ラン族とは手を切ろうと思っていた。
なのに。
高価なバンダが見切り品の棚に並んでいたのをオレは目ざとく見つけた。
花を見るとまだしばらくは保ちそうだ。
ただ肝心の値札が張っていない。
店員に尋ねた時点で既に決意は崩れ去った。
「満開も過ぎているので…千円でいいですよ」
安い。
見切り品でも2千円と値踏みしていたオレは動揺した。
「買うしかない」と動揺は決意に変わった。
手を切る決意が手を握る決意に変わったのだ。
バンダは美しい。
扇状に開く個性的な葉っぱ。
長く伸びた根は空気に当てて育てるためむき出しだ。
花は紫ではなく、白い。
うっすらとピンクが滲む花びらは美しい。
その淡い色合いとマッチして控えめにいい匂いがする。
もうだめだ。
手を切れない。
ラン族はあざとい。
縁が切れそうで切れない腐れ縁の女みたいだ。
やつらは美しさといい匂いでオレを引きつける。
かくして1年中面倒を見ないといけない手のかかるやつがまた増えたのである。
ああ、憎らしい。
嗚呼、ボタニカル!