久しぶりの更新でなんなのですが、何気に新聞広げたら、何とも馬鹿げた社説というか、珍説載ってたので、ご紹介します。
テーマは政府が発表した「財政健全化目標」。
言わずと知れた、赤字国債に頼らずプライマリーバランスの黒字化を目指すもの。しかしながら、この件、特に緊急性は無く、政府がすべき政策の優先順位的にはそんな高くない、案件の一つだと小生は思うわけです。
・・・・と、その前に小生の考えを先に述べておきますが、そもそも「日本国の政府とは何のために存在するのか?」どう思いますか皆さん。
それは、言わずと知れた「国家国民の生命と財産を守り、かつその生活の向上」のためにこそ存在する(少なくとも小生はそう確信する)と思います。当たり前のことでしょう。
で、その目的のために、外に向かっては軍隊(自衛隊)にて外敵から、内に向かっては警察にて犯罪から国民を守り、教育を施し、医療福祉を充実させるなど、ありとあらゆる行政サービスを税金でもって国民に還元するわけです。
北朝鮮のミサイルから国民をどう守るのか? 日本国内部に入り込んだ千単位のスパイなどのテロの脅威をどう防ぐのか? そして何より、景気回復はまだ道のり半ばであり(もっとドカッと財政出動すべき!!)、緊急性の高い案件は山ほどあります。
これらの緊急性の高い案件に対して、財政出動をためらうべきではありません。
なので、国の財政は国民生活の向上のためにこそあり、国の財政再建のために国民の生活が犠牲(消費増税など)になるなら、それこそ本末転倒というものです。
なのに、未だに造幣権を持たぬギリシャだのイタリアだのを持ち出して、増税を声高に主張する財政再建派(財政タカ派)が存在します。
さて、以下は今から2年前に書かれた、評論家の宮崎哲弥さんが「財政健全化目標」に関して書かれたもの。小生全く同感なので、ご紹介します。珍社説の前にまずは一読を。
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週刊文春、2015年、5月28日号。
宮崎哲弥の時々砲弾
リベラル・コンセンサス
五月十二日、政府によって財政健全化計画の基本方針が公表された。名目GDP成長率が三%を上回るような「民需主導の経済成長」を実現し、それによって税収を大幅に伸ばすことで、プライマリー・バランス黒字化の政府目標を達成しようという目論見だ。
だが、この方針にはいくつかの疑問が残る。そもそも2020年度までのプライマリー・バランスの黒字化という財政再建案は妥当なのか、という問題だ。目標が高すぎ、かつ性急に過ぎるのではないか。また消費税は10%に留めるとしたのは評価できるが、2017年4月に再増税を行うべきか否かについては、なお慎重な吟味を要する。
然るに新聞各紙の批判点は異なっていた。一斉に「財政健全化が経済成長頼みでいいのか」「成長依存は不確実に過ぎる」などと増税なき財政再建プランを腐した(くさした)のである。
財政収支の均衡を図るのに、まず名目GDP成長率の向上を主眼に据えることは極めて健全なプライオリティである。ここを非難がましく論う(あげつらう)新聞の意図が理解できない。とくにリベラルを自認している新聞はまだ自分達の立ち位置のおかしさに気づいていないらしい。ならばいっそ「消費税税率アップを最優先課題に」とか「徹底した緊縮を断行せよ」とか、はっきり提言したらどうか。
経済保守や財政至上主義の立場ならばともかく、リベラルにとって消費税の税率引き上げによる歳入増や緊縮政策による歳出減は到底積極的に採用すべき策ではない。然るに民主党やそのシンパの朝日新聞などは、一貫して経済右翼や財政タカ派の政策を推進してきた。
2012年8月、民主党の野田佳彦政権が消費税率10%を決定したとき、朝日新聞の紙面で、原真人編集員(当時の肩書、現在は編成局長補佐)は、「称賛に値する」と口を極めて褒め上げた。しかも、従来ならば減税と抱き合わせで提示されたものを、野田政権は増税一本とした点を「正味増税」として殊の外高く評価した。剰え、消費増税によってむしろ景気がよくなるという「非ケインズ効果」のごとき空説を振り回し、財務省とそのパペットに過ぎなかった野田政権のお追従に励んだ(「『正味増税』の時代が来た」12年8月19日付け朝刊)。
このごん節の当否については、昨年四月以降、みるも無残なかたちで破綻が実証されてしまったので、もはや贅言を要すまい。
他方、朝日も毎日新聞も先頃大旋風を巻き起こした『21世紀の資本』の著者、トマ・ピケティを偉く持ち上げた。ピケティは、リベラルとしてオーソドックスな経済学の流れを汲む論者であり、リベラル紙が評価し、保守系新聞が反発したのは別段不思議ではない。最大の難点は肝心のリベラル側が彼の理論や主張をよく理解していないところにある。
ピケティは財政赤字の解消についてどう述べているのだろうか。四月二十一日付けのフランスのリベラシオン紙への寄稿が明解だ。
