嘘の吐き方(うそのつきかた)

人はみんな嘘をついていると思います。僕もそうです。このページが嘘を吐き突き続ける人達のヒントになれば幸いです。

ミミのこえを聴いて

2007年04月02日 13時44分45秒 | 詩に近いもの
蝉の声が聞こえる
ときどき、セミの声が聴こえる

耳から入っているのではなくて、
耳から聴こえているのだと思う。

夏が鳴いているのではなくて
夏から聴こえているのだと思うから
それはたぶん、悲しげな僕が思い出す限りにおいては
夏が泣いているというんだろう。

どうしてセミの声が聴こえるのかはわからない。
けれどたぶん、僕があの暑い夏の日を忘れたくなくて
虫かごに閉じこめたモンシロチョウが死んでしまった夏を忘れたくなくて
むしろもっともっと僕はあの夏の中に居たくて
ずっと夏の声を聴いてるんだと思う。

耳鳴りに似ている
みみ鳴りに似ているけれど、
みみなりと少し違う。

あのピーンと音がするような耳鳴りは、
むしろ空気の閉じこまった澱みと似ていて、
それは圧力を変えたりすることで消えるけれど、
セミの声は忘れない限り消えない。

現実に汚されて、フッと消えてしまうようなセミの声は
淡くて儚い命と似ていて、
100年で燃え尽きる猿の皮膚と似ていて
その淡い灯籠の中に居る限り、
僕は宇宙の虫かごから出られない

モンシロチョウを殺した夏、
僕は大人になることをやめた。