新宿会計士の政治経済評論
ベネズエラ=韓国説
ベネズエラを研究する目的
日本からこんなに遠い国の事例を、唐突にわざわざ持ち出してどうするのか、というご批判があることは承知しています。
しかし、ベネズエラは「モノカルチャー経済の国が反米思想に凝り固まった独裁者によって米国との関係を決定的に損ねた結果、経済を崩壊させてしまう」という意味では、教訓として一般化できることもまた事実でしょう。
しかし、古今東西、どんな国であっても、「永遠の友好関係」というものは存在しませんし、「永遠の敵対関係」というものも存在しません。
どんな密接な友好国同士であっても、仲違いすることもありますし、逆に、どんな仲が悪い国同士であっても、こうした「仲が悪い状態」が解消することもあります(※もっとも、それは「仲直りする」のではなく、「片方の国が滅亡する」、というパターンのことも多いようですが…)。
したがって、仲が良かったはずの国が、ある日突然、断交する、ということも、歴史的にはいくらでも事例がありますし、現代社会でもそれが発生しないとは断言できません。
何のことを言っているのかといえば、日本のすぐ隣に、見た目は「親米国家」であるものの、いまや急激に共産化・反米化しようとしている国があるからです。
それが、韓国です。
鈴置氏の「韓国のベネズエラ化」論
当ウェブサイトとしてはこの「韓国のベネズエラ化」説を強く支持しているのですが、じつは、これを初めて言い出したのは、当ウェブサイトではありません。
韓国観察者の鈴置高史氏です。
鈴置氏は今から1年以上前、『デイリー新潮』に次のような論考を発表しました。
文在寅で進む韓国の「ベネズエラ化」、反米派と親米派の対立で遂に始まる“最終戦争”
米韓同盟が音もなく崩れ始めた。韓国人の過半が「米国に支払う経費負担を増すぐらいなら、在韓米軍に出て行ってもらったほうがいい」と言い出したのだ。
―――2019/02/12付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
今になってリンク先の記事を読んでいただくと、きっと「本当にこれが1年以上前に執筆されたものなのか」と驚く方が多いと思います。
というのも、「反米派と親米派の対立」という構図、今でこそ当たり前ですが、これを昨年の時点で喝破していた人物は、非常に少数だからです。
じつは、当ウェブサイトでも「韓国のベネズエラ化」については非常に強い関心を抱いているのですが、その関心を抱くきっかけを与えてくれたのが、この鈴置氏の論考なのです。
あえて当ウェブサイトなりに目についた箇所を抜粋して大雑把に要約すると、次のような点が指摘されています。
•キューバがベネズエラを食い物にしたように、北朝鮮が韓国を食い物にする
•カストロとチャベスの関係は、金正恩と文在寅の関係と類似している
•左派政権は米国への反発をきっかけに誕生し、産業の国有化というプロセスを辿る
まったくそのとおりでしょう。
キーワードは「左派」と「産業の国有化」
さて、その鈴置氏が、昨日、デイリー新潮に最新稿を発表しています。
財閥国有化に動く文在寅…“持たざる者の怨念”で総選挙圧勝を追い風に まずは大韓航空
総選挙で大勝した文在寅(ムン・ジェイン)政権が財閥国有化に動く――と、韓国観察者の鈴置高史氏は読む。
<<…続きを読む>>
―――2020年4月21日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
この論考について、当ウェブサイトとしては、記事全文を転載したりすることはしません。というよりも、真っ先に申し上げたいことは、
「まずは読んで下さい」
です。
とくに、先ほど紹介した2019年2月の「鈴置論考」とあわせて読めば、驚くほど筋が通っていて、まるで詳説か何かを読んでいる錯覚に陥ります。
