今日から8月、
物価高は益々進み、内閣改造をしても何の変わりもないだろうとあきらめて、暑い夏をひたすら我慢で乗り越える。高校野球にオリンピック、しばしそんな辛さが忘れられるなら、「頑張れ○○高校!」「頑張れニッポン!」と、急ごしらえのナショナリズムに酔いしれて、「あ~あ、哀しき一庶民」
そんな夏がやってきました。(笑)
そんな卑屈な思いで新聞を開くと、朝日新聞『天声人語』に目が行きました。
内外の苦難へ思いを深める8月が、今年もめぐってきた。
という一文で終わるその記事は、鶴彬(つるあきら)という昭和初期の川柳作家のお話です。
鶴彬(つるあきら)本名・喜多(きた)一二(かつじ)は、1909年石川県高松町に生まれました。
暴風と海との恋を見ましたか
そんなロマンチックな句を読んでいた少年は、社会運動のまっただ中で青春を迎え、19歳でナップ(全日本無産者芸術連盟)高松支部を結成。以後、軍部などを批判する川柳を次々に発表して特高に捕まり、1938年29歳という若さで拘留されたまま死んでいった川柳作家なのだそうです。
拳銃で奪った美田の移民村
屍(しかばね)のゐないニュース映画で勇ましい
手と足をもいだ丸太にしてかへし
世にはびこる「非人間性」への怒りを燃やし続けた生涯、彼の最後の句は
胎内の動き知るころ骨がつき
という作品だったそうで、つまり「身ごもった赤ちゃんの胎動伝わってきたときに、父親は戦死しその遺骨が届く、戦争とは生まれ来る子供の父親も奪い、子を身ごもった母親の夫も奪う、まったく不合理なものだ」といった意味の句なのでしょう。
ガリレオの宗教裁判じゃないけど、心底反省の姿を見せて謝りさえすれば、釈放されたかもしれなかったそうですが、意志を貫き通したのですね。
「そんな人がいたんだ」と驚き、「もっと世に知らせるべきだ」という思いで、没70周年を期に映画を作ろうという動きがあるんだそうで、監督の神山征二郎さんは現在奮闘されているのだとか。
ぜひ、見てみたいと、今から楽しみになってしまいました。
そうでした、8月という月は、値上げだ何だと卑屈になっているだけでなく「いかに愚かな人間の行為を繰り返させないか」それを考える月でもあったのでしたね。
そんなことをふと思った『天声人語』でありました。
さて、今日の一枚は、なんとビックリ、メル・トーメです。
えっ?何がビックリかって?
だって、いかにアート・ペッパーが加わっているからといって、楽団バックのボーカルもの、しかも男性ボーカルですよ。私にはとうてい当てはまらない趣味のレコードじゃありませんか。(笑)
じつはこうして聴くのは、そうだなぁ・・・・10年ぶりぐらいだと思います。
でもね、この年になってこうして聴いてみると、指を鳴らしながらけっこう良い気分になっているんですよ。これも歳だからでしょうか?
たしかに、今でも毎日聴こうという気にはどうしてもなれないんですが、たまに聴くには良いかなぁ・・なんてね。
メル・トーメあたりは「いかに粋な歌いっぷりを粋に聴くか」そこなんでしょうね。
つまり何が言いたいかというと、私もやっと「粋なおじさん」に近づいたんじゃないかなんて、ちょっと嬉しい気分に、こうして聴いているとなるんであります。
ペッパーの好演もたしかに活きてはいますが、そんなの関係無しに粋を楽しんで下さい。
SWINGS SHUBERT ALLEY / MEL TORME
1960年1,2月録音
MEL TORME(vo) ART PEPPER(as) FRANK ROSOLINO(tb)
MARTY PAICH Orchestra
1.TOO CLOSE FOR COMFORT
2.ONCE IN LOVE WITH AMY
3.A SLEEPIN' BEE
4.ON THE STREET WHERE YOU LIVE
5.ALL I NEED IS A GIRL
6.JUST IN TIME
7.HELLO YOUNG LOVERS
8.THE SURRY WITH THE FRINGE ON TOP
9.OLD DEVIL MOON
10.WHATEVER LOLA WANTS
11.TOO DARN HOT
12.LONELY TOWN
それにしても強烈な句ですね。「もっと世に知らせるべきだ」という動き、私も賛同します。いいことを教えていただきました。
ただ、8月は、ジャズは聴く気がなかなかおきません。未開封のコルトレーンとローランド・カークを眺めるばかりです。
戦争の愚かさと無意味さを、せめて8月くらいは、もっといろんな年代が考えても良いのかもしれませんよね。
おっと、ジャズも聴いて下さいよ。
なんなら暑さを吹き飛ばすように大音量でなんぞいかがでしょうか?
コルトレーンとローランド・カークじゃまわりから苦情が来ますかね(笑)