楚に行く道中、荘子は髑髏(しゃれこうべ)に出会った。馬の鞭でしゃれこうべをたたきながら、荘子は聞いた。
「先生よ、生をむさぼりすぎ、節度を失ってそんな姿になられたのかい。政治に関係して殺されたのかい。悪事を働き恥を苦にして自殺されたのかい。それとも、飢え死に凍え死にされたのかい。寿命でそんな姿になられたのかい。」
そのしゃれこうべに枕して寝たところ、夢の中でしゃれこうべが出てきた。
「お前は口達者なやつだな。しかしおまえがいうのは、みんな生者の立場からの説じゃ。死者の世界は苦しみもなく、そりゃ楽しいものじゃぞ。」
そして死者の世界の楽しみを説き出した。
「死者の世界はな、上に君もなく、下に巨もなく、無政府の世界なのじゃ。それに労働なんてものもありゃしない。自然の悠遠な時間があるのみじゃ。天子の楽しみだってこれにはかなわんぞ。」
荘子は聞いた
「司命の神さまにたのんで、肉体をとりもどし、故郷に帰れるようにしてやってもよいが、先生はそれを望むかね。」
しゃれこうべは眉をひそめ顔をゆがめていった。
「天子の楽しみ以上の楽しみを棄てて、人間世界の苦しみを味わうなんて、もうまっぴらだ~ね。」
若い頃に買った本「荘子」を久しぶりに読んでいて、“面白いな”思ったので書いてみました。読んでどう感じるかは人によって違いがあるでしょうけど若い頃に読んだときには何も感じなかった?と思うのですが、今日は面白いと感じました。歳を重ねたからですかね!
『「人と思想 荘子」 鈴木修次著 』 より引用