日本と世界

世界の中の日本

「2017年危機説」の韓国経済

2017-02-21 10:15:48 | 日記
2017年01月10日 13:49国際


「2017年危機説」の韓国経済



日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 韓国経済は危機に瀕している。

巷では、2017年に韓国経済は危機に陥る可能性が高いという「2017年危機説」が囁かれている。

それでは、なぜそのような噂が立っているかを取り上げてみよう。

 08年の世界金融危機を的中させ、一躍有名になったニューヨーク大学のルービニ教授が使い始めて有名になった「パーフェクトストーム」という用語がある。

この単語はもともと気象用語で、台風発生時に悪い気象条件が重なり合い、台風がものすごい破壊力を持つようになることを指す。

そして経済でいう「パーフェクトストーム」とは、悪い材料が同時に発生して、経済に大混乱をもたらすことを意味する。
 
まさにそのような現象が、韓国経済に発生しようとしている。

 2017年の韓国経済の悪材料を挙げるとするならば、次のようになる。

「トランプ次期大統領の保護貿易主義」


「米国の金利上げによる低金利時代の終息」

「中国経済の失速」

「韓国主力産業の競争力喪失」

「家計負債の問題」「朴大統領スキャンダルによる政局運営の空白」などだ。

 韓国経済の根本的な問題点は、人口は5,000万人と少なく、国土は狭く、天然資源に恵まれていなくて、韓国経済は外需に頼らざるを得ないという点だ。

輸出と輸入の合計で算出する貿易依存度では、韓国は90%を超えている。

すなわち韓国経済は、否が応でも世界の景気変動に晒されている。ところが、世界経済は不安定要因が多く、韓国経済の不透明感は増している。

 まず、韓国経済を取り巻く外部要因を見てみよう。

 米国では、大方の予想に反してトランプ候補が次期大統領に選出された。

トランプ次期大統領はTPPを撤廃し、自国に有利な経済政策を取るとしている。

アメリカの雇用創出を最優先するため、メキシコ工場からの輸出にも口を挟むほどである。

 韓国の副総理はトランプ次期大統領の強い意志に押されたかたちで、米国との貿易赤字を減らす努力をして行くと発表している。

日本を代表するトヨタにも、保護貿易の矛先は向けられている。

世界貿易をリードする米国の政策は、世界貿易を萎縮させる可能性は十分ある。

 また、韓国輸出の頼みの綱ある中国向けの輸出にも変調をきたしている。

それにTHAADミサイル配備をめぐって両国間の関係が冷え込み、化粧品や映画、ドラマなどを中心に大きな売上減少などが報告されている。

 ヨーロッパもイギリスのEU脱退、テロによる移民受け入れへの反対など、経済だけでなく社会にも不安要素を抱えていて、成長はあまり期待できない。
それでは、韓国国内はどうだろうか。

 韓国国内では、輸出だけでなく、内需の不振も数値として顕著に現れている。


輸出が伸びなくても、消費が増えれば経済は成長するが、消費心理も冷え込んでいる。

 その理由としては、今まで韓国の成長を牽引してきた主力産業が、すべて揺らいでいることが挙げられるだろう。

自動車や鉄鋼、造船、海運など韓国を代表する産業は、販売不振と競争激化で苦心している。

今まで韓国経済を牽引してきた重厚長大産業は、中国の低価格攻勢で、市場で急激にシェアを落としている。

技術力では日本に、労働力などのコストでは中国に負けて、この分野で以前のような活気を取り戻すことは、ほぼ難しい。

 韓国政府は既存産業を構造調整することともに、新しい成長エンジンを見つけなければならないが、海運や造船などの構造調整の際にも失態を繰り広げており、国民の信頼を失っている。


アメリカは昨年の12月に金利上げに踏み込んだ。

今後、時間をかけて徐々に金利を上げていくことによって、市場の衝撃を最小限に抑えるとしているものの、金利が上がることによって1,300兆ウォンを超える韓国の家計負債は大きな問題として浮上している。

ただでさえ景気が悪化しているのに、金利が上がると、深刻な事態になりかねない。

 韓国経済は景気の低迷にもかかわらず、個人レベルでは低金利時代をいいことに、借金することで踏ん張ってきた。

それから政府は、建設投資と不動産で景気を支えてきた。

昨年、韓国経済は2.6%成長しているが、建設と不動産を除いたら、厳密にいうとほとんど成長していないかもしれない。


 家計負債が大きく膨らんだ原因は、政府の不動産政策によるところが大きい。

その不動産政策のなかでも「集団ローン」というのがある。

個々人の信用でローンの審査をするのでなく、マンションを分譲する建設会社が、集団でローンを申請する制度だ。

政府では今後、家計負債を抑制するため、集団ローンなどを厳しく抑制する方針だ。

しかし、すでに信用もないのに、ローンを組んでマンションを購入した人も多いため、ローンの不良債権化が懸念されている。

 それに、このような産業構造を調整したり、大きな変化に対応しないといけない時期に、韓国政治に空白が発生していることも大きな懸念材料である。

特別検察の捜査が進むにつれて、今まで噂で囁かれていた諸々のことが明るみに出た。

今回、このような“病巣”を完全に断ち切らないと、韓国は先進国入りできないだろう。

 韓国社会は階級社会であることは筆者も知っていたが、これほどまでに階級間の格差と葛藤があることは初めて知らされた。

 政治も経済も悪い材料が重なり合い、「パーフェクトストーム」が来る可能性は十分ある。

しかし、ことわざにもあるように“備えあれば憂いなし”で、悪い材料もいかに対応するか次第では、結果が違ってくるだろう。

 幸い韓国経済には、悪い材料ばかりがあるわけではない。

サムスンは「Galaxy Note7」の発火、爆発事件で大きな商機を逸したものの、昨年のスマホ販売の実績では世界1位をキープしている。

サムスンは「Galaxy Note7」の発火原因の究明も終わって、「Galaxy8」の出荷準備をしているようだ。

 サムスンの「Galaxy7」の危機を救ったのは、実は半導体部門の好調であった。

とくに3次元NANDフラッシュメモリーの需要が今年は大幅に伸び、需給が逼迫することで、サムスンとSKハイニックスは大幅の売上増加が見込まれている。

IoT(モノのインターネット)、人工知能、車載半導体など、メモリを必要とする分野が拡大されつつある。

サムスンとSKハイニックスは莫大な投資を実施したタイミングも良くて、先行者利益を享受できそうだ。

 ほかに有機ELディスプレイも、iPhoneなどが採用を決めることで需要が伸びそうで、世界1位、2位を占めているサムスンとLG電子には、大きなチャンスが到来している。

 2017年は、経済の大転換期になりそうだ。韓国経済はこの変化の時期にどのような対応をするかによって、危機にもなり、チャンスにもなるだろう。

(了)