韓国経済崖っぷち、いよいよ「デフレリスク」が高まっている
韓国の経済は、景気減速に続いて”デフレ(デフレーション)”に陥るリスクが徐々に高まっている。
ここへきて、韓国経済全体の物価動向を示すGDPデフレータがマイナス圏で推移している。
12月3日に中央銀行が公表した7~9月期のGDPデフレータは、前年同期比マイナス1.6%だった。
この数字を見る限り、韓国経済はデフレの淵まで来ているといえるだろう。
韓国の輸出の落ち込みに加えて、国内需要も盛り上がらない状況は続いている。
成長率の低下などを受け、多くの国民は将来に希望を抱くことが難しい状況になっているのも知れない。
そのため節約が重視され、人々のデフレマインドが広がりつつあるとみられる。
今後、短期間で韓国が輸出を増やし、景気持ち直しを目指すことも難しい。
デフレ懸念は徐々に高まる可能性がある。
それに伴い韓国の経済・社会の停滞感も一段と強まることが予想される。
2017年7~9月期以降、韓国のGDPデフレータは右肩下がりで推移してきた。
昨年10~12月期、GDPデフレータは前年同期比でマイナス0.1%に落ち込んだ。
それ以降、4期連続でGDPデフレータはマイナス圏で推移し、7~9月期はアジア通貨危機以来の落ち込みを記録した。
韓国における内需の落ち込みは明確になっている。
GDPデフレータは、経済全体での物価の動きを示す経済指標の一つだ。
わかりやすく言えば、GDPデフレータは名目GDPを実質GDPで除したものだ。
GDPデフレータがプラスであれば経済全体で物価水準は上昇傾向にあることになる。
反対にGDPデフレータがマイナス圏で推移している場合、物価水準は弱含んでいると考えられる。
わが国経済の経験を振り返ると、GDPデフレータは、消費者物価指数(CPI)よりも早くデフレ傾向を示してきた。
1990年代初頭のバブル崩壊後、94年ごろからわが国のGDPデフレータはマイナス圏で推移した。
その後、1996年ごろからCPIの変化率がマイナス圏に落ち込む場面が目立ち始めた。
この傾向は他の国でも該当する可能性がある。
わが国では、デフレ環境が本格化するにつれ、企業経営者や消費者のマインドは更に冷え込んでしまった。
それが、経済の停滞を長引かせた。
経済が停滞してしまうと、人々が将来に希望を持ち、新しい取り組みを進めることは難しい。
わが国の経験をもとに考えると、GDPデフレータがマイナス圏で推移している韓国経済の先行きは楽観できない。
韓国のデフレリスクは徐々に高まる可能性がある。その背景には多くの要因がある。
まず、中国経済の減速や米中の貿易摩擦によって、韓国が輸出競争力を発揮して経済を安定させ、内需安定につなげる展開は想定しづらい。
文在寅大統領の経済政策も内需を低迷させる一因とみられる。
最低賃金の引き上げなどにより、若年層を中心に雇用環境が悪化してしまった。
産業競争力の低下懸念も高まっている。
米中を中心に世界のIT業界で競争が激化している。
中国企業は産業補助金に支えられ、韓国勢よりも低い価格で最先端の半導体や有機ELパネルなどの供給力をつけている。
韓国企業がそうした変化に対応できるかは、かなり不透明だ。
自動車業界では、内需低迷や労働争議の影響から生産が縮小傾向にある。
韓国企業の中には、“生き残り”をかけて雇用調整を行わざるを得ないケースも増えているようだ。
世界的なIoT(モノのインターネット化)への取り組み強化を受けて、韓国企業が省人化技術を導入して生産性向上を目指し、労働組合が反発することもあるだろう。
その場合、労働争議は激化し、企業経営はより難しい局面を迎えるだろう。
2020年4月、韓国では総選挙が実施される。
文大統領は、市民団体や労働組合が支持する政策を重視し続けるはずだ。
対照的に、若年層を中心に生活への不安は高まり、デフレ懸念が深刻化する可能性は軽視できない。
その展開が現実のものとなれば、韓国の社会心理はこれまで以上に悪化し、政治情勢の不安定感が高まることもあるだろう。
真壁 昭夫