昔から「現実は小説より奇なり」と言いますが、本当によくぞここまで整合しているものだと驚くよりほかありません。
そして、本稿は先週・4月15日に行われた韓国国会議員総選挙で、与党「ともに民主党」が衛星政党を含めて300議席中180議席を獲得する圧勝となったことを受けて、初の鈴置論考でもあります。
上記「韓国のベネズエラ化」というキーワードを知らない人が読むと、「国有化」という一見地味なタイトルで読み飛ばしてしまう人もいるかもしれませんが、これは非常に重要な論考なのです。
産業国有化と反米化
最初に向かう先は「大韓航空の国有化」
さて、唐突にわき道にそれます。
『大韓航空「資金ショート」はコロナだけのせいではない』などでも取り上げましたが、韓国を代表する「ナショナル・フラッグ・キャリア」でもある大韓航空が、経営危機に陥っています。
ただ、当ウェブサイトの見解としては、例の武漢コロナウィルスの蔓延にともなう運航便の激減は、同社の経営危機の「直接の原因」ですが、それだけとは思えません。
1ヵ月や2ヵ月、運航便がすべて停止してしまうだけで、資金ショートを発生させるというのも、おかしな話だからです。
財務分析論の立場から見た大韓航空の経営危機の「真の原因」とは、脆弱な自己資本と過度な借金体質、過剰投資、つまり同族経営にありがちな放漫経営による「自業自得」という側面が強いのではないかと見ています(※ちなみに新宿会計士は「公認会計士」であり、財務分析は本業のひとつです)。
そして、大韓航空とは、
•もともと国営企業だったのに、韓進グループのオーナー一族が支配する同族会社と成り果ててしまった
•オーナーの放漫経営により、高コスト体質、脆弱な自己資本、過大投資という肥満体になってしまった
という点において、韓国政府にとっては「救済目的で国有化し、オーナー一族を追放する」にはちょうどよいスケープゴートでもあるのです。
自然に考えて、韓国が「ベネズエラ化」、つまり「反米左派政権による産業の国有化」に手を染めるならば、まずは大韓航空が手っ取り早いのではないでしょうか。
鈴置氏「文在寅政権は財閥国有化に動く」
ただし、鈴置氏の論考は、もっと踏み込んでいます。
それは、総選挙で大勝した文在寅(ぶん・ざいいん)政権が、一気に財閥の国有化に動く、という見立てです。
文在寅氏の出身母体でもある「ともに民主党」が圧勝したことを受け、鈴置氏は、次のように指摘します。
「これで憲法改正以外はどんな法案も通せます。
検察官や裁判官、高級公務員を狙い撃ちにする『高官不正捜査庁』――韓国語を直訳すると『高位公職者犯罪捜査処(公捜処)』も7月の発足が可能になりました(「文在寅政権が韓国の三権分立を崩壊させた日 『高官不正捜査庁』はゲシュタポか」参照)。」
これぞまさに、左派独裁――行政、司法、立法の三権を握り、やりたい放題やる――という意味では、「ベネズエラ化」そのものですね(あるいは韓国人や日本のサヨクの皆さんが大好きな用語を使えば、「ナチス化」、とでも言えば良いでしょうか)。
もちろん、このような「左派独裁」構造が実現した最大の理由は、何といっても武漢コロナ問題ですが、
ただ、これがなかったとしても、鈴置氏は韓国が「左派独裁」に至るか、
「左派と保守派の争いが泥沼化する」かのどちらかだと主張していましたので、予測を外していない点では変わりません。
鈴置氏の「保守の没落は構造的」の意味は「親米の没落は構造的」
さて、鈴置氏は論考で「保守の没落は構造的」とする一節を設けているのですが、
この点については、韓国で経済・社会格差が拡大していることについて、保守に対して逆恨みする人が増えているという事情があることは事実でしょう。
もちろん、今日、韓国で失業が社会問題化している最大の理由は、
