楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

「ネガとポジ」

2006-04-09 11:01:00 | 人間
 ネガとポジ。英語でnegativeとpositive。写真フィルムはネガといいますね。「反と正」あるいは「否定と肯定」ということですね。

 外国の学会で研究発表をすると、質疑応答に入る前、講演が終わった後に必ず拍手。それがどんな人にでも、である。ずいぶん前に、私が学位を取った後、初めてアメリカで発表をした時、このことに驚くとともに、とてもうれしかったことを思い出す。それに対して、日本の学会では講演が終わってもシーン、と静かだ。何か暗く、居心地が悪い。

 その後の質問の仕方も違う。日本ではいきなり、「そこの何々はおかしいのではないか?その論理は変だ!」とほとんどネガから始まる。それに対して、西欧の学会での私の経験では、「そこのところは大変新しくて面白い、ところでーー」とまず、ポジから入る場合が多い。特に大学院の学生や博士になりたての人など、新人に対しては大変、丁寧である。
 
 誰だってほめられるとうれしい。こころを開く。その後に、「だけどね、ここがちょっとおかしのでは?」「ここが間違っていないかい?」と質問されれば、落ち着いて素直に答えられる。そして、そのように質問をされると「Oh! It's a good question!]といってまずひと呼吸、冷静な議論が展開できる。質問をされた方もする方も、儲かるのである。すなわち科学は前へ進む。日本の学会の場面のように、いきなり頭からネガで否定されれば、誰だって「この野郎!」とこころを閉ざし、まともな議論になりにくい。質問をする方も、答える方も感情が入る場面も多く、時には「切れる」。そうなると、人間関係までおかしくなり、もはやまともな議論は成立しなくなる。
 
 日本語にいい言葉がある。「正反合」。まず「ほめ、いいところ見つける」。その後に「不足するところ見つける」。そして、「いいところを牽引力として、不足するところを補い引き上げ、調和した発展をはかる」。この順序が極めて大事。反正合ではない。ギリシャ・ローマ時代のエロクエンス、弁証法はそのことを教えていた。そして18世紀のドイツ、悩める偉大な哲学者、ヘーゲルもそのことを再発見した。すなわち、このことは人類が前へ進むために発見した偉大な知恵なのですね。
 
 「ネガからポジ」ではなく「ポジからネガ」へ。この順序は科学の前進、人間関係、子育て、友達作り、ペット育て、あらゆるものに通じる「一般則」ですね。「ほめられる」と誰でもうれしい。頭の中でドーパミンがあふれる出るのですね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 心に包帯を | トップ | 教授の愚痴 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

人間」カテゴリの最新記事