赤い彷徨 part II
★★★★☆★☆★★☆
↑次にお星さまが増えるのはいったいいつになるのでしょう…
 



「日本再興戦略」という表題だけだと毎年の政府が閣議決定しているいわゆる「成長戦略」のようにも思えますがさにあらず。著者の落合陽一さんは、筑波大学助教として教育に携わり研究者として論文を書き学界にも顔を出す一方、起業家でもあり、かつアーティストであるなど若くして多才な人物として、NewsPicks等の新興ネットメディアにとどまることなく最近ではオールドメディアでも徐々に脚光を浴びつつある新進気鋭の才能です。ご本人も政界進出の可能性を示唆されており、小泉進二郎議員あたりからも秋波を送られているなど「戦略」を立案するのみならず実行段階においても主体的に役割を果たしていかんとしているという点でも注目に値する方と言えましょう。ちなみに、なんとあの落合信彦(その昔のスーパードライのCMにも出演)さんの御子息というので個人的には少々びっくりしました。自分も学生時代のある時期に父上の著作もいくつか読んでいますので、親子2代にわたりお世話になっている、ということになります。以下概要です。

 日本再興に関する著者の基本的な考え方というのは、明治維新の時に一気に「西洋化」したがゆえに、西洋的な考え方や発想に捉われがちな我が国だが、今こそ東洋的発想に立ち戻るべきであり、さもないと日本の再興はないというもの理解できます。個人と集団、そして自然化と人間中心との間でものを考える中で、今は自然で集団の時代に突入している。いきなり西洋化した我が国なのだから、いきなり東洋に回帰してもよいのではないか。そもそも我々日本人は東洋人であるにも関わらず東洋を軽視し過ぎであり、自分たちのバックグラウンドにある東洋思想を学ぶべきである。西洋的な思想は言葉の定義が明確でわかりやすいという魅力があるが、他方東洋的思想はわかりにくいものを頑張って勉強していくことで理解していくという価値観であり、言外の意味を修業によって獲得していくという基本スタンスである。これに対し、西洋の精神は個人主義でみんなが理解する権利があると考え、内容が理解できなければ「それはわかりやすくインストラクションしないお前が悪い」という精神なのであるとしています。

 この基本スタンスについては、分野別に現状を例示しています。まず法律分野ですが、我が国は明治時代は欧州各国、戦後は米国の仕組みを取り入れて社会を構築してきたため、大日本帝国憲法はドイツ式、日本国憲法は米国式、刑法はドイツ式、民法はフランス式と斑模様であるを指摘しています。ひとえに「欧米」と言っても米国と欧州は異なり、また欧州各国もそれぞれ歴史、文化、伝統は異なっており、いわば我が国の諸制度というのは諸々の国々の制度の継ぎ接ぎということになる。従い、現在行われている憲法改正の議論を著者流に解釈すれば、国防上の問題に留まらず、そうした現状を時代に合わせてアップデートする必要性からなのである、ということになります。そして、こうした法令に限らず、時代の変化にあわせて、こうした「いいとこどり」の旧最適化モデルを変えていく必要があるとしています。

 また、我々の働き方について斬新な提案をしています。日本は歴史的にも労働時間の長い国であるとしているが、とはいえそれは生活の一部として仕事をしてきたということなのだというのが筆者の理解です。勿論、働く人が感じるストレスないことが重要なのは間違いないとして、その程度を一律に労働時間だけで測る必要はない。西洋からやってきた概念である「ワークライフバランス」の名の下にON/OFFのボーダーを設けて分離することが本当に幸せに繋がるのか、という問題提起をしています。他方、同時に日本の会社という組織も今の時代にアレンジする必要があるともしています。会社は本来「ギルド」であり「カンパニー」であるべきところ、日本の会社はソサエティ=「閉鎖的なムラ」になってしまっているため、これをより開放的なムラ、コミュニティにしていく必要がある。そして様々なコミュニティが生まれ、ヒトは複数のコミュニティに所属し、所属コミュニティを自由に変えることができるというのが理想的で、そこでヒトは好きなコミュニティに依存していけばよいのである、というのが著者の主張です。

