いつになったら、オレは夢をかなえられるんだろうか。
賑わう劇場のなか、ゲームソフトを指でなぞった。形に残るものが羨ましい。
二人とも夢を叶えた。
オレは夢以外のほとんどを手にした。
ただ順番が違っただけなんだ。
次はオレだ。
嘯くわりに自分の夢を一番信じていないのはオレ自身だ。
死ぬ、らしい。寿命だ。大往生だ。
ようやく長い旅が終わるんだ。
解放されるかどうかは、しらん。
両手を拘束され管だらけになった様相に、
あるいはグループホームの食堂でひとりぼっちの背中を想像してもどうしたって「可哀想」とは思えなかったのは感性が乾いてしまったからなのだろうか。
この感受性こそ、過去大切にしたかったのではなかったか?
スマートな近所のお兄さん達は子供部屋おじさんで、正社員の先輩は熟年離婚して、勝ち組の常連さんは難病で介護を受けているらしい。
じゃあさ、かぁさん。オレは立派にやっているだろうか。これまでの何もかもが報われたと喜んでくれるだろうか。
オレだって運を手繰り寄せてここまできた。おかげさまだ。
なら新譜を貪りながらそれでも心が動ないかとじっと待っている。
こんなオレはなんなんだろうか。
毒入りのケーキもいまは作れる気がしない。
【おわり】