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「日本は成功」海外メディア、新型コロナで手のひら返し

2020-05-25 16:57:14 | 日記
「日本は成功」海外メディア、新型コロナで手のひら返し


猪瀬聖 | ジャーナリスト


5/24(日) 23:28


海外メディアが、日本の新型コロナウイルス対策の「成功」を、驚きを持って伝え始めている。

欧米のような強制力のあるロックダウン(都市封鎖)も行わず、かつPCR検査の数が他国に比べて非常に少ないにもかかわらず、感染を抑え込んだことに対し、その原因を探ろうと必死だ。

つい最近まで、日本の対策を批判的に報じていただけに、強烈な手のひら返しの感も否めない。

お辞儀の習慣が奏功

22日付の英高級紙ガーディアン(電子版)は、「大惨事の一歩手前から成功物語へ 日本はいかにして新型コロナにタックルしたのか」と題した東京発の記事を掲載した。

記事はまず、専門家は1カ月余り前まで「日本は新型コロナで最も悲惨な目にあう国の1つになる」と言っていたと指摘し、日本の対応が失敗と見られていたことを強調。


その理由として、ダイヤモンド・プリンセス号への対処の仕方が海外から批判を浴びたことや、東京五輪・パラリンピックの開催にこだわる余り初動が遅れたこと、PCR検査の数の少なさなどを挙げた。

その上で記事は、日本の感染者数や死者数が欧米主要国に比べて、

結果的に非常に低いレベルにとどまっていることや、東京都内の最近の新規感染者数が一桁台に下がってきていることなどを指摘しながら、

「いま日本は、確固たる証拠を持って、新型コロナ対策に成功した国だと主張することができる」と日本を持ち上げた。

ガーディアン紙は、考えられる成功の理由として、

日本ではインフルエンザの予防や花粉症対策としてマスクをしたり、

人と会った時に握手やハグではなくお辞儀をしたりする習慣があること、

個人の衛生意識が高いこと、家の中では靴を脱ぐ文化があることなど、

以前からウイルス感染に備えができていることを挙げた。

また、専門家の意見として、誰もが医療保険に加入できる国民皆保険制度の存在や、肥満率の低さ、肺炎の治療に関する知見を指摘した。


成功の理由は「ミステリー」

さらには、納豆を食べているお陰で免疫力が高いとか、日本語は他の言語に比べて話す際に飛沫が飛びにくいからといった、根拠の不確かな情報がインターネットやテレビのバラエティー番組で飛び交っていることも伝えている。

経済専門メディアの米ブルームバーグは同じく東京発の記事で、

「国民は移動を規制されず、レストランも理容室も営業を続け、

人々の動きを追跡する最先端のアプリもなく、国は感染症に対応する専門の中央組織も持たず、

検査率は人口のわずか0.2%と先進国の中では最低レベル。

にもかかわらず、感染拡大は抑えられ、死者数はG7(主要先進7カ国)の中で飛び抜けて低い1000人以下にとどまっている」と報じた。


多少の事実誤認はあるものの、日本は新型コロナの抑え込みに「成功した」と報じている。

同紙は、成功の理由として、全国にある保健所の存在と、それによって感染者の追跡が徹底して行われ、クラスターの発生を極力、未然に防ぐとこがきたという専門家の意見を紹介。また、ウイルスの種類が欧米で広がったものより毒性の低い種類である可能性を指摘した。

オーストラリアの公共放送ABCは、

「日本は、満員電車、世界で最も高い高齢者率、クルーズ船上での感染爆発、罰則なしの緊急事態宣言など、大惨事を引き起こすためのレシピを見ているようで、

イタリアやニューヨークの二の舞になると懸念されたが、それは避けられた。

だが、封じ込めに成功した理由はミステリー(謎)だ」と報じた。

ABCは、日本の成功の理由を探ろうとノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏に取材。

記事によると、

本庶氏は「なぜ日本の感染率や死亡率がこれほど低いのかは、ほとんどの医学の専門家にとって依然、ミステリーだ」と述べた上で、

「日本人は手を洗う習慣があるなどきれい好きで、(人前で)キスやハグもしない」と語った。

さらにABCは、本庶氏が結核を予防するBCGワクチンの影響を示唆したことに触れ、「BCGの接種はオーストラリアや米国、英国では一般的ではない」と指摘した。

安倍首相は評価されず

何が日本を成功に導いた理由かは報道するメディアによってまちまちだが、面白いのは、安倍政権のコロナ対策を理由として挙げているメディアがほぼ皆無であることだ。

ガーディアン紙は、「アベノマスク」が不評を買っているエピソードに触れながら、

「感染者数の減少は政府の対策が成功したからではない」

「安倍首相の危機への対応はずっと不安定なままだ」といった専門家の見方を紹介している。

ブルームバーグも「政治的なリーダーシップが欠けている」と、暗に安倍政権を批判した。

ドイツやニュージーランド、韓国、台湾など、新型コロナウイルスの封じ込めに成功した国や地域では、いずれもトップのリーダーシップが高く評価されている。

それだけに、封じ込めに成功した日本のトップに対し海外メディアがおしなべて低評価を下しているのは、非常に興味深い現象だ。


猪瀬聖
ジャーナリスト


慶應義塾大学卒。米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、働き方、マイノリティ、米国の社会問題を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