 更に、我が国の統治、政治体制のあり方については、「明治以来の西洋的国民国家の中央集権体制は日本には向かない」と断言しています。地形や自然というルールが多様な日本はとても「ブロックチェーン」的であり、平安時代以前や江戸時代のような地方分権による意思決定が向いているのだと言います。この「ブロックチェーン」ですが、最近いろいろな書籍や記事を読みまくって理解しようと試みております。これまでのような中央集権的な運営体制から、中央の運営主体がなくより分権的なものになるのだ、くらいまでは理解できたものの、私立文系で著者の言うところの「ホワイトカラーおじさん」である私にはなかなか腹落ちするところまでは至っておりません。更なる精進が必要ですね。

 さて本題に戻りますが、それでは様々な技術がどのように世の中を変えていくのか。まず、近代は人間を画一化することで効率を上げ、全体の生産性を上げてきた。そうして生まれた画一的定義による「標準」から外れたものとしてマイノリティが生まれ、場合によっては差別を生んできた。こうした二項対立から抜け出せなければ人間は近代を克服することが出来ない。インターネットはこれまでマスという概念をもたらしてきたが、今はインターネットはパーソナライズへ移行しようとしている。自動翻訳、ロボティクス、自動運転、5Gといった新たなテクノロジーが我々のの生活を大きく変える。そして、目の悪い人がメガネの登場により何不自由なく生活できるようになったように、新たなテクノロジーがこれまでマイノリティとされてきた人々を何不自由ない人々に変えていくだろうと予言しています。

 そして、我が国最大の懸案事項のひとつである人口減少については、ピンチではなくむしろ人類史上稀有な大チャンスであると捉えています。そしてそれは、(1)省人化に対する「職を奪われる」といった抵抗が少なくて済む、(2)他国に先んじて人口減少と少子高齢化を経験することにより今後の国としての輸出戦略になりうる、(3)人材の教育コストを多くかける国になる、の3点においてです。この指摘には大いに頷けるものの、ただ、個人的に3点目に関しては眼下のシルバーデモクラシーの台頭をふまえるとやや疑わしい面があるのかなあという気も一方でしています。

 また著者は、日本人は革命のような急激な変化は苦手だが、改革や革新は得意なので日本をアップデートしていくという発想を持つべきとしています。機械が仕事をしてくれれば1人当たりの年収が大きく上がる。そして人口減少による需要減は先述の輸出で補うことがある可能としています。ただ、これについても、とかく不安定な輸出を前提にした国家戦略というのはやや危険な気もします。著者は否定しますが、他国による技術のキャッチアップもあり得るでしょうしね。

 そして著者は日本再興の切り札として、ロボットや自動運転の他にブロックチェーン技術を推しています。ブロックチェーンとは、著者の言葉を借りれば「分散型の台帳技術と言われますが、あらゆるデータの移動歴を、信頼性のある形で保存し続けるためのテクノロジー」、「しかも、誰かが一元的に管理するのではなく、全員のデータに全員の信頼をつけて保っていくことができます。」、「非中央集権的なテクノロジー」ということで、最近ではホットイシューである仮想通貨や公文書管理問題の解決といった文脈でよく耳にする言葉ですね。ブロックチェーンが非中央集権的なテクノロジーというのは、データの移動歴を一人の管理者が中央集権的に記録当の管理をするのではなく、複数のアクターが相互監視の下、つまり複数の参加者の認証により移動がオーソライズされ記録されていくということです。

 そしてこの認証を適性に行う動機づけとしてトークン(≒仮想通貨)が配布されるというのが一般的なスキームのようです。筆者はこのブロックチェーン技術と仮想通貨により生まれる「トークンエコノミー」という経済圏が日本を変えていくだろうと期待を寄せてます。先述の通り筆者の認識では日本は基本的に非中央集権的であり、しかもポイント好きな国民性からもわかるとおりトークンエコノミーと親和性があるとしています。そうした中、今日本に必要なのは民主主義を地方自治重視にアップデートすること。あらゆる地域の主体の参加意識をもう一度地方に戻す事。投票のルールも政治のやり方も全国一律ではなく各地で決めていけばよいというのが著者の主張です。このあたりは大いに議論の分かれるところでしょうが、個人的には著者の主張に期待してみたいと思っています。

 このトークンエコノミーですが、国の形だけではなく経済や産業の形も変えうると著者は見ています。トークンエコノミーの受益者負担、自給自足があればグローバルなプラットフォームによる搾取を防ぐことができる≒シリコンバレーと戦う最高の戦略になるというのです。AGFA(Apple、Google、Facebook、Amazon)といった巨大なプラットフォーマーにお金も情報も吸い上げられているのが現在の日本で、こうした状況にピリオドを打ちローカルな経済圏を作るための武器となるのがブロックチェーン化であり、トークンエコノミー化である。元締めとなるプラットフォームがなくてもユーザー同士で情報を管理したり、取引ができたりする仕組みで、これは日本の伝統的な価値観にも合っていると見ています。

