雨の日
高いスーツもブランド品も、
僕には不釣り合いだけど、
君になにかとっておきのものをわたしたいから、ここまでやってきたのだ。
僕の生活圏の中のいっばんおおきな本屋さん
そこで探すのはかわいい便箋
君の顔がほころぶ便箋だ
そこに僕のたどたどしい字で、
君の26回目のお誕生日をお祝いしたい。
きらびやかな店内の
すみっこにあったくまの便箋。
ひょっこりでてきたくまさんに
君が喜ぶ姿が見えて
うれしくって握りしめた
なのに、
お会計をするとき
店員さんはすごくしゃんとした人で
いろいろポイントとかきかれて
あわてて買ってつかんだはずなのに
帰り道でなくしたことに気がついた
君に渡したとき
これ、かわいいね
ありがとうっていってほしかったのに
なんでなくしちゃったんだろう
よれた革靴に雨がしみこんだ
【おわり】