日本と世界

世界の中の日本

韓国が求める輸出規制強化の撤回、日本が呑めぬ理由

2020-05-20 21:31:24 | 日記
韓国が求める輸出規制強化の撤回、日本が呑めぬ理由

貿易管理の問題を再び元徴用工の問題にすり替えさせてはならない


2020.5.20(水) 武藤 正敏

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

文在寅政権は、日韓関係において歴史問題にこだわり、元慰安婦問題、元朝鮮半島出身労働者問題(いわゆる「徴用工」問題)など、既に解決済みの問題を繰り返し持ち出し、日本側から新たな譲歩を引き出そうとしてきた。

しかし、こうした問題は日韓請求権問題の根幹に触れる問題であり、日本側が取り合うはずもなく、現在も宙に浮いたままの状態となっている。

尹美香疑惑に当惑する韓国の政府与党

そうした中、元慰安婦・李容洙(イ・ヨンス)さんが、正義記憶連帯(以下「正義連」。

旧称・韓国挺身隊問題対策協議会[挺対協])の尹美香(ユン・ミヒャン)前理事長が寄付金を慰安婦のために使わず、私的に流用したのではないか等の疑惑を提起したため政府与党は当惑した状態になっている。

当初、与党は正義連とその元理事長を庇う姿勢をとり、

「この問題を積極的に取り上げるのは親日勢力の野党・未来統合党と保守メディアだ」と逆に批判するような有様だったが、

尹氏の疑惑が深まるにつれ、このまま静観できないとの雰囲気が広がってきた。

市民団体の告発を受け検察が動き出したことも、政府与党を焦らせたはずだ。

これまで、国内で政権に対する問題が持ち上がると、国内世論を宥めるため、韓国政府与党は「親日批判」と「反日」を利用してきた。

こうした見地に立つと、日本の韓国への輸出規制強化の問題はこれまで固有の貿易管理の問題として通商当局の間で対話を進めてきたわけだが、そこで片付かないとなると、再び元徴用工問題の報復との議論にすり替えてくる可能性もある。


それは日本としては看過できない事態となる。


貿易管理の問題が燃え上ったのは1年前であるので、詳細を忘れてしまった読者も少なくないと思う。

そこで、当時の経緯を含め、その後の対話、韓国における制度是正の動き、現在の両国の立場、そして残された問題について解説してみよう。

輸出規制強化の問題は韓国の杜撰な貿易管理を是正する問題

韓国の成允模(ソン・インモ)産業通商資源部長官は今年の3月6日、日本が韓国に対する輸出規制の強化の理由として挙げた事項をすべて解消したとして、日本に規制強化措置の撤回を強く求めてきた。

日本政府は昨年7月に半導体・ディスプレー材料であるフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジスト(感光材)の3品目の韓国への輸出規制を強化し、8月には輸出管理の優遇対象である「グループA(ホワイト国)」から韓国を除外した。

日本はその理由として

(1)両国間の輸出管理に関する政策対話が3年間開かれておらず、信頼関係が損なわれたこと、

(2)通常兵器に転用される可能性がある物質の輸出を管理するキャッチオール規制の法的根拠の不備、

(3)輸出管理体制、人員の脆弱性を挙げていた。

成長官は、規制強化の撤回を求めるにあたり、「この5か月間、両国の輸出管理当局は課長級会議や局長級の政策対話などを通じ、韓国の輸出管理に関する法規定、組織、人員、制度などについて十分に説明し、両国の輸出管理に対する理解を深めて十分な信頼を構築した」と述べた。

実際、韓国国会では、輸出管理の実効性を高める対外貿易法改正案が成立した。

これによって戦略物資の輸出許可に関する条文に、大量破棄兵器とともに「通常兵器」も厳しく審査することを明記した。

早ければ6月にも施行される。

その後4月には産業通商資源部内に貿易安保政策官の下に30人規模の組織を設けた。

こうした体制整備を行ったうえで、同部の李浩鉉(イ・ホヒョン)貿易政策官は5月12日の会見で、日本は韓国に対する3品目の輸出規制とホワイト国除外に関する立場を今月末までに明らかにすべきと主張した。



 韓国政府は、日本の輸入規制が施行された後、「これは日本による元徴用工問題に対する報復だ」として反発し、韓国として日本への輸出規制、WTOへの提訴といった報復措置を取るとともに、日韓のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)廃棄の動きを見せてきた。

