🍀🍀幸せで健康に生きる一番の秘訣🍀🍀①
坂村真民さんといえば『致知』の読者のみなさんにはすっかりお馴染みでしょう。
愛媛・砥部町に住んで、人生の真理を誰にでも分かりやすく説き続けた仏教詩人です。
2006年、97歳で亡くなりましたが、その詩は老若男女を問わず、
今も人々を勇気づけています。
「念ずれば花ひらく」
「鳥は飛ばねばならぬ 人は生きねばならぬ」
という言葉は有名ですから、
ご存知の方も多くいらっしゃるはずです。
私も真民さんとはご縁があり、対談の本を出そうという企画もありましたが、
大きなご病気をされて、それが叶わないままに終わったことが、今でも心残りです。
真民さんの詩はどれも味わい深いものばかりですが、
とても心に染みいる素晴らしい詩に最近出会いました。
この詩を読んで感じることを皆様と共に分かち合ってみたいと思います。
三つの時の写真と
七十三歳の写真を
並べて見ていると
守られて生きてきた
数知れないあかしが
潮(うしお)のように迫ってくる
返しても返しても
返しきれない
数々の大恩よ
私たちは日常生活の中で、いつしか欲がどんどん大きくなって、
自分が今日までたくさんの恩を受けてきたことすら忘れがちです。
小さい頃は両親や祖父母の庇護の下ですくすくと成長し、
学校に入れば先生方の教えを受け、
会社に就職すれば社長さんから給料をいただいて生活します。
このように、1人で生きていける人など誰もいません。
にもかかわらず、
まるで自分ひとりで生きてきたように錯覚してしまいがちなのが人間の弱さなのかもしれません。
これは、まだ私が教壇に立ったばかりの頃の話ですが、
中等科の入学試験の面接に立ち会う機会がありました。
試験を受けるのは女子の小学6年生です。
私にとって初めての経験ということもあって、
大変興味深く面接の様子に見入っていました。
面接の質問項目の1つに
「あなたにとって1番大事なことは何ですか」
というものがありました。
答えは人それぞれで、小学生らしい答えばかりでしたが、
その中に、
「1番大切なのは私自身です」
という答えがありました。
よく聞いてみると、
自分にしかできない人生の選択をしたいという思いを、そのように表現したとのこと。
今のように個人の尊厳が強く叫ばれるような時代ではありませんでしたから、
とても感心したことを覚えています。
もう一人、
「私は一人で生きています」
ときっぱりと言い切る女子大学生に出会ったこともあります。
「ではあなたは誰のお世話にもならずに生きてきたのですか」
と質問すると、次のような答えが返ってきました。
「いいえ、私はたくさんの方のお世話になってきました。
お世話にならなきゃ生きていけないのが人間なのだということがよくわ分かっています。
だから、私は誰かのように勉強ができるようになりたい、
きれいになりたいと余計なことは考えずに済みました。
自分は自分でいいというのが、
一人で生きるということの意味です」
幸い2人とも、様々な恩を感じて感謝する心が豊かでした。
自分さえよければいいという若者が増え続ける時代、
彼女たちの答えに一瞬どきっとさせられながらも、
安堵したことが、今でも懐かしく思い出されます。
(つづく)
(「致知」2017.2月号 鈴木秀子さんより)