一度走り出すと、止まらない癖がある。
誰も走っていない場外コースまで走っていってしまう。
蝉の声が聞こえて、夕方や、黄昏や、夏の終わりが見えても、
僕が夏を終わらせない。
もーいーかい?
と、声が聞こえても、
まぁだ、だよぉ~
とは答えない。
もっと遠くまで。
隠れる作業よりも前に、まずは遠くまで。
誰も追いつけないほどに、遠くまでいく。
かくれんぼのルールも、おいかけっこのルールも知らない。
そしてまた、遊び続ける事の残酷さも、
大人になることのずる賢さもいちいち考えない。
誰かが追いかけてきて、僕にブレーキのことを教える
止まってくれ、とお願いする。
僕は泣き出して、ブレーキオイルに火をつける。
真っ暗なトンネルの中を走って、
夜が来ても、幽霊が来ても、僕は走り続けることをやめない
振り返れば、トンネルの向こうには、いつも夏が見える。
でも僕は、みんなの居る夏の方には歩いていかない。
すぐそこに夏が見えていても、
赤い砂浜と白い砂浜が両方に見えていても、
僕は黙って指をさすだけ。
心臓が壊れて、僕の呼吸が乱れて、
誰かが僕の方に歩いてくれば。
僕の死体を見つけて、かくれんぼのルールと、おいかけっこのルールと、
夏休みの終わりを、教えてくれるのだろうか?
認めない。
たぶんずっと、認めない。
僕が止まれば、みんな僕に気付かずに、ずっと先の方へ歩いていって
追い越していくような人ばかりだ。
永遠に繰り返す遊びの中で、
もっと面白い遊びをみんなでしようと、
「缶蹴りだるま」を考案するような人たちばかりではないのだ。
たぶん、宿題はやまほどあって。
それはずっと、僕らが遊んでいる間に、大人たちが直せなかった柱のゆがみで。
そのゆがみを、指さして叫ぶだけで、大人たちは死んでいく。
大人は、真っ直ぐさを語らない。
ゆがみを指摘して、迷惑に叱るだけで、大声をあげて怒鳴るだけで、
その柱をまっすぐにする術を知らない。
僕は知ってる。
まっすぐに、まっすぐに、誰にも見つからないように、
まっすぐに走り続けた者だけが、
ゆがんだものを、まっすぐに治す術を知っている。
ただまっすぐに、走り続けて。
幽霊になるまで、あの夏を走りづけて、
現実を夢に変えてゆく。
まっくらな、いろりの火を、むねに灯しながら。
誰も走っていない場外コースまで走っていってしまう。
蝉の声が聞こえて、夕方や、黄昏や、夏の終わりが見えても、
僕が夏を終わらせない。
もーいーかい?
と、声が聞こえても、
まぁだ、だよぉ~
とは答えない。
もっと遠くまで。
隠れる作業よりも前に、まずは遠くまで。
誰も追いつけないほどに、遠くまでいく。
かくれんぼのルールも、おいかけっこのルールも知らない。
そしてまた、遊び続ける事の残酷さも、
大人になることのずる賢さもいちいち考えない。
誰かが追いかけてきて、僕にブレーキのことを教える
止まってくれ、とお願いする。
僕は泣き出して、ブレーキオイルに火をつける。
真っ暗なトンネルの中を走って、
夜が来ても、幽霊が来ても、僕は走り続けることをやめない
振り返れば、トンネルの向こうには、いつも夏が見える。
でも僕は、みんなの居る夏の方には歩いていかない。
すぐそこに夏が見えていても、
赤い砂浜と白い砂浜が両方に見えていても、
僕は黙って指をさすだけ。
心臓が壊れて、僕の呼吸が乱れて、
誰かが僕の方に歩いてくれば。
僕の死体を見つけて、かくれんぼのルールと、おいかけっこのルールと、
夏休みの終わりを、教えてくれるのだろうか?
認めない。
たぶんずっと、認めない。
僕が止まれば、みんな僕に気付かずに、ずっと先の方へ歩いていって
追い越していくような人ばかりだ。
永遠に繰り返す遊びの中で、
もっと面白い遊びをみんなでしようと、
「缶蹴りだるま」を考案するような人たちばかりではないのだ。
たぶん、宿題はやまほどあって。
それはずっと、僕らが遊んでいる間に、大人たちが直せなかった柱のゆがみで。
そのゆがみを、指さして叫ぶだけで、大人たちは死んでいく。
大人は、真っ直ぐさを語らない。
ゆがみを指摘して、迷惑に叱るだけで、大声をあげて怒鳴るだけで、
その柱をまっすぐにする術を知らない。
僕は知ってる。
まっすぐに、まっすぐに、誰にも見つからないように、
まっすぐに走り続けた者だけが、
ゆがんだものを、まっすぐに治す術を知っている。
ただまっすぐに、走り続けて。
幽霊になるまで、あの夏を走りづけて、
現実を夢に変えてゆく。
まっくらな、いろりの火を、むねに灯しながら。