日本国民一人一人の努力が日経平均株価の大暴落を防いだ なぜ今世界の投資家が注目するのか

2020-05-25 16:35:02 | 日記
日本国民一人一人の努力が日経平均株価の大暴落を防いだ
なぜ今世界の投資家が注目するのか

プレジデント Digital

馬渕 磨理子

馬渕 磨理子テクニカルアナリスト

株式投資に興味をもっていた「新規の層」が市場に流入

コロナショックにより、日経平均が大きく下落した3月、国内の個人投資家は8454億円の買い越しとなりました。

現金取引による買越額は1兆516億円を記録しており、日銀のETF(上場投資信託)買い1兆3456億円に次いで、国内の個人投資家が3月の急落時に日本株を大量に購入していたことになります。

株式投資に興味をもっていた「新規の層」も流入しており、日本人もずいぶんと株式投資に対して柔軟になったと私は感じました。

それと同時に、自粛中に耐えている中で、前向きに行動をしている人もある程度いたことに少し驚きました。

実態経済と株式市場の乖離かいりが気になり、「ブラックスワン」(極めてまれながらも想定外の事態が発生して大暴落を引き起こす)の可能性には最後に言及しますが、現状は各国が金融緩和を行い、大量のマネーが買い場を探しているのは間違いありません。


日銀は今年3月に、ETFの買い入れ上限額を年間6兆円から12兆円に拡大しています。この買い入れ額の拡大で1回あたり1200億円前後のETF買いが株式市場に流入しており、相場の下支え役を果たしています。

オンライン証券の口座開設数伸びる

日銀はETF買いを通じて、日本株に対する国内最大の買い手となっているため、3月が買い越しであることは想像に容易たやすいですが、実は、国内で自粛中の個人投資家も日本株を支えていることになります。

しかし、丁寧なフォローを行う大和証券やSMBC日興証券など、対面での接客が強みである証券会社はリモートワークの移行によって、電話やオンラインでの商品営業には苦戦しています。

投資信託は購入の際に、説明事項が多くリモートでの販売が難しくなっているのです。

そんな中、店舗や営業員を持たないネット証券に、もともと投資に興味を持っていた新規の層が、相場下落をきっかけに集まってきています。

日経新聞によると、「ネット5社合計の3月の新規口座開設数はコロナウイルスの感染拡大前の1月に比べ2.2倍の31万口座に上っており、楽天証券に関しては、新規口座開設数が16万4011口座と空前の水準になった」と報じています。


コロナショックでの急落を、買いのチャンスとみた個人がいかに多かったかを示しています

トイレでトレードしていたビジネスパーソンが昼間に堂々と株取引

さて、「サラリーマンは株取引を会社のトイレでコッソリしている」などと言われています。

これは、株式市場は「ザラ場」と呼ばれる9時~11時半、12時半~15時の時間にオープンしていますが、一般的な会社員はその時間は仕事の最中なので、トイレの個室などに隠れてスマホで取り引きをしている会社員がいることからそのように言われています。

このザラ場ですが、特に9時から10時は値動きが大きいのでトレードのチャンスです。

が、電車移動や会議などで多くのビジネスパーソンは株取引などしている余裕はやはりないでしょう。

それが、強制的に在宅ワークとなったことで、業務時間中に堂々とスマホや机の上でPCを開いて株取引ができる環境が整ったのです。

さらに、日経平均株価はPBR(株価純資産倍率)が1倍割れにまで下落し、今まで、高くて手を出しにくかった有望株がバーゲンセール状態になりました。

仕込まずにはいられないサラリーマンが多かったのです。それに加えて、新規の口座開設数の増加は、株価の下落ニュースを耳にし、自粛中に今まで、興味のあった株式投資を始めようと、口座開設を行った人が多かったのです。

日経平均株価を買い支えたのは、日銀だけではなく、自粛中に家にこもっていた日本国民が支えていたことになります。

日本の死亡率の低さに海外投資家が注目

さらには、新型コロナウイルスによる死亡率が、欧米に比べて圧倒的に日本が低いことも海外の投資家には注目されています。

たとえば経済学者の竹中平蔵氏は『プレジデント』のインタビューで、日経平均株価が一時期の1万6000円台から回復していることについて「日本の感染率や死亡率が世界水準と比べて低いことに対する安心感の表れの可能性」と分析しています。

各国が都市のロックダウン(封鎖)を踏み切るなかで、日本はあくまでも法律的に許されている“外出自粛の要請”という形で感染拡大を防ごうとしました。


その中で医療関係者や日本国民一人ひとりの努力の結果、日本での新型コロナウイルスの感染者数は収束傾向に今のところあります。

もちろん、今後第2波が訪れる可能性も十分考えられ、気を抜いてはいけませんが、海外では経済がストップしてしまったことへの市民の不満が爆発し、暴動に発展するケースも出ています。

