【コラム】韓日外交1次戦が残したもの
韓国まで49.5km 「対馬」の現在
九州と朝鮮半島の間の海に浮かぶ国境の島、対馬。韓国までの距離はわずか49.5kmと、韓国に最も近い長崎のこの島は、日韓関係の悪化による韓国人観光客の減少で、2019年、経済に大きな打撃を受けた。
2019年の始めには多くの人でにぎわっていた、対馬市の免税店。
降ろされたシャッターに貼られた紙には「臨時休業」の文字が。
2019年12月上旬の週末、厳原町の中心部には、韓国人観光客の姿はほとんど見られなかった。
地元の生花店スタッフ:
あんなに何人も一緒にわっと来ることはないから、来なくなると寂しいって感じはしますよね
靴屋:
商売人だけじゃなくて、対馬の経済が非常に縮小している。ホテルにそれだけのお客さんが来れば、スリッパも履くでしょうし、ティッシュも使うだろうし
飲食店の店主:
6月ぐらいから減りましたね。宴会とか、(韓国人観光客が)90%はありませんので。あとは日本人観光客か、いわゆる日本人の人に、12月は忘年会などで埋め合わせしないとどうにもならないと言ってる
政治問題で関係悪化...島から消えた観光客
日本政府は2019年7月、韓国への輸出優遇措置を撤廃。
これを受け、釜山市は日本との行政交流の中断を発表した。
長崎県と釜山市が例年行ってきた友好交流の協議書の締結も延期に。
韓国からの旅客船が寄港していた2つの港のうち、南部にある厳原港では、もう4カ月余り、韓国からの船は来ていない。
2018年、韓国人の対馬への観光客数は過去最高の41万人を記録していたが、2019年は25万人ほどと、激減する見通し。
対馬観光物産協会・西護事務局長:
もともと、平成27年が(年間で)韓国人観光客が21万人、それが平成30年には41万人と、たった3年で倍と異常な増え方をしていたので、今、それが急減して3年前の状態まで戻っている状態
主に大打撃を受けているのは、宿泊施設や観光バス事業。
政治問題を背景にした経済環境の悪化に対馬市民は困惑している。
韓国から移住後に観光客激減...鈴木さん家族がみる日韓関係
対馬市の中心部、厳原町に暮らす鈴木純さん。
日韓関係が悪化する直前、2019年3月に韓国人の夫と2人の子どもと20年ほど暮らした韓国から移り住んだ。
鈴木純さん:
家族で旅行に来たときにインスピレーションというか、ここだと思って。日本と韓国の間でできる仕事が対馬ならたくさんある。自分たちができる仕事があると思った
鈴木さんは当初、ゆかたの着付けなど、日本文化を韓国人に体験してもらう店を準備していたが、韓国人観光客の激減で方針転換を余儀なくされた。
鈴木純さん:
8月になって、ちょっと思わしくなくてですね。韓国の人たち来ないなというところで、私たちどうしようかなと思ったんですけど、韓国語を勉強したいという方が見えてきた
今は、日本人に韓国文化を知ってもらおうと、日本人向けのカフェや韓国語教室、通訳の仕事などをしている。
鈴木さんは、今でも韓国には対馬のファンは多いと話す。
鈴木純さん:
例えば韓国の、今問題になっている部分が環境問題だったりすると、その環境問題にあふれている韓国から離れて、違う世界を味わうことができるというのが対馬の魅力だと思う
最も近い外国で、豊かな自然の魅力もあり、今後も一定の需要はあるのではと期待を寄せている。
韓国の大学で観光学を専門にしてきた鈴木さんの夫は、今回の観光客の減少が、韓国人を迎える準備期間になればと話している。
市民の思い、これからの対馬
12月8日の対馬市北部の比田勝港。
午前中の2便で、船の定員数に対して、3分の1ほどの約200人だった。
韓国人観光客:
(日本を)嫌いな人は嫌いだと言うし、好きな人は好きとは言えない状況だが、通常通り暮らしている
韓国人観光客:
関係悪化は国の問題なので、市民レベルでは問題になっていないと思う。解決は地位のある人に任せておけばいい
温泉や釣り、海水浴場など、豊かな自然や食べ物を楽しみに訪れる韓国人が多く、訪日への抵抗については、周囲の目はあるものの、個人ではあまり気にしていないとの声が多く聞かれた。