「保守派」ではなく文在寅氏自身の雇用政策の失敗という側面が大きいのですが(『ほら見たことか、強引な最低賃金規制が韓国の雇用を破壊する』等参照)、どうも韓国国内では「文在寅(氏)が問題だ」、とは考えないようです。
このあたり、うまく社会の不安や不満を煽って政権を奪取した1930年代のドイツのナチス党や、2009年の日本の民主党と、事情はそっくりですね。
今回の総選挙も、格差に取り残された「持たざる者」(※これが今回の鈴置論考のタイトルでもあります)の反乱という側面があったのかもしれませんが、これは言い換えれば、「親米派に対する逆恨み」のようなものではないでしょうか。
鈴置氏の論考では「保守」という単語を使っていますが、当ウェブサイトの見立てでは、この「保守派」とは「親米派」と同じであり、必然的に「保守派の没落」は「親米派の没落」を意味します。
そして、「保守の没落」「親米派の没落」は、「市場主義の否定」、「産業の国有化」に至るのです。
左右逆転の皮肉
保守政権下で雇用を拡大した日本
ちなみにこの鈴置論考を読んで、個人的にまっさきに思い出したのは、アベノミクスです。
安倍晋三総理大臣が「三本の矢」を引っ提げて2012年12月に再登板した際、その最初の項目が「金融緩和」でした。
そして、安倍総理はちょうど任期満了を迎えた白川方明・日銀総裁の代わりに、当時のアジア開発銀行(ADB)総裁だった黒田東彦氏を指名したのです。
当時、金融市場では「白から黒へ」などと揶揄されたのですが、2013年4月4日、黒田氏が金融政策決定会合で「異次元緩和」を打ち出し、まずは国債市場が「ぶっ壊れ」ました。
市場からどんどんと国債が消滅し、金利が低下の一途をたどったのです。
当たり前ですね。
物価とは「モノの値段」であるだけでなく、「カネの値段」でもあります。
市中から国債をガバッと買い入れればその代金が世の中にあふれますし(=資金供給の増大)、カネが世の中にジャブジャブと溢れれば、物価は上がる(=カネの値段が下がる)はずだからです。
もっとも、「安倍・麻生連立政権」の「もう一人の総理大臣」である麻生太郎総理(厳密には「副総理兼財相」ですが、本稿では「麻生総理」と呼びます)が、アベノミクスの「第二の矢」である財政政策を渋ったおかげで、アベノミクスは金融緩和一本足打法のままで7年間を過ごして来てしまいました。
しかし、金融緩和のおかげで、間違いなく日本の雇用は好転しましたし、若干人為的な面もあるとはいえ、株価も民主党政権下の最安値水準と比べ、3倍近くになっているのは事実でしょう。
左派政権が伸びる理由はよくわからないが…
つまり、非常に意外な話ですが、日本は「保守」である安倍政権のもとで雇用を拡大し、そのことで(中途半端であるとはいえ)経済は回復し、雇用が安定して来たことで、それが安倍政権の高い支持率となって表れているという見方をして良いでしょう。
(※個人的には現在のアベノミクスでは不十分であり、財務省と消費税法を廃止したうえで国債を372兆円増発すべきだと考えているのですが、この点については別稿でまたじっくりと議論します)。
そして、経済学的には、左派の文在寅政権こそが韓国の雇用を破壊した主犯のひとりです(なぜか量的緩和に踏み切らない韓国銀行もその犯人のひとりだと思いますが…)。
そんな左派政権を好き好んで支持した韓国国民の心理、まことに申し訳ないのですが、正直、理解できません。
理解できないのですが、それでも1930年代のドイツで発生した事例のように、「人間は極限状態に置かれると極論を唱える政党に投票してしまう」という点については、歴史にきちんと学ぶべき論点のひとつであることは間違いないでしょう。
実際、鈴置氏は次のように指摘します。
「もちろん、大韓航空は手始め。財閥国有化の本丸はサムスン電子と見る人が多い。それはいつかじっくりとお話しますが。」
財閥国有化の本丸は、サムスン電子!
