ギターを弾いた。ヘタクソだったけど、
和音の響きだけが、僕らを癒した。
すきな曲をいっしょに弾いた。
上手だった。つい夜に助けてと叫びだす口から恋の歌が零れた。
しかめた顔で爪弾くアルペジオ。まるで自分の存在をそこに定めているみたいだ。
君の愛機はどんな傷があるんだろう。
チェスをした。ヘタクソだったけど、
相手を負かすための知恵比べだ。
腕っぷしなんかよりもよくない?
と言いたかったけれど、たぶんそういうわけじゃないんだろう。
将棋をした。なかなか勝てなかった。
何度も受ける挑戦、たくさん本を読んで君は強くなっていった。
囲碁をした。ちっとも勝てなかった。
君にたくさん教えてもらった。いつもうまくいかない僕らははじめて気持ちが通じあった気がした。そしてはじめて囲碁が楽しいとおもった。はじめて最後まで囲碁をさせたのが君でよかった。なにひとつ違わない時間だったよね?
トランプをした。やっぱりあんまり勝てなかった。ハートもダイヤもあるのに僕らにはなんにもなかった。だから真っ黒な手札からせめてもの勝ち筋を摘まんだ。
遊びが心を写し出す鏡かどうか知らないけれど、いまはそれでいいとおもった。
【おわり】