なお、GSOMIA廃棄については米国介入により条件付きで期限を延長することになった。

その後、日韓はGSOMIAの扱いをめぐる協議の中で、輸出管理に関する対話を行うことになった。

当初韓国側は「日本の輸出規制強化撤回に関する協議だ」と主張し、日本側は「貿易管理に関する政策対話だ」と主張してかみ合わなかった。

しかし、韓国側は日本側に規制強化撤回を促すため貿易管理体制の整備を行った。

韓国は、これまで日韓の交渉では自国の国民感情を背景に、日本側に譲歩を迫ることがほとんどで、韓国側が客観的に日韓関係の相互利益に沿った対応をしたことは極めて珍しかった。

しかし、この輸出規制問題は歴史問題と異なり、国民感情を刺激する問題ではなく、ビジネスライクに現実的な対応をしたのだろう。

その点では、韓国側の対応と努力は評価してもいいのだろう。

日本側の規制強化撤廃を求めた「最後通牒」

しかし、日本側から色よい返事が得られないと悟ると、韓国側は最後通牒のように今月末までの規制緩和を求めてきた。

その理由として、次の2点が考えられる。

第一に、韓国が条件付きでGSOMIA延長を決めたのが昨年11月であり、それから6か月経つ。

この時点で、日本が規制強化を撤回する可能性があるか最終的に打診する必要があると考えた可能性がある。

韓国政府はこれまで水面下で対話を進めてきたが、日本側に誠意は見えないと受け止めている。

GSOMIAの終了の判断をこれ以上延ばしても成果はないと考えたのだろう。

第二に、新型コロナや米中の対立によって輸出が厳しくなっている韓国企業にとって、将来への不安を少しでも取り除きたいと考えた可能性だ。

米中対立によって、米国の対ファーウェイ制裁がメモリー半導体にまで拡大すれば、サムスンとSKハイニックスが直撃を受ける可能性があるからだ。


韓国は戦略物資の管理をどう運用しているか

しかし、日本側は制度の運用実態を見極めてから輸出優遇国に戻すかどうかを慎重に見極める対応だ。

特に文在寅政権は日米韓の連携よりも中朝に寄り添う姿勢であり、戦略物資が両国に不正に輸出されている可能性が排除できない。

そもそも日本政府が韓国に対する輸出規制強化に動いたのは、当初の3品目について不適切な再輸出の疑いをつかんだからである。

また、戦略物資について「ホワイト国」から除外したのは、韓国から戦略物資が無許可で流出した不正輸出案件が韓国側の資料で明らかになっているからである。

韓国産業通商資源部が国会議員に提供した資料によれば、2015年から19年3月までに156件の不正輸出があった。

これは核兵器や生物化学兵器の製造に利用可能な物質を含むものであり、
流出先は中国が最も多く、ほぼすべての東南アジア各国、ロシア、インド、パキスタン、イラン、シリア、アラブ首長国連邦などである。

これらの中には北朝鮮との関係が緊密な国々がいくつも含まれており、

北朝鮮にこうした物資が流れていれば日本の安全保障上大きな懸念材料となる。

しかし韓国は、こうした物資が韓国からさらに北朝鮮に輸出されたのではないかとの指摘について、「日本が一方的に嫌疑をかけたものである」と反発している。

ただ、北朝鮮に流れた疑いを晴らすべきは韓国であり、日本に反発するのは筋違いである

韓国はそもそも自主的にどの企業が関与し、どの国に再輸出され、何に使われたかの実態を調査し、日本に報告すべき問題である。

日韓の政策対話の中で果たしてこれが行われたのか。

行われていないとすれば、いかに組織や人員を強化しても、北朝鮮に強く寄り添い、中国には何も言えない韓国なのだから、「きちんと運用されているし、今後も運用されるであろう」と日本は確信できない。

梶山経済産業大臣は記者団の質問に15日、「引き続き様々なレベルで対話していく」と答えたが、これは「韓国側の対応はまだ十分でない」との立場を明らかにしたものだ。

北朝鮮の軍事技術の飛躍的向上の影に「韓国の技術」使用疑惑

 
朝鮮日報に、尹徳敏(ユン・ドンミン)元外交安保研究委員長が寄稿したところによれば、

昨年5月から北朝鮮が再三試射してきた長射程放射砲と短距離ミサイルが10年前延坪島を奇襲攻撃した北朝鮮軍からは想像できないほど飛躍的な進歩を遂げているのは米国や韓国の技術が流出しているとしか思えないという。

