お堅いイメージの公務員だけど、地域では柔らかく活動する。そんな「二刀流」職員が近年増えている。役所の外での経験は、職場での仕事にも生かされそうだ。奈良県生駒市役所は、こうした職員を後押ししようと、独自基準で報酬を受け取ることも認めた。

 大阪・阿倍野あべのハルカスを望む桃ケ池で5月、テレビ局も取材するユニークな催しが開かれる。

 池のレンコンを誰が多く取るかを競う「レンコン掘り調査選手権」。主催する地元若者グループ「あべ若」のリーダーが、生駒市環境モデル都市推進課の竹田有希(ゆき)さん(34)だ。

 ログイン前の続き阿倍野出身。大学院生だった6年前、区役所の「若者が担うまちづくり推進事業」に参加し、当時のメンバーであべ若を結成した。

 レンコン掘りには、かつて澄んでいた池の環境を改善する機運を盛り上げようという目的もある。不法投棄されたごみも引き揚げるのだ。これまでに4回開催し、延べ約60人が参加した。

 竹田さんは、活動を通して学んだことは多いと語る。「若い世代を地域活動に巻き込むには、面白いことを基本に後から社会性を足すということが大切です。メンバーには経営者もいて、違う立場の考えに触れることで自分自身の幅も広がりました」

 経験は仕事にも生かされた。市と大学生が協働して取り組む催しをしたり、庁内の勉強会を若手職員で企画したりしてきた。

 地域活動をする職員を、市役所も支援している。地方公務員法では、市職員が営利企業に従事したり、報酬を受け取ったりすることは制限されているが、市は一昨年に独自基準を定め、公共性のある組織であれば報酬を受け取ることを認めた。昨夏には、市外の活動も含まれるようになった。

 地域活動は休日が多く、準備にも時間がかかる。「金額としてわずかな報酬でも、活動を継続するモチベーションになります」と竹田さん。あべ若ではイベント出店で得た収益の一部を、報酬として数千円ずつ関わったメンバーに支払っている。竹田さんは公務員だとの理由で断っていたが、昨秋、市の制度で受け取りが認められるようになった。活動の幅を広げようと、新たな法人を設立する予定だ。

 市によると、報酬を得て地域活動をする職員は、竹田さんを含めて7人。命の大切さを教える出前授業をするNPO活動や子どもたちへのスポーツ指導などをしている。報酬はそれぞれ数千円という。(筒井次郎)

ダンスコンテストや「こども食堂」 ボランティアにも汗

 ボランティアで地域に貢献する生駒市職員もいる。

 広報広聴課の村田充弘さん(34)と地域包括ケア推進課の澤辺誠さん(37)は毎夏、生駒山上遊園地で子どものダンスコンテストを開く。

 2人ともダンス好き。だが、「小さいダンス教室だと発表する機会が少ない」と感じていた。電話帳を見て教室を回り、参加を募った。2011年の第1回の参加は14チームだったが、いまは応募が40チームを超す規模に。村田さんは「コンテストを1年の目標にする子も増えてきました」と手応えを感じている。

 広報広聴課の泉昂佑(こうすけ)さん(25)は入庁3年目。17年夏、自宅のある王寺町でママ世代の知人らと「こども食堂」を始めた。月1回、親子連れやお年寄りら約30人をもてなす。さらに地域活動団体の代表らと、戦隊ヒーローをイメージした地域交流戦隊「虹色レンジャー」を結成。青いコスチューム姿で各地の催しに参加し、交流を図っている。

 「インターネットでは得られない地域の生の声を聞くことで、広報紙を編集する際の知識や人脈の引き出しが増えました」