ベネズエラが「外貨の稼ぎ頭」である石油産業を国有化したように、韓国も「外貨の稼ぎ頭」である半導体産業を国有化するつもりでしょうか。
そして、ベネズエラが米国との関係を損ね、結果的に石油産業が壊滅したように、韓国も米国との関係を損ね、半導体産業が壊滅することになるとしたら、皮肉というよりほかありません。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
いずれにせよ、韓国の左傾化と独裁化、産業国有化と反米国家化という鈴置氏が予言してきた内容が成就し始めていることは間違いありません(もちろん、軍部によるクーデター、米国による北朝鮮侵攻などの「ウルトラC」でもあれば、話は別かもしれませんが…)。
そのうえで、私たちが最も備えなければならないことは、朝鮮半島がキューバやベネズエラ、ジンバブエのような状態になり、そこからたくさんの人々が「最も近い安全国」(?)である日本に、政治・経済難民として押し寄せることではないかと思う次第です。
これについては引き続き、じっくりと議論し続けたい論点です。
ベネズエラ=韓国説
ベネズエラを研究する目的
日本からこんなに遠い国の事例を、唐突にわざわざ持ち出してどうするのか、というご批判があることは承知しています。
しかし、ベネズエラは「モノカルチャー経済の国が反米思想に凝り固まった独裁者によって米国との関係を決定的に損ねた結果、経済を崩壊させてしまう」という意味では、教訓として一般化できることもまた事実でしょう。
しかし、古今東西、どんな国であっても、「永遠の友好関係」というものは存在しませんし、「永遠の敵対関係」というものも存在しません。
どんな密接な友好国同士であっても、仲違いすることもありますし、逆に、どんな仲が悪い国同士であっても、こうした「仲が悪い状態」が解消することもあります(※もっとも、それは「仲直りする」のではなく、「片方の国が滅亡する」、というパターンのことも多いようですが…)。
したがって、仲が良かったはずの国が、ある日突然、断交する、ということも、歴史的にはいくらでも事例がありますし、現代社会でもそれが発生しないとは断言できません。
何のことを言っているのかといえば、日本のすぐ隣に、見た目は「親米国家」であるものの、いまや急激に共産化・反米化しようとしている国があるからです。
それが、韓国です。
鈴置氏の「韓国のベネズエラ化」論
当ウェブサイトとしてはこの「韓国のベネズエラ化」説を強く支持しているのですが、じつは、これを初めて言い出したのは、当ウェブサイトではありません。
韓国観察者の鈴置高史氏です。
鈴置氏は今から1年以上前、『デイリー新潮』に次のような論考を発表しました。
文在寅で進む韓国の「ベネズエラ化」、反米派と親米派の対立で遂に始まる“最終戦争”
米韓同盟が音もなく崩れ始めた。韓国人の過半が「米国に支払う経費負担を増すぐらいなら、在韓米軍に出て行ってもらったほうがいい」と言い出したのだ。
―――2019/02/12付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
今になってリンク先の記事を読んでいただくと、きっと「本当にこれが1年以上前に執筆されたものなのか」と驚く方が多いと思います。
というのも、「反米派と親米派の対立」という構図、今でこそ当たり前ですが、これを昨年の時点で喝破していた人物は、非常に少数だからです。
じつは、当ウェブサイトでも「韓国のベネズエラ化」については非常に強い関心を抱いているのですが、その関心を抱くきっかけを与えてくれたのが、この鈴置氏の論考なのです。
あえて当ウェブサイトなりに目についた箇所を抜粋して大雑把に要約すると、次のような点が指摘されています。
•キューバがベネズエラを食い物にしたように、北朝鮮が韓国を食い物にする
•カストロとチャベスの関係は、金正恩と文在寅の関係と類似している
•左派政権は米国への反発をきっかけに誕生し、産業の国有化というプロセスを辿る
まったくそのとおりでしょう。
キーワードは「左派」と「産業の国有化」
さて、その鈴置氏が、昨日、デイリー新潮に最新稿を発表しています。
財閥国有化に動く文在寅…“持たざる者の怨念”で総選挙圧勝を追い風に まずは大韓航空
総選挙で大勝した文在寅(ムン・ジェイン)政権が財閥国有化に動く――と、韓国観察者の鈴置高史氏は読む。
<<…続きを読む>>
―――2020年4月21日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
