駅に向かう通りを彩る紫陽花。
人の頭のようにこんもりと咲く花は不思議と重苦しくはない。
小さな花の集合体だからだろうか。
一株でもきれいだがたくさんあるとまた楽しい。
一つ一つ微妙に違うし、毎日色が少しずつ変わっていくのも面白い。
散歩のばあさんが楽しそうにぽんぽんとその頭を優しくたたいている。
わかるわかる。
オレもそうしていたのだ。
さわらずにはいられない。
近くから一瞬強い芳香がした。
あったあった、やはりクチナシが咲いている。
こういう強い匂いはキンモクセイ、沈丁花、そしてクチナシだ。
この6月の湿った暖かいい風に乗ってくるのはクチナシ。
文化祭の頃、からりと乾いた風とやってくるのはキンモクセイ。
沈丁花は寒い季節の一瞬のご褒美のように香る。
昔の記憶や思い出は音楽とワンセットになって思い出すことがあるが
花の匂いは季節の風や湿気、気温とワンセットになっている。
但しあまり近寄るのは危険だ。
匂いが強すぎる。
少し遠くからふわっと匂うのがちょうどいい。
ベランダでは切り戻した日々草が新しい花をつけてくれた。
「こんもりと大きな株に育てるには切り戻しが必要です」とヤサシイエンゲイに書いてあった。
買って来たばかりのかわいい花を茎ごとちょん切るにはものすごいマイナスのエネルギーが要った。
「こんな健気な子に手をかけていいものか」
断腸の思いで決行した。
今をばかりに咲き誇る花が一つも無くなって愕然とした。
しばらく後味がなんとも悪かったが2週間ほどでかなり咲いてきた。
確かに横に大きくなってきている。
断腸の思いは希望へと転換された。
ああ、よかった。ほんとによかった。
チラ族に新しい花が咲いた。
地味な花ではあるがもともと無機質な趣のヤツらなので花が咲くとかなりテンションが上がる。
植物界のクールビューティーだ。
戸外もベランダも花に囲まれいい感じだ。
雨が続くと気が滅入るが、逆に元気になるヤツらもいる。
雨上がりの紫陽花の群れ。
皆うれしそうだ。
梅雨には梅雨の楽しみがたくさんあるものだ。
嗚呼、ボタニカル!