そのため、「延坪島の後、北朝鮮のハッキング部隊は韓国の国防科学研究所、国防部、国防関連企業に対する大々的なハッキング工作を展開した。

韓国国民を守るために開発された韓国の技術が北朝鮮に渡り、北朝鮮軍砲兵勢力の技術的急進の実現に用いられたと推定される。

また、少し前、国防科学研究所の研究員らが、機密を大量に国内外に持ち出したという報道もあった」というのである。

さらに韓国は、北朝鮮に対し輸出が禁止されている原油の海上における「瀬取り」の取り締まりを怠っている。

また最近では、陸海空軍による大規模合同火力訓練の実施予定だったのを、来月に延期したが、これは北朝鮮の非難を受けた青瓦台が「北朝鮮の顔色を窺い」延期することを指示したものだという。

このように政権発足以来続いている北朝鮮に対する一方的な接近姿勢は、韓国が北朝鮮の不法行為を取り締まれない実情を反映している。

さらに中国に対しては、習近平国家主席の年内訪韓を求め、その際THAADをめぐる報復措置を撤回してもらうことに汲々として、何も言えない。


このような韓国の実情は、気の毒なくらい卑屈である。

発足以来一貫して中朝に接近しようとしている文政権は、日米から離れ、「レッドチーム入り」することが懸念されている。

こうした状況では、いくら貿易管理の体制を高めても実行が伴わない恐れが強い。

日本が輸出管理の在り方を「ホワイト国」前の状況に戻せるのはこうして懸念が晴れてからである。


輸出管理の問題が再び日韓の政治問題に

日本が輸出規制強化の撤回に動かない場合、果たして韓国はどのように対応するだろうか。

月末までに日本側の対応がない場合、韓国はWTO提訴手続きを再開したり、GSOMIAカードを再び取り出したりする可能性がある。

新型コロナ対策で日韓ともに直近の経済の落ち込みが深刻となる中、日韓の対立が深まれば、経済にとってさらなる悪材料となるだろう。

総選挙後の文在寅政権は、歴史問題でいっそう対日強硬に転じる可能性がある。


『文在寅の謀略―すべて見抜いた』(武藤正敏著、悟空出版)


文大統領は先の総選挙で、新型コロナを封じ込めた成果によってこれまでの3年間の失政を問われることなく、圧勝し政治的な主導権を握った。

特に新型コロナの問題では、

監視カメラの活用、電話基地局とクレジットカードの情報を提供させ、

国民のプライバシーを犠牲にした強権的手法で新型コロナを封じ込めたが、

これも国民の支持も集めており、いっそうの“独裁体制”を確立したと言ってよい。

そうした独裁的手法を今度は日韓関係にも当てはめようとする可能性もある。

これまで、慰安婦や徴用工の問題で日本と対立・譲歩を求めて来ても、日本が応じなかったためなす術がなかった。

しかし選挙に勝利して強権的手法に味を占め、同様な手法で日本に対応することになれば、日韓関係はいっそうこじれることになろう。

 

6月以降の輸出管理の問題で、文大統領がWTO提訴再開やGSOMIA破棄をまた言い出すようならば、日韓関係を取り巻く歴史問題にも暗い影を落とすことになるだろう。

韓国 輸出「規制」撤回要求の正体

2020-05-20 21:06:40 | 日記
輸出「規制」撤回要求の正体

新宿会計士

目次 [非表示]

1 輸出「規制」撤回要求の正体1.1 輸出管理適正化措置の「本当のところ」

1.2 韓国政府の支離滅裂な主張

1.3 なぜ韓国は「輸出『規制』」の白紙撤回求めるのか

2 「もやもや」解消する鈴置論考2.1 韓国が誇る「K防疫」裏目にクラスター

2.2 「先進国に昇格」で支持率上昇

2.3 「日本より上か、下か」、「発展途上国に逆戻り」


3 まずは距離置くべき3.1 鈴置氏「どっちに転んでも厄介」

3.2 「積極的放置」+「消極的制裁」?


