楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

北極圏の汗臭い生活ーシロクマだけじゃないよ(お題)

2006-08-09 09:11:51 | 自然
20年以上前、私は北緯70度の北極圏の島スピッツベルゲンで45日ほどキャンプをしたことがある。私の専門に関係する調査のお手伝いであった。氷河を溶かして料理をし、燃料が貴重なので氷河の水で頭を洗う。
「ひゃー!ひゃっこい!」
針で刺すように頭の芯までしびれ上がる!
でも、そのあとにほっかほかとなり、なんとも気持ちがいい!
そんな、キャンプへひょっこり、かわいいお客さん。
北極きつね。夏であったので毛は銀色。テントの周りをくんくんとかぎ回る。
それから毎日、くるようになった。
「おーい!シロクマに気をつけろよ、それからフェンスに」
キャンプのテントはシロクマから守るために、爆竹しかけのフェンスでかこってある。
それに触ると爆竹が破裂、シロクマが驚いて逃げる、あるいはそれに気がつく我々が銃を取り出して対応できる準備の時間をかせぐためである。
それを使うことなど一度もなかった。
しかしである。
調査の地を変えるために、ベースキャンプを数キロ移した。
そこは、さまざまな目的で集まる世界からの調査隊が集うキャンプ村。
数日が過ぎて、ノルウエーの研究者が
「おーい!シロクマがいるぞ!」と双眼鏡を覗いている。
「あすこってお前らがキャンプしていた所じゃないか?」
双眼鏡で覗くとまさにそこ!
この地は木など1本も生えてはいない。そして見渡す限りの眺望。
そのようなところでは大きさの基準となるものがないので、近く見える。
大きさが正確にわからない。
でも、私たちはそこで2週間以上滞在したので、近くの石で大きさが分かる。
「でかい!有に2メートルは軽く超える!しかも2頭!」
その大きさに身震いした。
「なぜ?そこをうろうろするんだ?何も残していないはずなのに?」
その地のキャンプはゴミの1つに至まで完全に撤収したはずである。それが調査の厳格なルールである。
が、残してきたものがあった!
キャンプにはトイレがない。そこで地面に長い溝を作り、用を足した後に順番に埋めていく。あるいは石をかぶせていく。使ったティッシュも見えないように。
さもなければ大変である。ランダムにしてしまうと、「いいところはないかな?」と探しまわり「あった!」と思うと他人のものや自分が以前使った場所になってしまう。覆う適当な石などそうあるものではないからである。
2週間分、3人の置き土産。それがシロクマを引きつけたのであろうか?
「いやはや、居る時ではなくて良かった!」

さて、北極にはその他にいろいろいる。なんと言っても楽しいのはトナカイ。
「おー!サンタクロースのそりを引いている奴だ!」
キャンプの近くまで来て、遠巻きにこけをはむ。
歩いているとそのトナカイの角がいくらでも落ちている。
毎日キャンプへの帰り道、集めた。20本以上になった。
日本へ持ち帰りたかった。
でも、そのためには動物検疫を通過しなければ駄目だという。
そこで子供トナカイの小さくてかわいい角を、こっそりと荷物の中に隠してもって帰った。
(もう時効だね)
いまでも大事な思い出の品である。

トナカイも食べた、アザラシも食べた。
トナカイはおいしい。アザラシはクジラの肉のよう。
夏は夜がない。真夜中の太陽はちょっと傾くだけ。
夜がないって、いいね。日没が近いと焦る必要がない。時の流れが緩やかなのである。
からだは少々疲れるが。

この自然にあらがわず、その流れのままに生きる。自然の恵みって最高だね。
シロクマって、対策さえとれば、怖いもではないんだがね。
今、北海道にいて、ここにもヒグマがいて、みんな怖がっているが。
むこうはもっと怖がっているんだよ。
リラックス、リラックス。そうすると、どこでもみんな楽しいよ。
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