児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

浪漫少年

2024-10-31 | 物語 (電車で読める程度)
男ってボケナスだ。

性別がってわけじゃないけれど

突き抜けた馬鹿馬鹿しさを

澄み渡る藍色の情景を


自己中心的な身勝手さを、

ささやかな矜持を

ぶちまけて、書き散らしたい。


白粉の似合うあなたたちへそれを手向けにしたい。


【おわり】



月夜に弔う

2024-09-23 | 物語 (電車で読める程度)
通夜の席で坊主が詠む経にはなるほど相応の雰囲気があった。

モニターに写る故人にはなんの想いも寄せられないし、棺の人形に向けて語る言葉もない。どうせ恨み言は生きてるうちにすっかり伝えてしまったから。

ぬるいビールを煽る。宵の席を後にしたらなぜだか怒りが湧いた。不思議だったが腹立たしかった。融通の効かない父親よりも、孫を見世物のように言ってしまう母親よりも、何かにつけて誇示する叔父叔母よりも、ここにいない従姉弟よりも、世間話が上手なヤニ臭い再従兄よりも、話しをうまく流せない弟よりも。
つまらないプライドが傷つけられたような気になっている自分よりも。
話題にもならない故人よりも。

もっと違う何かが喉につっかえて苛立ちが募った。だけどそれが何かわからなかった。

夜を歩いた。きっと今宵は残された人たちのための席なのだ。頭ではわかっているつもりだった。だからもう一度念仏のように唱えた。

この月は残された人たちのための光なのだと。

そして僕は自分の今の人生に誇りをもっていて、きっと今も帰りを待ってくれている家族が大切で仕方ないのだと気づかされたのだった。



【おわり】



近畿生存圏日記 8/9

2024-08-09 | 物語 (電車で読める程度)
徒労感にうんざりした。
エリア3は異常気象から人類を保護するため、気象工学による人為的な気候調整により厚い雲に覆われていた。これは地球の温度を一定に保つためであるといわれているが本当のところはわからない。
ただ、この雲によって日中は憂鬱な灰色であり、夜は星もない抑圧的な闇を生み出していた。

夜の退屈な町並みを眺めていた。ロジョーは相変わらず戻ってこなかった。私は自動小銃を握り防衛線の哨戒業務に従事していた。

「こいつは使えないクズだ。」同僚の不眠者に自動小銃の扱いでやっかまれた日、私は以前ロジョーと寝た後の会話をふと思い出した。「ねぇ、なまえとかないの?」
それまで「おまえ」や「おい」「こいつ」としか呼ばれていなかったので、名乗る名がなかった。
「なまえをつけてやろう。」
ロジョーの口角がいたずらっぽく上がった。整った顔立ちに人間味が沸いた。
「ニコリ。」
「ニコリ?」
「うん。おまえのなまえ。笑ったらかわいいから。」
当然笑った記憶などなかった。ロジョーがいないところでも、私は笑うことなどない。無表情を装うというよりもなにも感じないのである。
「ニコリ?」
ロジョーが私の顔を覗き込むようにしてしゃがみこんだ。
「だいすきだよ」

そんな言葉がまやかしであることはよくわかっていた。
ロジョーがほしいのは以前私が気前よくくれてやったハノンなのである。
それをかみ砕き、夢現のまどろみを噛み締めるのだ。私はあくまでその手段であり、ロジョーの言葉もそのための手段なのである。


それでも私はロジョーを抱き寄せて涙をながしていた。そのすべてが他の誰でもない私自身、驚くべき反応だった。


ロジョーのいない部屋で世界から息を潜めるように目を閉じた。

ニコリ、だいすきだよ。

あの言葉をなんども耳に溶かしながら。

無題

2024-07-14 | 物語 (電車で読める程度)
枕元で最期に全部いってやった。

これまでの一切合切を

言い返せないことをいいことに

全部ぶちまけてやった。

努めて穏やかに、怒りを滲ませて
それでもどうか伝わりますようにと



つい笑ってしまうきみはよく勘違いされてしまうし、よう巻き込まれてしまうし、よくふざけるなと怒られてしまうという。

きみはきっと笑わせる側じゃなくて、わらってあげる側だから、笑ってほしい人のエールを送れたら素敵だねといってみた。
少し出任せだっただろうか。ここでは笑ってもなんでもいいよ。と窓のない部屋。かしこまるきみ、はじめて言われましたと言ったきみはわらってなかった。

数秒間のエールとはなんだろうかとおもった。お勧めだと教えてくれたあのバス停だろうか。コーヒーをすすって何者になれないと足掻く背中だろうか。あるいは賞をとって夢を叶えた友人だろうか。自分のことのように嬉しくて嬉しくて嬉しくて妬ましかったはずなのに、そのなかには何もはいっていなかったんだ。

それでも数秒間のエールになるのだろうか。


異国からやってきた知人は次の転職でわらしべ長者となりそうだった。

私の誇りとは保険証か?家族なのか?
ぐるぐると回っている。

楽しそうにおうまさんに乗るいーちゃんははじまるまでは少し不安そうで
それでもそばを過ぎる度に手をふってくれた。ボールプールに沈むおんちゃんは今日一番の笑顔だった。そんな情景を思えば明白だった。

【おわり】