3年ぶり皆既月食、どう見る? 7月は火星が大接近
2018年1月31日
約3年ぶりの皆既月食や15年ぶりの火星の大接近など、今年は注目の天文イベントが目白押しだ。好条件の流星群が多いほか、探査機「はやぶさ2」も小惑星「リュウグウ」に到着する予定だ。
皆既月食は今年2回ある。
1回目は1月31日。国立天文台によると、全国で午後8時48分に欠け始め、月がすべて地球の影に隠れて皆既になるのは午後9時51分。皆既は1時間以上続く。満月に戻るのは2月1日午前0時11分だ。月が欠け始めから終わりまで空高くにあるので、極めて観察しやすい。
月食は太陽と地球、月が一直線に並ぶ時に起きる。地球の影の中を月が通過することによって、月が欠けたように見えたり暗くなったりする。皆既になると月に太陽の光が直接当たらないが、地球の大気をかすめるように回り込んだ光でわずかに照らされる。大気を長く通る光は夕日が赤いように赤みが増すため、月は赤黒い赤銅色で光る。
ただ、その色は毎回同じではない。2011年の皆既月食は明るいオレンジだったが、1993年はかなり暗かった。その2年前に噴火したフィリピン・ピナツボ火山の火山灰が高層で光を遮ったからとされる。
国立天文台は、皆既中の月の色に注目して観察して欲しいと呼びかけている。キャンペーンサイト(https://naojcamp.nao.ac.jp/phenomena/201801-lunar-eclipse/)で、黒・焦げ茶・暗い赤・明るい赤・オレンジのどれだったか報告を募る。
2回目の皆既月食は7月28日の夜明け前に起こる。午前3時24分に欠け始め、皆既になるのは午前4時半。北日本では欠けきる前に月が沈むが、東京など多くの地域では皆既のまま月の入りを迎える。天候に恵まれれば、富士山頂に皆既中の月が輝く珍しい「パール富士」が見られるかも知れない。
今年を逃すと、国内で見られる皆既月食は21年までない。国立天文台天文情報センターの縣秀彦普及室長は「今年は天文現象の当たり年。月食や火星大接近は夜空が明るい都会でも見やすいので、宇宙に親しむいい機会にして欲しい」と話す。
スマホでも撮影可能
皆既月食は肉眼でも観察しやすく、欠ける様子や色の変化が楽しめる。さらに、望遠鏡や双眼鏡があれば、月のクレーターや色の濃淡がよくわかる。接眼部(のぞき口)にスマートフォンを近づけることで、欠けた月の撮影もできる。
ただ、皆既中の暗い月を撮影するには、やはりデジタルカメラが便利だ。
16日夜、東京都新宿区のオリンパスプラザであった皆既月食の撮影セミナーは、立ち見が出るほどの盛況だった。星空写真家の北山輝泰さん(31)が「望遠レンズで大きく写すか、広角レンズで風景と一緒に撮る方法がある」と解説。約40人の参加者は熱心にメモを取っていた。
北山さんによると、月を大きく写すには800ミリ以上(35ミリ判換算)の望遠レンズがあるといい。皆既中の月は暗いため、感度はISO6400で0・5秒ほどのシャッター速度にする。シャッター速度がこれより長くなると、地球の自転によるブレが目立ち始める。感度を抑えてザラつきのない写真を目指すには、月や星の動きを追尾する赤道儀を使うのが望ましい。
広角レンズで欠け始めから終わりまでを収めるには、24ミリより広いレンズが必要だ。最近はタイマーを使ってひたすら撮っておき、あとからパソコンで静止画をつなげる「タイムラプス動画」を作る人も増えている。
オリンパスの担当者は「スマホやインスタグラムで写真に親しむ人が増え、そこから一歩進んでちょっと難しい撮影対象にも挑戦したいという人が多くなっている」と話す。
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皆既月食を観察したり、撮影したりするには事前の準備が欠かせない。ビクセンは、月の高さや方角、周りにある星座を確かめられるスマホ向けアプリ「Moon Book」を無償公開している。月が欠けていく様子と東京タワーなどのランドマークとを一緒に写したい場合はアプリ「Interval Book」が便利だ。
火星、03年以来の大接近
火星が大接近するのは7月31日だ。火星と地球はおよそ2年ごとに接近を繰り返すが、火星がつぶれた楕円(だえん)の軌道で公転しているため、その近さは毎回違う。今回は03年以来の大接近で、夏の夜空にマイナス2・8等でまぶしく輝きそうだ。次に今年より近づくのは17年後までない。
見ごろは7月から8月いっぱいまで続く。レンズの直径が8センチほどの望遠鏡があれば、かつて「運河ではないか」と言われた黒っぽい模様も観察できる。同じ時期に木星や土星も観察しやすいとあって、望遠鏡メーカーのビクセン(本社・埼玉県所沢市)には早くも量販店などから望遠鏡の発注が相次ぐ。都築泰久・企画部長は「今年は望遠鏡が一本あるとかなり楽しめる年です」と話す。
また、8月に極大を迎えるペルセウス座流星群も今年は月明かりがなく、極めて条件がいい。暗い場所なら1時間に40個ほどの流れ星が見られる可能性がある。4月のこと座流星群や12月のふたご座流星群も、夜半に月が沈むと1時間に10~数十個の流れ星が期待できる。
ただ、星空観察は暗い場所での活動になる。11年には兵庫県で皆既月食を見ていた小学生の兄弟が車にはねられて死亡した。今月にもギタリストの藤岡幹大さんが観測中に高所から落下したことが原因で亡くなった。写真家の北山さんは「周囲に十分注意を払い、安全を確保して空を見上げて欲しい」と話している。(東山正宜)
宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ2」が6月ごろ、小惑星「リュウグウ」に到着する予定だ。近づいて観測し、着陸できそうな場所を探して砂の採取に挑戦する。米国では、スペースシャトル以来となる有人ロケットの打ち上げをスペースX社が年内に計画している。