 もし我々が受益者負担のオープンなブロックチェーンベースのサービスを提供できればアップルやグーグルやアマゾンにお金を稼ぐ抜かれなくて済む。逆に言えば、こうしてシリコンバレー発プラットフォーム社会を超えて行かない限り、我々は永遠に裕福にはなれないのではないか。このようにカルフォルニア帝国に対抗するトークンエコノミーの基盤のひとつになり得るのが仮想通貨だが、これが取引に使えるものとして定着すれば良いトークンエコノミーは一気に飛躍しやすくなる。しかしながら、現在投機マネーの流入により不安定になっており、望ましい状況ではないと懸念しています。

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現実  


J.League YBC Levian Cup (J-League cup) Playoff Series 2nd leg
Urawa 2 v 1 (Aggr 2 v 3) Kofu @Saitama Stadum 2oo2, SAITAMA(HOME)

エース興梠の変態ぶりがいかんなく発揮されての折角の2点先制を実にイージーな形での失点でフイにしてしまい、アウェイゴールさえ取れなかった1戦目の敗戦と合わせ、誠に勿体ない形で今季のルヴァン杯敗退、しかも2部の甲府さん相手に、が決定してしまいました。決してラインが低いわけではなかった甲府守備陣の裏を突く浦和の攻撃は前半こそ効果を上げていましたが、中断前のためか水曜の天皇杯でターンオーバーせず無理使いしたことが祟ったのか、2ゴールが必要だった状況で迎えた後半に入ると浦和の足はぱったり止まってしまい、最後はマウリシオを前線に上げてのパワープレーまで試みるも、結局人数をかけて守る甲府さんの前に手も足も出ずという感じでしたね。後半の好機らしい好機は武藤のシュートがバーを叩いた場面くらいでしたでしょうか。



体のつくり直しと戦術面の仕込みがある程度出来た形で迎えられるであろうW杯中断明けに期待するというのが引き続きの私の今季の対浦和の基本スタンスではあるのですが、つい最近まで1部にいた好チーム相手であったにせよ、それでも2部のクラブ相手にこの体たらくというのは少々残念ではあります。「戦わなきゃ現実と」という言葉をあらためて突き付けられたような気がして、想いを新たにしたところです。勿論W杯は楽しみですが、浦和勢には申し訳ないと思いつつも、日本代表に関してはどうにもこうにも「もうどうでもええわ、勝手にせい」という想いを拭うことができず、やや陰鬱な気分で中断期間を過ごすことになりそうですが、W杯というお祭り楽しむ他なさそうですね。しかし、せっかく橋岡をわざわざツゥーロンから呼び戻したのになあ…。



YBCルヴァン杯プレーオフステージ2ndレグ
浦和2×1(2戦合計2×3)甲府@埼スタ

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The 98th Emperor's Cup, 2nd round match
Urawa 3 v 0 Yokohama Y.S.C.C. @Urawa Komaba Stadium, SAITAMA(HOME)



今日もなんとかかんとか仕事を投げ出して職場を飛び出し、汗だくで浦和駅に着き、雨具を忘れたのでレッドボルテージに寄ってポンチョとタオマフを大人買いするというボルテージ移転のメリットを最大限に活かした作戦こそ成功しましたが、友人が屋根の下に席を確保してくれていたのでそちらは敢えなく不発に終わりました(笑)いやはや浦和がまさかのガチメンでびっくりしましたが、負傷して早々に退いたという長澤は大丈夫でしょうかね。心配です。



さて試合の方は2点目となる興梠のPK成功を見届けた以外はほぼ後半だけしか見られていませんので、浦和が攻勢で出てマルちゃん大作戦が横浜YSCCさん守備陣を脅かしまくる展開しか見ていません。ゆえに精神衛生上はよかったのかもしれません。いや、割りにゴールには結びつかなかったのでそうでもないか…。ということで橋岡をツゥーロンから強制送還までした土曜のルヴァン杯がやや心配ですが、とにもかくにもアジアに通じる天皇杯緒戦でやらかさなくて本当によかったです。



今日のところはとりあえずこんなところで。

第98回天皇杯第2回戦
浦和3×0横浜Y.S.C.C.@駒場

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