児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

パティシェ

2024-06-28 | 物語 (電車で読める程度)
いつになったら、オレは夢をかなえられるんだろうか。

賑わう劇場のなか、ゲームソフトを指でなぞった。形に残るものが羨ましい。
二人とも夢を叶えた。
オレは夢以外のほとんどを手にした。

ただ順番が違っただけなんだ。
次はオレだ。

嘯くわりに自分の夢を一番信じていないのはオレ自身だ。



死ぬ、らしい。寿命だ。大往生だ。
ようやく長い旅が終わるんだ。
解放されるかどうかは、しらん。
両手を拘束され管だらけになった様相に、
あるいはグループホームの食堂でひとりぼっちの背中を想像してもどうしたって「可哀想」とは思えなかったのは感性が乾いてしまったからなのだろうか。
この感受性こそ、過去大切にしたかったのではなかったか?

スマートな近所のお兄さん達は子供部屋おじさんで、正社員の先輩は熟年離婚して、勝ち組の常連さんは難病で介護を受けているらしい。

じゃあさ、かぁさん。オレは立派にやっているだろうか。これまでの何もかもが報われたと喜んでくれるだろうか。


オレだって運を手繰り寄せてここまできた。おかげさまだ。
なら新譜を貪りながらそれでも心が動ないかとじっと待っている。

こんなオレはなんなんだろうか。
毒入りのケーキもいまは作れる気がしない。


【おわり】