輸出「規制」撤回要求の正体

輸出管理適正化措置の「本当のところ」

日本政府が昨年7月1日に発表した、韓国に対する輸出管理体制の厳格化・適正化措置を巡っては、これまで当ウェブサイトではくどいほど何度も何度も取り上げてきたつもりです。

当ウェブサイトの見方ですが、日本政府がこれを発動した直接のきっかけは、おそらく、韓国側で日本から輸出された「3品目」(フッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミド)のすべてまたはいずれかを巡り、物資の横流しか目的外利用がなされたからだと考えています。

といっても、これについては合理的な確証があるわけでもありませんし、経済産業省職員やメーカー関係者などの内部者から直接聞いたわけではありません(というよりも、もし内部者から直接聞いたのなら、不特定多数の人が読んでいるであろう当ウェブサイトにその内容を書くわけがありませんが…)。

あくまでも、ワッセナーアレンジメントをはじめとする国際的な輸出管理レジームや外為法の規定などを自分自身で読み込んだ知識に加え、当時の世耕弘成経産相が8月8日付の記者会見で


「あわせて、輸出許可申請についても引き続き厳格な審査を行って、迂回貿易ですとか目的外使用といった事例が出ることがないように、厳正に対処をしていきたいというふうに思っています」(※下線部は引用者による加工)

と発言した、などの客観的に誰でも確認できる情報と照らし合わせて、そのように考えているだけの話です。

韓国政府の支離滅裂な主張

ただ、韓国政府(や一部の日本側の自称有識者など)は、そうは考えていないようです。

彼らに言わせれば、日本政府が講じた措置は「輸出『規制』」であり、直接のきっかけは韓国が「強制徴用判決」(※自称元徴用工判決のこと)などを巡って日本企業の利益を侵害しようとしたことに対する経済報復の意味合いがある、ということだそうです。

ちなみになぜこれが経済制裁でも報復でもないのかについては、『総論 対韓輸出管理適正化と韓国の異常な反応のまとめ』や『輸出管理の「緩和」を「対韓譲歩」と勘違いする人たち』などで何度も指摘して来ましたので、本稿では繰り返しません。

重要なことは、日本政府の公式な立場と韓国政府の公式な立場がまったくかみ合っていないという事実であり、

また、『韓国政府「日本は5月末までに輸出規制の答えを出せ」』などでも取り上げているとおり、韓国政府側が繰り返し、その「輸出『規制』」とやらの撤回を求めている、という事実でしょう。

日本の輸出管理適正化措置を巡る韓国側の主張を要約すると、だいたい次の3点です。

•①韓国は日本の「輸出『規制』」ではまったく困っていない。

•②韓国は今後脱日本化を進める。

•③日本は速やかに「輸出『規制』」を撤回すべきだ。

…。

不思議と言わざるを得ません。というのも、①~③を「流れ」で見ると、明らかに支離滅裂だからです。

そもそも論ですが、

①韓国は今回の日本の「輸出『規制』」ではまったく困っていないというのなら、なぜ

②韓国は今後、脱日本化を進める、などと宣言するのでしょうか。また、②韓国が今後、脱日本化を進める、などと宣言するのならば、なぜ

③日本は速やかに「輸出『規制』」を撤回せよ、と要求するのでしょうか。

これらの①~③をバラバラで見ると、それぞれの文章は曲がりなりにも筋が通っているように見えなくもありませんが、「流れ」にしてしまうと、とたんに支離滅裂になってしまうのです。

大変申し訳ないのですが、少しでも論理学をかじった人であれば、さすがにここまで支離滅裂な主張をしないでしょう。

なぜ韓国は「輸出『規制』」の白紙撤回求めるのか

さて、なぜ韓国はそもそも、日本に対して「輸出『規制』」の白紙撤回を求めているのでしょうか。

この点、当ウェブサイトでは、あまり深く突っ込んできませんでした。せいぜい、先ほどの①~③の流れを確認して、


「はい。韓国政府の主張は、支離滅裂ですね。」

でおしまいだったのではないかと思います。

ただ、この点については、自分のなかでも「もやもや」が残っていたことも事実です。

韓国が日本の輸出管理上の「(旧)ホワイト国」(※現在の「グループA」)から外されたことは事実ですが、ほとんどの輸出品目についてはたいした影響を受けておらず、また、輸出管理が厳格化された3品目についても、べつに「禁輸措置」が講じられたわけでもないからです。

日本の輸出管理適正化措置をつぶさに検討すれば、これが経済制裁でも貿易報復でも何でもないことは明らかですし、韓国政府が公式にも表明している「韓国側は何も困っていない」というのも、あながち実態から離れているとは言えないでしょう。