観光客の激減を受け、長崎県は2019年11月から国内観光客を呼び込もうと、宿泊料金の割り引きキャンペーンを行っている。
対馬観光物産協会・西護事務局長:
いま、旅行会社への助成もありますので、バスツアーを呼び込んで、個人観光客と団体ツアー、国内のお客さま、どちらも呼び込んで満足度も高めて数も増やしていきたいと思っています
高めの年齢層を意識した福岡などからのバスツアーや、釣りや山登りなど、自然を生かしたコアターゲット向けの旅行商品の開発で、国内観光客の誘客を図りたい考え。
急転直下の政治問題のあおりを受け、先行きの見えない観光被害が広がる対馬。
今回の問題は、インバウンド需要が増えている九州、そして日本の観光業にとって、国内外の観光客のニーズをあらためて考え直すきっかけになるとみられる。
(テレビ長崎)
高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が検察改革の主要イシューに浮上し、与野党が公捜処の設置法案をめぐって第2のファストトラック大戦を繰り広げる構えだ。
現在、ファストトラック(迅速処理対象案件)に上がっている公捜処法案は、共に民主党のペク・ヘリョン議員発議案(ペク・ヘリョン案)と正しい未来党のクォン・ウンヒ議員発議案(クォン・ウンヒ案)の2つだ。
■大統領の意志で動く組織?
ファン・ギョアン自由韓国党代表は17日、国会で開かれた党最高委員会議で「文在寅(ムン・ジェイン)ゲシュタポを作って親文(文在寅支持派)独裁を推し進めるためのもの」だとし、「公捜処は結局、大統領の意志で動く独裁的捜査機関になるだろう」と主張した。
「大統領が捜査処検事を任命する」(ペク・ヘリョン案)または「人事委員会の推薦を経て、公捜処長が捜査処の検事を任命する」(クォン・ウンヒ案)という条項を狙ったものとみられる。
しかし、(ファン代表の発言は)両案とも野党が反対する場合は公捜処長になれないように設計された点を見逃している。
また、このように任命された処長が「捜査処検事の任命に提請権を行使する」(ペク・ヘリョン案)点なども無視した指摘だ。
「ペク・ヘリョン案」と「クォン・ウンヒ案」によると、公捜処長は国会の公捜処長候補推薦委員会が候補を2人選び、大統領がそのうち1人を指名した後、国会人事聴聞会を経て任命する。
クォン・ウンヒ案は処長の任命に「国会の同意」を必須要件として追加した。
推薦委は7人で構成されるが、議決のためには6人の賛成が必要だ。
7人のうち野党が推薦する委員が2人なので、野党が反対する人物は候補になれない。
自由韓国党は、
「公捜処が民弁出身の弁護士で構成されるだろう」
「政治的偏向性を帯びた人物が捜査処の検事になるだろう」などと主張している。
「ペク・ヘリョン案」と「クォン・ウンヒ案」には捜査処検事の資格要件として、「10年以上の捜査・裁判経歴」のほかに「10年以上の捜査実務経歴」が含まれているが、これを根拠にセウォル号特調委や検察の過去事委などで活動した人たちが採用されるだろうと疑っている。
「捜査処検事全体の人数の最大半分まで元検事出身を採用できる」(ペク・ヘリョン案)という条項は、「残りは民弁出身の弁護士たちが占めるだろう」という疑いの根拠になっている。
しかし、このような指摘は、公捜処がもう一つの検察組織になることを防ぐために設けられたものにすぎず、そもそも野党が同意しない人は公捜処長になれない構造を見逃した指摘とみられる。
「公捜処が権力型不正を隠蔽するのに悪用される」という指摘もある。
公捜処が他の捜査機関に「事件を引き渡すように」要求できる権限を持っているために出た発言とみられる。
「ペク・ヘリョン案」や「クォン・ウンヒ案」のいずれも、他の捜査機関に「公捜処の移牒要求に応じる」よう定めている。
しかし、これは「公捜処が100%与党の思い通りに動く」という前提から出発したものだ。
公捜処に事件を渡した捜査機関が、その後必然的に公捜処の処理結果を注視するようになるという点も、あえて無視した主張と言える。
■ なぜ公捜処だけ捜査権と起訴権を同時に持つのか?
