2016-02-04 | 物語 (電車で読める程度)

「まるでスーツに着られているみたいだね。」
彼女の感想はボクをヘコませるのには丁度よかった。入社式以来着ていないスーツは体に貼りつくようでどうも落ち着かない。安物の銀時計も先の尖った革靴もボクを社会人として鋳造するための工程だ。
「キチンとした大人になるんだ。」
「けど、ネクタイの結び方なんかヘンだよ。」
手際よく彼女の両手が修正してくれた。
「緊張する。」
「緊張するね。」
「今度こそ、キチンとした大人になれるかな。」
「今度こそ、キチンとした大人になれるよ。」
「毎日20分前には出社して、常に余裕のあるそんな大人に?」
「毎日20分前には出社して、常に余裕のあるそんな貴方に。」
どうやったって彼女には勝てない気がした。ボクの弱さはきっと全て見透かされていてるのだろう。

「…ありがとう。」
こんなボクを信じてくれて。

「ありがとね…。」

どちらが先でもなくチューをした。

「いってきます。」
「いってらっしゃい。」

玄関を出た。ぴかぴかの靴が歩く度にパカッパカッと小気味よく鳴る。リズムに合わせて鼻歌なんかつけてみた。
「うん、大丈夫。」
信号を渡る。
彼女の顔が思い浮かんだ。


ボクは人よりも穴凹らしい。
それはつい数日前にわかったことだった。ボクはそれまでまん丸だと思っていた。だから上手に坂を転がることも、キチンとしたボールになることも当然出来なければいけないと思っていた。けどそれは単純なことではなくて、ボクは幾度も自分を磨り減らして丸くなろうとした。
「実はボコでした。」
お医者さんはボクをボコだと言った。それを聞いて彼女は控えめに怒ったけれど、ボクは涙が出るほど嬉しかった。


あれからボクはボコとなって暮らしている。それまでボクはボコがとっても嫌だった。もちろん昔はボコって名前はなかったから、ボクはボクが嫌いだった。


ボクがボコだとわかった日

「…騙してごめんね。」

ボクはたまらず彼女に頭を下げた。

リコールなら今がチャンスだよって伝えなくちゃいけないと思ったからだ。



さよなら。
バイバイ。



そんな簡単な言葉さえ後回しにしてしまうボコにまた嫌気がさした。
両足の爪先をいっぱいにらんだ。唇は噛んだまま強張って固まる。絶対に彼女の顔を見ちゃいけない。
ボクはこれまで駄目なヤツだった。
そのたびにボクはボクに赤点をつけて、仕方ない仕方ないと唱えて気を紛らわそうとした。

けれど、今回は駄目だ。
顔を上げた先にある現実を受け入れることだけは出来そうになかった。


そのとき


両頬にあったかい手のひらがそえられた。

次に目と目が向きあった。


「そんなことないよ。」


最後に彼女がボクのボコにぴたりとあてはまった。





そこでようやくボクは確信したんだ。

たとえ穴凹で丸くはなかったとしても
ちゃんと大切な人を守れる大人にはなれるんだって。
なにがなんでもなって見せるんだって。



だから、そう

彼女が「彼女」じゃなくなったとき

この人に全部話してみよう。










あなたと
出会って
はじめて
大好きになれた自分 を。







【おわり】



元気のでる方法

2016-02-02 | 日記

元気の出る方法ってたくさんあると思います

方法は人それぞれだと思いますが

自分の場合、「靴下を履くこと」が一番重要です

家に帰ると、途端になにもできなくなってしまいます

それもこれも靴下を脱いでしまうからかなぁと推察してみたりしてみます

さて、そろそろこのブログも一年近くになります

なかなか長いお話を書ききることができず、

いつも公募の締め切り日間に合わず涙を飲んだ日も少なくありませんでした

去年はちょっぴり気分が沈んだときもありましたが、

そんなことも含めて毎月ひとつずつ(9月を除いてですが…)お話を更新できたのはよかったかなーと思っております

お話を自分で読み返して「あぁ、このときこんなこと考えて書いてたなー」と振り返れたりもして

ちょっと面白かったりします

今後も気長にやっていきますので

どうぞよろしくお願いします