ということは、韓国政府がしつこく、「日本は輸出『規制』を解除しろ」と言い続けている点には、なにかほかの理由があるように思えてなりません。

「もやもや」解消する鈴置論考

韓国が誇る「K防疫」裏目にクラスター

こうしたなか、その「もやもや」を解消してくれる非常に優れた論考が、昨日、『デイリー新潮』に掲載されました。それが、次の論考です。

韓国は「防疫の模範」が裏目でクラスター、それでも「世界を先導」という自己暗示

韓国を新型肺炎の第2波が襲う。「世界を先導する防疫模範国」の自信は揺らぐのか。

韓国観察者の鈴置高史氏が読む。

<<…続きを読む>>


―――2020年5月19日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より

執筆者は当ウェブサイトで何度も紹介している、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏です。

鈴置氏といえば、約1週間前、5月11日付で『「防疫で世界を先導」と胸を張る文在寅、「反面教師に」と冷ややかな安倍晋三』という記事も執筆しており、いわば、2週間連続で「K防疫」を取り上げた格好です。

今回の論考は小見出し、引用部分などを含めて8000文字以上に達する長文ですが、文章がすっきり読みやすいことに加え、記載されている内容の多くが客観的な根拠を伴っている点などを含め、非常に説得力のある良文に仕上がっているため、すっと頭に入ることは間違いありません。

(※余談ですが、鈴置論考は書かれている内容もさることながら、文章構成力にはいつも脱帽してしまうのです。)

さて、論考自体は「コロナの第2波が韓国に到来した可能性がある」というものであり、

当ウェブサイトでは『納得の鈴置論考、安倍発言の真意は「韓国は反面教師」』で予想したとおり、「ゲイクラスター」の件が取り上げられいます。

ただし、実際に文章を読んでいただければわかりますが、科学的根拠もなしに「これは第2波だ」と決めつけているのではなく、「第2の大邱」になるのかどうかは「現時点ではわからない」、と、非常に慎重な書き方に徹しています。

詳しい内容については是非、リンク先で直接ご確認いただきたいと思います。

「先進国に昇格」で支持率上昇

それよりも、本稿で取り上げたいのは、鈴置論考にある『「先進国に昇格」で支持率上昇』の一節です。


「鈴置:『ITの駆使』を含め、韓国の防疫法が世界でもっとも優れたものであり、世界が学んでいる――との誇りを韓国人が持つに至ったからです。

/5月10日の就任3周年特別演説で、文在寅大統領が『我々は防疫で世界を先導する国になっています。

K防疫は世界標準になったのです』と国民に呼びかけました。

/『K防疫』という単語は『K-POP』の転用ですが、『K』とは単に『韓国独自』の意味に留まりません。韓国人にとって『自分の国が世界をリードする先進国になった』ことの象徴なのです。」

韓国が「先進国」!

このくだり、普段から韓国について詳しく見ていない人にとっては、唐突にも聞こえるかもしれません。

しかし、韓国メディアを眺めていると、「韓国はまだ先進国入りできていない」だの、

「韓国はもう先進国入りした」だのといった記事がやたらと目につきます(たとえば2017年2月6日付中央日報日本語版『【コラム】韓国、なぜ先進国の敷居を越えられないのか』など)。

逆に言えば、文在寅(ぶん・ざいいん)政権は、「K防疫」なる用語をでっち上げることで、韓国国民が持つ「先進国というステータス」への憧れを逆手に取った格好です。

そして、4月中旬の国会議員総選挙で文在寅氏の出身母体である「ともに民主党」やその衛星政党などが圧勝したことも、こうした「韓国国民の『先進国意識』」という自尊心を微妙にくすぐった文在寅氏の勝利といえるかもしれません。

このことについて、鈴置氏は次のように指摘します。


「この政権が上手いのは『防疫の成功』を『先進国への昇格』と重ね合わせたことです。

仮に、少々失敗しても自らに批判の矛先が向かいにくい。そして人気を得るには、政権の手柄を強調せずとも『先進国に昇格』だけで十分なのです。」

まさにポピュリストの手法そのものでしょう。

いや、文在寅氏が「ポピュリスト」というだけでなく、韓国の有権者がそれにコロッと騙される人たちであるという点に、個人的には絶望を覚える次第ですが…。

「日本より上か、下か」、「発展途上国に逆戻り」

さて、もうひとつ、鈴置論考でズバリ指摘されているのが、韓国の「異様な思考方式」です。


「『日本より上か、下か』『日本に勝ったか、負けたか』ばかりを考える――。

韓国人のそんな異様な思考方式が、新型肺炎の流行で改めて明らかになったのです。」

これは、韓国側のあるツイッター・ユーザーの発信やメディアの記事などをもとに、

「ダイヤモンドプリンセス号の検疫に失敗した」だの、

「日本のコロナ対策は韓国と比べて遅すぎる」だのといった論調を取り上げた際に出てくる表現です。

「K防疫」で「世界に冠たるコロナ防疫」を誇った以上、韓国にとっては「日本より下」であってはならない――。

これが、おそらく韓国社会を貫くテーマなのでしょう。

鈴置氏はまた、日本政府が3月9日以降適用した、「韓国国民に対するビザなし入国措置の停止」について、次のように指摘します。


「――入国を制限されることより、感染の拡大を防ぐほうが重要ではないのですか?

