児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

添い寝と赤いイルカ

2024-07-14 | 物語 (電車で読める程度)
添い寝と赤いイルカ

刃物男の夢

100万円の賞金は儚いウソ

蜥蜴とエイの手真似

頭では爆発するほどわかっていることでもどうしてもできないというあなたは

あるいはやめてとはなせと叫ぶきみが

ベッドや埃や水鉄砲でじゃれる夕暮れ

暗い部屋でお茶を飲むきみが

あるいは最後にあなたがかけてくれた布団が

どうか、その先に繋がりますようにと願わずにはいられなかった。


【おわり】


パティシェ

2024-06-28 | 物語 (電車で読める程度)
いつになったら、オレは夢をかなえられるんだろうか。

賑わう劇場のなか、ゲームソフトを指でなぞった。形に残るものが羨ましい。
二人とも夢を叶えた。
オレは夢以外のほとんどを手にした。

ただ順番が違っただけなんだ。
次はオレだ。

嘯くわりに自分の夢を一番信じていないのはオレ自身だ。



死ぬ、らしい。寿命だ。大往生だ。
ようやく長い旅が終わるんだ。
解放されるかどうかは、しらん。
両手を拘束され管だらけになった様相に、
あるいはグループホームの食堂でひとりぼっちの背中を想像してもどうしたって「可哀想」とは思えなかったのは感性が乾いてしまったからなのだろうか。
この感受性こそ、過去大切にしたかったのではなかったか?

スマートな近所のお兄さん達は子供部屋おじさんで、正社員の先輩は熟年離婚して、勝ち組の常連さんは難病で介護を受けているらしい。

じゃあさ、かぁさん。オレは立派にやっているだろうか。これまでの何もかもが報われたと喜んでくれるだろうか。


オレだって運を手繰り寄せてここまできた。おかげさまだ。
なら新譜を貪りながらそれでも心が動ないかとじっと待っている。

こんなオレはなんなんだろうか。
毒入りのケーキもいまは作れる気がしない。


【おわり】


爪爪

2024-03-12 | 物語 (電車で読める程度)
やけに伸びた親指の爪。
そっと手につつんで隠していた。

いつか父に切ってもらうその日まで

異形の爪をさらしても、「忘れていました」となんとか守ろうとしていたのだった。


約束のときを






そのあと、整った爪をみせてくれた。
「切りましたよ!せんせい!」

笑顔のあなたにいった。
「ごめんな。なにも知らなくて」

はにかんだ笑顔で応えてくれた。


【おわり】