勝又壽良のワールドビュー
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好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
韓国の文在寅大統領は、来年度の予算案を国会へ上程するに当たり、最後の施政方針演説を行った。文氏の任期は来年5月まで。
あと、6ヶ月を残すのみとなって、国会演説は自省を含むものであった。
文大統領が、「これまで超高速成長してきた裏には影も多い」とし、未解決の課題を一つひとつ取り上げたのである
文大統領は、今年の8月15日の光復節(独立記念日)演説では、「先進国」という単語が7回も出るほど、「先進国」という言葉に陶酔した。
今年7月のUNCTAD(国連貿易開発会議)で、事務的に韓国が発展途上国の分類から先進国へ変わった結果である。
文氏は、それにも関わらず「国連が満場一致で昇格を承認した」と大いに話を盛った。文氏の政策が良かったので、韓国が先進国になったと言わんばかりであったのである。
この8月光復節の演説と、今回の国会演説では大きな差がある。
韓国経済が未だ、多くの未解決問題を抱えて苦闘している現実を赤裸々に訴えたのである。
『ハンギョレ新聞』(10月26日付)は、「韓国社会の超高速成長の裏に影も多い、という文大統領の自省」と題する社説を掲載した。
(1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が10月25日、国会で施政方針演説を行った。政府の首班として、政府が国会に提出した来年度予算案を説明するためだ。任期最後の年の演説なので、例年とは重みが違っていた。
編成はしたものの執行の大半は次期政権が担うことになる最後の予算案に込められた政策意志を説明することで、現政権がこれまで進めてきた政策課題の成果と不十分な点、次期政権に継承を望む点を明らかにした。
文大統領が「これまで超高速成長してきた裏には影も多い」とし、未解決の課題を一つひとつ取り上げたことが特に目を引く」
人間誰でも去り際になると、来し方行く末に思いを馳せるようだ。
日韓問題もその課題に入っているはず。
浅はかな名誉心で始めた「反日運動」が、大きな溝を生んでもはやどうにもならない事態となっている。
2015年12月の日韓慰安婦合意を骨抜きにしたミスは大きかった。
日本は、絶対に妥協しないことだ。韓国に対して、「外交とは何か」を教える実例にすべきであろう。
(2)「文大統領は、世界で最も深刻な少子化と高齢者貧困率、自殺率、労災死亡率を取り上げ、「恥ずかしい大韓民国の自画像」だと述べた。
いずれも成長至上主義に押さえつけられた傷口から出たうめき声だ。
韓国社会がかなり前から解決を目指してきたにもかかわらず、これといった進展が見られない難題だ。
文大統領は「不動産問題は依然として国民の暮らしにおいて最大の問題でありながら改革課題」だとしたうえで、「首都圏集中現象と地域不均衡も解決できていない課題」だと語った。
住宅価格の不安は文在寅政権でさらに深刻になった」
このパラグラフは、韓国政治が国際標準からみていかに遅れているかを表している。全て、日本に劣っている現実である。
OECDによると、韓国の相対的貧困率は16.7%(2018年基準)で、37の加盟国のうち4番目に高いレベルだ。
相対的貧困率は、全体人口のうち可処分所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合を指す。
韓国国民の6人に1人が貧困危機に陥っているという意味である。この裏には、年金受給率が極めて低いという実態がある。
公的年金が支給される割合は2018年基準で46%にとどまり、半数を下回っている。
それさえも他国と比べて年金支給額が少ない方だ。退職前の平均所得に対する国民年金の割合で計算する「所得代替率」は、OECDの平均が男性は62.9%、女性は62.2%だ。
韓国の場合、所得代替率は45.1%に過ぎない。
こういう手薄な社会保障にもかかわらず、「韓国が先進国」といって自画自賛してきたのである。
文氏は、大統領として深くその責任を感じるべきであるが、反日妄念でそれがかき消されているであろう。
(3)「文大統領は具体的に言及しなかったが、コロナ禍はこれらの課題にさらに暗い影を落とした。
デジタル経済の加速化は世界規模のプラットフォーム独占を生み、情報技術(IT)革新の裏面の弊害を露呈した。コロナ禍の衝撃に対応するための超低金利と流動性拡大は資産不平等をさらに拡大させた。
文大統領は韓国社会の統合を妨げる障害として、不公正や差別、排除を挙げたが、コロナ禍で深刻化した不平等は、ポストコロナになっても簡単に解消されそうにない。
将来世代に希望を与えるためには、公正と正義に向けた創意的な解決策をより積極的に模索しなければならない」
コロナ禍は、韓国にも低金利をもたらして、政策金利を年利0.5%にまで引下げさせた。
これが住宅投機を生み、ソウルの住宅は文氏の大統領就任後4年で8割も高騰させたのである。コロナ禍は一方で、最低賃金の大幅引上げで苦しむ自営業へ、さらなる廃業を迫ると最悪事態を招いた。文氏は疫病神になったのだ。
(4)「文在寅政権の任期はあと6カ月余りだ。その後は、来年3月に選出される次期大統領がこれらの課題を抱えていかなければならない。これらの課題に対して政治勢力によって異なる優先順位をつけ、異なる解決策を求めていくとしても、韓国社会が直面している問題そのものを避けて通ることはできない。
大統領選挙の過程が一日も早く、このような問題をいかに解決するのか討論し、解決策をめぐって競争する本来の姿を取り戻すことを願う」
韓国は、経済や社会の面で背伸びして、日本を「同一レベル視」している。
これが、根本的な間違いである。日本と韓国では、その生い立ちも違うし蓄積も違うのだ。
そういう日本を敵視しても、韓国はなんの利益もない。
日本が戦前、米国を敵視したように愚かなことだ。
それぞれ、国力に応じた外交を行うべきである。
日韓関係が、平静になれば韓国の得るところは大きいはず。韓国は、日本を敵視するよりも、その前に自国を凝視することである。