鈴置:それも『先進国化』に関係します。韓国人はビザ無しで入国できる国の数が多いことが先進国の証(あかし)と考えています。

歴代政権は各国政府に対し、執拗に『韓国人をビザ無しで入国させよ』と迫っています。」…。

これは、とても重要な指摘です。

なぜなら、韓国が執拗に「ビザなし入国」を要求する心理が、そのまま「日本は輸出『規制』を白紙撤回せよ」と要求する心理と、そのまんま同じだからです。

実際、今回の鈴置論考では、「発展途上国に逆戻り」とする節で、こんな表現が出てきます。


「最近、韓国政府が日本に対し『輸出規制をやめよ』と迫っています。

これも、いわゆる『ホワイト国』から外され『途上国待遇』に落とされた、という不快感の反映なのです。」

おそらく、これがすべてなのでしょう。

まずは距離置くべき

鈴置氏「どっちに転んでも厄介」

以上より、韓国の国内では、どうやら「わが国はいまや『アジア1番の先進国』だった日本にコロナ防疫で勝利した」という「自信」(というよりも単なる「幻想」でしょうか?)が社会を席巻しているように見受けられるのです。

通常ならば、「はい、そうですか。」「そう思いたいなら、そう思えば良いのではないですか?」で済むのですが、韓国の場合はそういうわけにはいきません。

なぜなら、根拠のない自信とは劣等感の裏返しだからです。

だからこそ、くどいほど「韓国は先進国だよね?」という確証を得ようとするのでしょう。

これを鈴置氏は、次のように解き明かします。


「日本人には『日本よりも韓国が上』との言説が目に付きやすい。

でも、正確に言えば韓国人が追い求めているのは『西洋から尊敬される』とか『中国よりも上』といった――一口で言えば、我が国は先進国なのだ、劣った存在ではない、との確証なのです。」

端的に言えば、厄介です。

なぜなら、根拠のない自信に関する承認欲求を満たすために、これから韓国は何度も何度も、日本に対して意味不明なマウントを繰り返すであろうと予測が付くからです。

しかも、実力を伴わない自信は、現実に直面すると、もろくも崩れ去ります。

たとえば、通貨ポジションが脆弱な韓国に通貨危機が襲い掛かれば、韓国経済はひとたまりもありません。

また、通貨危機とまではいかなくても、輸出依存度が異常に高い韓国は、中国経済の減速による逆風を正面から受ける国でもあります。

この点、鈴置氏はいつもどおり、「嫌な予想」をします。

•もしも韓国が経済などで失敗すれば、自信を失い、精神が不安定になって、恨みのこもったまなざしで日本を見ながら「先進国になれないのは日本が邪魔をしているからだ」と言い出しかねない

•もしも韓国が経済成長を続けることに成功すれば、日本を上から目線で罵倒したり、無理難題を吹っ掛けてきたりする…。

嫌な現実ですね(笑)

「積極的放置」+「消極的制裁」?

では、私たちの国・日本にとってはこの嫌な現実をどうコントロールすれば良いのでしょうか。

この点については当ウェブサイトの見解で恐縮ですが、『日韓関係を「自然消滅」させるというアイデア』でも触れたとおり、とりあえず日本政府は日韓関係をあえて改善させずに積極的に放置しているフシがあります。


いわば、

「現在の日韓関係の膠着状況を積極的・戦略的に放置することで、韓国側がボロを出し、破綻するチャンスを待っている」

という戦略ですね。

もちろん、『米中対立局面で日韓関係をあまり「放置」できない理由』でも報告したとおり、当ウェブサイトとしては、この「積極的放置」+「消極的制裁」という組み合わせについては、全面的に賛同しているわけではありません。

米国の政権交代などのリスクがあるからです。

しかし、下手に韓国と関わるのは得策ではないという点に関してはまったくそのとおりでしょう。

この点、昨日公表された、外務省の『令和2年度外交青書(要約版)』(P7~)によれば、韓国は次のように表現されています。

「韓国は、日本にとって重要な隣国であり、日韓両国は、1965 年の国交正常化の際に締結された日韓基本条約、日韓請求権・経済協力協定その他関連協定の基礎の上に、緊密な友好協力関係を築いてきた。