竹中氏は「一人ひとり元気で働くことが経済の源で、仮にこのまま死者数を抑え続けることができれば、日本の経済は比較的明るいです」とも話しています。

相場格言「高い所から落とせば、死んだ猫でも跳ね返る」

その一方、海外投資家の動向を見てみると、3月は2兆1981億円、4月は8097億円の売り込しとなっています。

過去の相場を見ても、海外投資家が買い越しに転じてようやく、相場が底入れするケースが多いため、現状の動きには注意が必要です。

個人投資家と海外投資家の売り越しと買い越し額が、週次レベルで完全に逆になっている状況です。

特にコロナウイルスによる株価下落が深刻になるにつれて海外投資家が株式を手放す一方で、個人投資家については株価の下落に呼応するかのごとく買い越し額が増えています。

海外投資家の買いが戻って来ることで、本格的に相場が上場局面に入る可能性が高く、どのタイミングで彼らが戻ってくるのかがポイントになってくるでしょう。

ウォール街に「dead cat bounce」というイメージするだけで、気持ち悪い格言があります。

「高い所から落とせば、死んだ猫でも跳ね返る」という意味で、急激な下落相場で、取り立てて買い材料がないにもかかわらず短期的に株価が回復するような場面を指します。

いまが単なる、「意思のない」リバウンドではないことを私たちは確かめる必要がありそうです。

3つのブラックスワンの可能性

ここからの論点は、通常、確率的には極めて低いものの、発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスクのことを指す、「シナリオ分析」であることを留意しておく。

都市封鎖や自粛が解除されても、コロナショックが終わったわけではない。最悪のシナリオを想定しておく必要があります。

1つ目、海外クレジット投資における懸念。

リーマンショックの際には、金融危機の引き金となったのは、住宅ローン、住宅ローン担保証券(RMBS)といった家計債務でした。

今回、金融市場が懸念しているのが、信用力の低い社債、信用力の低い企業向けの融資、いわゆるレバレッジドローン、それを証券化したCLO(ローン担保証券:Collateralized Loan Obligation)です。このCLOの格下げが3月に入り急速に行われています。

リーマンショック前の07年3月時点でのサブプライムローン残高は約1兆3000億ドルでした。直近のデータを見てみると、18年時点ではBBB格社債が約3兆2000億ドル、ハイイールド社債が約1兆2000億ドル、バンクローンが約1兆2000億ドル、レバレッジドローンが約1兆1000億ドルという規模感に膨れ上がっています。

日本の企業業績の赤字が100兆円になる最悪のシナリオ

FRBはこの問題が金融危機に拡大しないことを、積極的な対応で必死に止めている状態です。

企業債務を原資とするCLOなどの証券化商品は、安定を取り戻したかにも見えなくはありません。

しかしこれに対して、野村総合研究所の木内登英氏は「木内登英のGlobal Economy & Policy Insight」のコラム内で、

「実際には安定回復にはなお遠い状態であり、今後時間が経過するに従い、企業の財務の悪化、信用力の低下、格下げの動きは進んでいき、それが金融市場の混乱、ファンドなどの経営不安問題、企業の資金ひっ迫などの多くの問題を生じさせていく可能性がある」と述べています。

2つ目は、日本の企業業績の赤字が100兆円になるという最悪のシナリオです。

フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の試算によると、国内上場企業における利益額上位18社は、全上場企業の利益の半分程度を稼いでいます。

新型コロナウイルスの影響が今期いっぱい残るとすれば、利益額上位18社の赤字は約12兆円。全上場企業では約25兆円程度の赤字が予想されています。

日本経済、非常に危険であるのもまた事実

現状の株価はそれを織り込んだ値動きとなっており、想定内のシナリオです。

しかし、3月の下落において、信用危機の発生は織り込んでいません。

さらに、この先、もし今期の上場企業の赤字が50兆円の場合は日経平均株価が1万5000円、100兆円となった場合は1万3000円の水準が視野に入り、それが2年続くとさらに下値水準が切り下げられることになります。

3つめは、産油国の体力の問題です。

今回の原油の急落時において、フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議では、原油価格が20ドルであった場合に推定される経常収支に対して、各産油国が、外貨準備高が何年分カバーするかの試算を行いました。

結果はサウジアラビアが5.4年であったのに対して、バーレーン、オマーンは1年未満となりました。

ロシア、イラクは計算上、経常収支が赤字化しないという試算結果になったため、外貨準備高が枯渇しないという計算になります。

イランについては、GDP比4.1%の経常赤字予想(20年のIMF予想)、名目GDPが4500億ドル(18年)、外貨準備高が860億ドル(WSJがIMF推計と言及)とすると、4年超はもつことになります。

この辺りの原産国のデフォルトなどにも懸念材料が残っているのです。

銀のETF買い、信託銀行、そして、国内の個人投資家が日本株を支えている。

このまま、何もなかったかのように、株価が上昇していくことが望ましい。

しかし、ブラックスワンの存在を全く忘れてしまうのも、非常に危険であるのもまた事実なのです。