まじで、ありがとうございました。
彼のことはなにも知らなかった。
この光景は二度目らしいのだが、
さっぱり身に覚えがなかった。
高い身長を少し屈めて、
歩く彼のことなんて
知り合いから楽器を貰ったことと
名前が変わったことくらいだろうか。
通りすがりの私なんかがおこがましいが
彼の時間のうちなにか役に立てばいいとおもった。
たとえば
風邪かと訊ねて返ってきた答えが
いやこれ、せいしんの薬っす。なら
その時どうしてもっと気の利いたことが言えなかったんだろうか。
それからわざわざ手紙を寄越してくれた彼はそれとは別に私達ではない人へ宛てた手紙があった。
彼にとって、その出会いはとてもとても大きなものだったんだろう。
よかった。
そんな日々だ。
【おわり】