しかし、2019 年は、前年に続き、旧朝鮮半島出身労働者問題に関し韓国が依然として国際法違反の状態を是正していないことを始め、

日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の終了通告(ただし、後に終了通告の効力を停止)、慰安婦問題に関する「和解・癒やし財団」の解散に向けた動き、

韓国国会議員などによる竹島上陸や竹島における軍事訓練、竹島周辺海域における韓国海洋調査船の航行、東京電力福島第一原発の処理水に関する韓国側による非建設的な問題提起など、韓国側による否定的な動きは止まらず、日韓関係は厳しい状況が続いた。

このような中、日韓間では、12 月には、1 年 3 か月ぶりとなる日韓首脳会談を実施したほか、頻繁に外交当局間の協議を行った。」

これをどう見るかはさまざまですが、個人的には「本来ならば韓国は日本にとって重要な隣国であるはずが、現在、日韓友好に反する非合理な動きが韓国側から相次いでいるが、日本は首脳会談や外交当局間の協議を行うなど、関係維持の努力は続けている」、と読みました。

つまり、原理原則から一歩も譲らず、それでいて対話を続けているよ、というポーズですね。

いずれにせよ、現状の日韓関係がどう推移するかについては、引き続き目が離せない展開が続くであろうことは間違いなさそうです。

敗戦後、朝鮮で日本人1万7千人超が惨死した

2020-05-20 15:28:11 | 日記
ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。

この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

敗戦後、朝鮮で日本人1万7千人超が惨死した

2019-03-19 08:49:37 | 歴史


 敗戦後、朝鮮半島で抑留された日本人の一般市民17,690名が惨死したことを伝える記録があります。偽りの徴用工問題より、人道上はるかに重大な問題です。
 
次のブログに詳細が掲載されています。
https://tainichihate.blog.fc2.com/blog-entry-359.html#Q80eJjG.facebook_share_ninja_l
 
記事は、『秘録 大東亜戦史』(富士書苑、昭和28年刊)所収の元京城日本人世話会・森田芳夫氏が書いた「朝鮮引揚史」に基づくものです。ブログの記事は 本書から引用しなから、この史実を伝えています。
 
森田芳夫氏については、デジタル版 日本人名大辞典+Plusが次のように記しています。

###############

森田芳夫 もりた-よしお
 1910-1992 昭和時代の官吏。明治43年生まれ。京城帝大で朝鮮史をまなび,朝鮮総督府勤務のとき終戦をむかえる。戦後,外務省にはいり,14年にわたる日韓国交正常化交渉の記録にとりくむ。退職後ソウルの誠信女子大でおしえた。この間,日本人引き揚げ者からの聞き取り作業をつづけ,昭和39年「朝鮮終戦の記録」を刊行。平成4年8月3日死去。82歳。

###############

 ブログの記事の筆者の文章の部分から、以下抜粋して編集し、概略を紹介します。関心のある方は、ブログにて全文をお読み下さい。

##################################

 戦後、朝鮮半島で虐殺された日本人17690名と言っても軍人ではありません。日本敗戦直後、朝鮮半島で虐殺された一般の日本人の数です。この中には赤ん坊や女性、子供も含まれています。
 
在鮮日本軍人のソ連への強制連行や引揚は終戦の翌年四月までに完了しましたが、日本の民間人は「米ソ協定締結後に送還する」という理由で戦後三年間も朝鮮半島に抑留されました。

その三年間の間に、朝鮮人、米軍、ソ連軍に全財産を没収された日本人は、家もなく乞食同然に野辺をさまよいながら朝鮮人の暴力や病気、飢餓、寒さなどで次々に死んでいきました。

その遺体は棺を買う金も、火葬する金もないためにコモやムシロで巻かれ土葬されました。
 
戦争は終わったのに、軍人ではない民間人が抑留され、殺されたのです。(略)
 
まず、米軍と朝鮮人は日本人の身ぐるみをはぐことから開始しました。朝鮮人は暴力で日本人の財産を接収し、接収後は日本人の立ち入りを禁止しました。また米軍も接収した日本人の資産を朝鮮人に管理させました。
 
次に米軍は日本に引き揚げる際の手荷物を二個まで、と規定して家財や他の荷物は宅配で送る、と言って日本人から手数料を取りました。しかし日本に帰還した人の手元に荷物は届きませんでした。