この論考について、当ウェブサイトとしては、記事全文を転載したりすることはしません。というよりも、真っ先に申し上げたいことは、
「まずは読んで下さい」
です。
とくに、先ほど紹介した2019年2月の「鈴置論考」とあわせて読めば、驚くほど筋が通っていて、まるで詳説か何かを読んでいる錯覚に陥ります。
昔から「現実は小説より奇なり」と言いますが、本当によくぞここまで整合しているものだと驚くよりほかありません。
そして、本稿は先週・4月15日に行われた韓国国会議員総選挙で、与党「ともに民主党」が衛星政党を含めて300議席中180議席を獲得する圧勝となったことを受けて、初の鈴置論考でもあります。
上記「韓国のベネズエラ化」というキーワードを知らない人が読むと、「国有化」という一見地味なタイトルで読み飛ばしてしまう人もいるかもしれませんが、これは非常に重要な論考なのです。
産業国有化と反米化
最初に向かう先は「大韓航空の国有化」
さて、唐突にわき道にそれます。
『大韓航空「資金ショート」はコロナだけのせいではない』などでも取り上げましたが、韓国を代表する「ナショナル・フラッグ・キャリア」でもある大韓航空が、経営危機に陥っています。
ただ、当ウェブサイトの見解としては、例の武漢コロナウィルスの蔓延にともなう運航便の激減は、同社の経営危機の「直接の原因」ですが、それだけとは思えません。
1ヵ月や2ヵ月、運航便がすべて停止してしまうだけで、資金ショートを発生させるというのも、おかしな話だからです。
財務分析論の立場から見た大韓航空の経営危機の「真の原因」とは、脆弱な自己資本と過度な借金体質、過剰投資、つまり同族経営にありがちな放漫経営による「自業自得」という側面が強いのではないかと見ています(※ちなみに新宿会計士は「公認会計士」であり、財務分析は本業のひとつです)。
そして、大韓航空とは、
•もともと国営企業だったのに、韓進グループのオーナー一族が支配する同族会社と成り果ててしまった
•オーナーの放漫経営により、高コスト体質、脆弱な自己資本、過大投資という肥満体になってしまった
という点において、韓国政府にとっては「救済目的で国有化し、オーナー一族を追放する」にはちょうどよいスケープゴートでもあるのです。
自然に考えて、韓国が「ベネズエラ化」、つまり「反米左派政権による産業の国有化」に手を染めるならば、まずは大韓航空が手っ取り早いのではないでしょうか。
鈴置氏「文在寅政権は財閥国有化に動く」
ただし、鈴置氏の論考は、もっと踏み込んでいます。
それは、総選挙で大勝した文在寅(ぶん・ざいいん)政権が、一気に財閥の国有化に動く、という見立てです。
文在寅氏の出身母体でもある「ともに民主党」が圧勝したことを受け、鈴置氏は、次のように指摘します。
「これで憲法改正以外はどんな法案も通せます。
検察官や裁判官、高級公務員を狙い撃ちにする『高官不正捜査庁』――韓国語を直訳すると『高位公職者犯罪捜査処(公捜処)』も7月の発足が可能になりました(「文在寅政権が韓国の三権分立を崩壊させた日 『高官不正捜査庁』はゲシュタポか」参照)。」
これぞまさに、左派独裁――行政、司法、立法の三権を握り、やりたい放題やる――という意味では、「ベネズエラ化」そのものですね(あるいは韓国人や日本のサヨクの皆さんが大好きな用語を使えば、「ナチス化」、とでも言えば良いでしょうか)。
もちろん、このような「左派独裁」構造が実現した最大の理由は、何といっても武漢コロナ問題ですが、
ただ、これがなかったとしても、鈴置氏は韓国が「左派独裁」に至るか、
「左派と保守派の争いが泥沼化する」かのどちらかだと主張していましたので、予測を外していない点では変わりません。
鈴置氏の「保守の没落は構造的」の意味は「親米の没落は構造的」
さて、鈴置氏は論考で「保守の没落は構造的」とする一節を設けているのですが、
この点については、韓国で経済・社会格差が拡大していることについて、保守に対して逆恨みする人が増えているという事情があることは事実でしょう。
もちろん、今日、韓国で失業が社会問題化している最大の理由は、
「保守派」ではなく文在寅氏自身の雇用政策の失敗という側面が大きいのですが(『ほら見たことか、強引な最低賃金規制が韓国の雇用を破壊する』等参照)、どうも韓国国内では「文在寅(氏)が問題だ」、とは考えないようです。
このあたり、うまく社会の不安や不満を煽って政権を奪取した1930年代のドイツのナチス党や、2009年の日本の民主党と、事情はそっくりですね。