「公的債務の歴史を簡単に振り返ってみると」 「現在みられるものよりもずっと重い公的債務の例があった。しかし、実に多様な方法を用いて、いつも切り抜けることができた」。そして、その方法とは「インフレを起こしたり、特別税を導入したり、さらには債務を無条件に取り消すことである」(朝日新聞四月二十九日付け朝刊掲載の訳文による)
これらの施策の組み合わせによって、1945年のドイツ、フランスはGDPの二倍に膨れあがっていた累積債務を、わずか五年でGDP比の30%以下まで圧縮できた。当時の独仏に比べて、現在の日本はずっと条件がよい。
ピケティの他の著作をも踏まえて整理すれば、財政健全化の方途として有効なのは (1)経済成長 (2)インフレ (3)所得や資産に対する累進課税の強化 (4)債務再編 、である。消費増税アップや緊縮などではゆめゆめない。
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この最後の4点は実に重要です。
さて、この点を踏まえ、冒頭の珍社説を紹介しますのね(赤線は小生)。
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デーリー東北6月22日付
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最後の「財政健全化にとって本末転倒だ。」ってオチで大爆笑!!
誰が書いたか知りませんが、まさに「財政健全化」そのものが目的化しているところに注目してください。繰り返しますが、「財政健全化」は「国民生活の向上」という政府の「目的」のためにある「手段」のごくごく一部分にすぎません。なのにこの方、「目的」と「手段」を履き替えるまさに本末転倒そのものの論を展開し、読者を大爆笑の渦に捲込む見事な筆力を発揮するわけです。(こんな、長々な文章書いて結局は消費税を早く上げろってことを言いたいだけなんですな。新聞は8%据置だったいうのに)
ここで、疑問。
1)宮崎さんも書いていますが、この議論の前提になっている、「2020年までにプライマリーバランスの黒字化」って、そもそも何故2020年までにしなくてはいけないのか?例えば、2025年や2030年なら何故ダメなのかって論理的に説明できるのでしょうか?(2020年はあくまで政府の目標でしょ)
この社説の肝は2020年にこのままだと間に合わないからさっさと増税しろって言ってるんだけど・・・・だから、何故? 2020年に間に合わなければ具体的に国民にとってこんな災厄があるって読者に説明しなければ、説得力はまるでゼロ。
2)赤線で引いているところですが、「成長力を高め(景気を良くして)」「手法に頼ることは財政健全化を目指す王道の手法ではない。」ってところですが、これも何故?
「手法」「手法」って、手法なんてどうでもいいじゃないですか。「王道」でないって、何故王道ではないのか理由の説明も無いし、また何故王道の手法によって「財政健全化」を計らなければならないのかのかの説明もありません。かっこつけて王道って言ってますが、王道って結局消費増税のことでしょ。まぁこれも「財政健全化」が目的化してる変な議論なのですが、本当にへんてこりんな論理を展開します。
宮崎さんも主張(ピケティか)していますが、景気を良くして、国民生活が潤い、税収が伸び、緩やかなインフレが続いて、財政健全化が計られるのなら、真に結構なことじゃないですか。みんなハッピーで結果オーライだと思うのですが、何故、そんなに国民に増税を無理強いするのでしょうか?
以上、小生は上記の2点を社説書いた方が論理的に説明できなければ、珍社説は本当の駄文だと思うのです。大爆笑はしましたが・・・・
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PS:ちなみに家族の嫁が2020年までに10キロ痩せるダイエット計画を家族に発表したとします。1)仮に2020年までに5キロしか痩せられなかったとして、それがどうしたというのでしょうか?家族にとってデメリットは何なのでしょうか?
2)低糖質ダイエットは王道じゃないから、半端ない苦痛を伴う小食と運動ですべきと夫が主張したところで、手法に何の意味があるのでしょうか?
・・・というか、家族が健康で幸せに暮らすという目的の前に、この「ダイエット目標」は何の意味があるのでしょうか?
小生は、限りなくこの案件はその程度のレベルの話だと思うのですが・・・
増税し経済関連の予算削り、防衛費やら警察のの予算削って、財政健全化目標達成したとします。で、GDPは大幅に減り景気後退し、三沢に将軍様のミサイル落下し、地下鉄でテロ発生したとして、それでも「財政健全化してああよかった」なんて国民いるのでしょうか?