なぜなら、米軍と朝鮮人が荷をほどいて山分けしてしまったからです。

その上、米軍は在鮮日本人がすみやかに帰国できるよう、在鮮日本人が組織した日本人世話会の資金も凍結しました。
 
北朝鮮の咸興といえば、韓国ドラマにもよく登場する場所ですが、その咸興駅前で約4000人の日本人が乞食同然に寝起きしていました。
ある避難民は、ワラで編んだ袋を頭にかぶって雨にふるえながら鮮人家屋からゆうげの煙がのぼるのを見た時、家族と抱き合って泣きくずれた、と言っています。

そして咸興から移動させられた新中里(しんちゅうり)では、昭和21年1月までに日本人避難民6400名が死亡し、その後も一日50人平均で死んでいきました。
 
咸興から富坪(ふうひょう)に移動させられた日本人避難民は零下15度という極寒にありながらムシロ一枚とわずかな配給しかなく、栄養失調、発疹チフスなどの伝染病で1431名が死亡しました。
 
昭和21年1月なかば、日本人共産主義者の訴えで朝鮮側の検察が避難民の状態を視察しに来ました。しかし時すでに遅しで、富坪での日本人避難民死亡率は四割に達しました。
 
咸興の近隣にある興南には日本チッソがありましたが、それも北朝鮮に接収されました。その後、日本人は工場への立ち入りを禁止され、社宅を追放されて約3000名が死亡しました。
 
元山(げんざん)では日本人避難民に食糧の配給がありませんでした。ソ軍にかけあっても取り合ってくれないので、日本人は使役で働くからという条件を提示してわずかな配給を得ました。そして元山と高原では約1100名の日本人が、冬を越せずに死亡しました。
 平壌の日本人避難民は昭和20年12月から食糧の配給がなかったため、2371名が死亡しました。日本人はせまい収容所につめこまれ、仕事をすることも、持ち物を売ることも、商売も許されませんでした。
 
同じ平壌に和歌山県の開拓団がいましたが、南鮮に南下する途中で娘さんが行方不明になったそうです。それに、南下途中で死んだ家族を山に埋めたりもしているで、朝鮮で死んだ日本人避難民の数は17690名よりも、もっと多いと思います。
 
鎮南浦(ちんなんぽ)では約1700名の日本人避難民が死亡しました。そのうち200名は幼い子供たちで、死因は悪性のはしかでした。このはしかで、子供全員を失った母親もいたそうです。

新義州では発疹チフスが原因で日本人20名が死亡しました。
 
日本が36年間統治しても、朝鮮の不衛生は改善できなかったのです。まるで伝染病の巣窟のような朝鮮に、日本人は丸裸で投げ出され、次々と死んでいったのです。
 
これらの人々は朝鮮抑留がなければ、生きて日本に帰還できたはずでした。
 
日本の朝鮮統治36年間の間に、朝鮮で暮らし死んだ日本人の遺骨もありました。
 
これもふくめると、朝鮮半島には相当な数の日本人の遺骨があるはずです。
 
日本人の資産を接収したものの自力で運営できなかった北朝鮮は、日本人に残留を強制しました。のち、ソ軍から日本人引揚が許可されますが、南鮮に進駐していた米軍が「日本人移動禁止令」を発したため、北朝鮮に残留せざるを得なくなりました。
 
なぜ米軍がこんな禁止令を出したのかは不明です。
 
この日本に帰りたくても帰れなかった日本人たちは北朝鮮でどうなったのでしょうか? 「なりすまし」に利用されたのでしょうか?
 
「ヘイトだ!ヘイトだ!」とうるさい在日外国人は、日本人が朝鮮で受けたヘイトスピーチやヘイトクライム以上の暴力を日本で受けたことはないはずです。
 
現に、共産主義思想でいまだに「侵略」呼ばわりする資本主義国日本にコッソリ上陸して、戦前と同じように日本の福祉に寄生してヌクヌクと暮らしている。生命が奪われることもない。

残留を強制されたり、抑留されているわけでもない。なのに日本の都市には在日外国人の言うことを聞いて、「ヘイトスピーチ抑止条例」などというバカな条例を制定してしまう所もある。

本当のヘイトというのは、日本人が朝鮮で受けたヘイトクライムのように完全無視されて存在を否定され、生存権を奪われることです。
 
日本人は朝鮮を近代化し、米の増産にも成功した。その結果がこの対日ヘイトだったことを、日本人は決して忘れていません。

################################