今回の総選挙も、格差に取り残された「持たざる者」(※これが今回の鈴置論考のタイトルでもあります)の反乱という側面があったのかもしれませんが、これは言い換えれば、「親米派に対する逆恨み」のようなものではないでしょうか。
鈴置氏の論考では「保守」という単語を使っていますが、当ウェブサイトの見立てでは、この「保守派」とは「親米派」と同じであり、必然的に「保守派の没落」は「親米派の没落」を意味します。
そして、「保守の没落」「親米派の没落」は、「市場主義の否定」、「産業の国有化」に至るのです。
左右逆転の皮肉
保守政権下で雇用を拡大した日本
ちなみにこの鈴置論考を読んで、個人的にまっさきに思い出したのは、アベノミクスです。
安倍晋三総理大臣が「三本の矢」を引っ提げて2012年12月に再登板した際、その最初の項目が「金融緩和」でした。
そして、安倍総理はちょうど任期満了を迎えた白川方明・日銀総裁の代わりに、当時のアジア開発銀行(ADB)総裁だった黒田東彦氏を指名したのです。
当時、金融市場では「白から黒へ」などと揶揄されたのですが、2013年4月4日、黒田氏が金融政策決定会合で「異次元緩和」を打ち出し、まずは国債市場が「ぶっ壊れ」ました。
市場からどんどんと国債が消滅し、金利が低下の一途をたどったのです。
当たり前ですね。
物価とは「モノの値段」であるだけでなく、「カネの値段」でもあります。
市中から国債をガバッと買い入れればその代金が世の中にあふれますし(=資金供給の増大)、カネが世の中にジャブジャブと溢れれば、物価は上がる(=カネの値段が下がる)はずだからです。
もっとも、「安倍・麻生連立政権」の「もう一人の総理大臣」である麻生太郎総理(厳密には「副総理兼財相」ですが、本稿では「麻生総理」と呼びます)が、アベノミクスの「第二の矢」である財政政策を渋ったおかげで、アベノミクスは金融緩和一本足打法のままで7年間を過ごして来てしまいました。
しかし、金融緩和のおかげで、間違いなく日本の雇用は好転しましたし、若干人為的な面もあるとはいえ、株価も民主党政権下の最安値水準と比べ、3倍近くになっているのは事実でしょう。
左派政権が伸びる理由はよくわからないが…
つまり、非常に意外な話ですが、日本は「保守」である安倍政権のもとで雇用を拡大し、そのことで(中途半端であるとはいえ)経済は回復し、雇用が安定して来たことで、それが安倍政権の高い支持率となって表れているという見方をして良いでしょう。
(※個人的には現在のアベノミクスでは不十分であり、財務省と消費税法を廃止したうえで国債を372兆円増発すべきだと考えているのですが、この点については別稿でまたじっくりと議論します)。
そして、経済学的には、左派の文在寅政権こそが韓国の雇用を破壊した主犯のひとりです(なぜか量的緩和に踏み切らない韓国銀行もその犯人のひとりだと思いますが…)。
そんな左派政権を好き好んで支持した韓国国民の心理、まことに申し訳ないのですが、正直、理解できません。
理解できないのですが、それでも1930年代のドイツで発生した事例のように、「人間は極限状態に置かれると極論を唱える政党に投票してしまう」という点については、歴史にきちんと学ぶべき論点のひとつであることは間違いないでしょう。
実際、鈴置氏は次のように指摘します。
「もちろん、大韓航空は手始め。財閥国有化の本丸はサムスン電子と見る人が多い。それはいつかじっくりとお話しますが。」
財閥国有化の本丸は、サムスン電子!
ベネズエラが「外貨の稼ぎ頭」である石油産業を国有化したように、韓国も「外貨の稼ぎ頭」である半導体産業を国有化するつもりでしょうか。
そして、ベネズエラが米国との関係を損ね、結果的に石油産業が壊滅したように、韓国も米国との関係を損ね、半導体産業が壊滅することになるとしたら、皮肉というよりほかありません。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
いずれにせよ、韓国の左傾化と独裁化、産業国有化と反米国家化という鈴置氏が予言してきた内容が成就し始めていることは間違いありません(もちろん、軍部によるクーデター、米国による北朝鮮侵攻などの「ウルトラC」でもあれば、話は別かもしれませんが…)。
そのうえで、私たちが最も備えなければならないことは、朝鮮半島がキューバやベネズエラ、ジンバブエのような状態になり、そこからたくさんの人々が「最も近い安全国」(?)である日本に、政治・経済難民として押し寄せることではないかと思う次第です。
これについては引き続き、じっくりと議論し続けたい論点です。