公捜処に捜査権と起訴権を与えるのは、「捜査権と起訴権を分離しようとする検察改革の流れにも逆行する」という主張もある。
ナ・ギョンウォン院内代表が同日、「共に民主党は検察特捜部の縮小を 『チョ・グク印の検察改革』のトレードマークだと言ったのに、『特特特特捜部』に等しい公捜処を作るなど、自家撞着と自己矛盾に陥っている」と主張したのも、こうした脈絡からだ。
しかし、共に民主党は、公捜処が高位公職者の捜査だけを担当するもので、起訴権を与えることも当初の趣旨自体が検察の起訴独占権を牽制するための措置であることから、検察と公捜処を同じ線上で比較することは無理だと見ている。
公捜処が別の“恐竜”または“屋上屋”になりかねないという懸念もある。
これに対して共に民主党のパク・ジュミン検察改革特別委員会委員長は
「公捜処検事はおよそ20~25人ほどだ。巨大な機構を作るわけではない」とし、
「検察に対する牽制(けんせい)、高位公職者に対する部分的な捜査などを担当するものであるため、『屋上屋』という表現は合わない」と述べた。
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「みな極東から去っていく」 ロシア、疲弊する地方
2019/12/27 0:00
日本経済新聞 電子版
プーチン大統領に生活苦を訴える手紙を送った主婦と家族の一部(10月、ロシア極東のメリニキ)
繁栄する大都市と開発が遅れる地方の所得格差は大きい。
2018年の平均月収はモスクワが約6万6千ルーブル(11万円)で、全国平均の2倍。
大統領ウラジーミル・プーチン(67)は中央集権を進め、政権に近い企業や高官が潤う。
一方、全人口に占める「貧困層」は08年の9%から、足元の13%に高まった。00年代の資源ブームが終息して低成長に転じ、地方は疲弊する。
「極東の人口増を期待していると聞きましたが、問題は山積です。未舗装の道路、粗末な診療所……」。
北朝鮮に比較的近いロシア極東のメリニキに住む主婦エカテリーナ・レゴスタエワ(40)は2年前、プーチンに手紙を出し、生活苦を訴えた。
隣家と壁を共有する平屋に夫婦と子供6人で暮らす。
月収は不安定で、少ないと1万5000ルーブルほど。
ほかに国から大家族向けの支援金を月約2千ルーブル受け取るが、余裕はない。
一方、公的な極東開発の予算が汚職でどこかに消えたとの噂も聞く。
極東地域は国土の4割だが、人口は90年から2割以上減った。
「みなよい暮らしを求めて去る」。
日本海沿いの主要都市ナホトカで子供4人を育てる母親(38)は元気がない。
この5年間、工場の給与は据え置きだが物価は肌感覚で2倍。借金が膨らみ「国の恩恵は感じない」。
ナホトカに近いウラジオストクで9月に開いた極東発展に関する会議で地元首長の一人が切り出した。
「極東は必要なのか」。プーチンがいらだった声で反応した。
「どこのばか者が言ったのか」。
中央と地方の格差はプーチン与党の支持率が30%台前半に低迷する一因だ。
24年に控える大統領選では3選連続の出馬が禁じられ、権力の維持へ統治体制の再構築を迫られるプーチン。
その強権と裏腹に、苦悩も抱える。(敬称略)
石川陽平、小川知世が担当しました。